水族館みたいな魔道館で
聖堂院リュミエールの“魔導館”。
現世でいう体育館に近い造りだけど、壁も床も“魔障石”と呼ばれる、青くきらめく石でびっしり覆われているのが特徴だ。ここでは運動はもちろん、魔法実習や学年集会まで行われるらしい。
ミーナと一緒に壁の魔障石をトントンとつついて感触を楽しんでいたら、入口の扉がギイっと開いた。
ディディエ司祭が姿を現す。中央まで歩み出て、パンッ、パンッと手を打った。
「えー、まだ来ていない方はいませんね?」
「確認しましたけど、大丈夫ですわ!」
リリスが元気よく返事をする。
「リリスさんは何事にも積極的で、大変よろしいですね」とディディエ司祭が褒めると、彼女は嬉しそうに胸を張った。
(……こいつ、褒めればすぐ調子に乗るタイプだな。案外、下手に出て持ち上げれば仲直りも簡単かも?)
そんなことを考えていると、ディディエ司祭が隣の小部屋に入り、館内がふっと暗くなった。
壁や床の魔障石が、静かに青い光を放ち始める。まるで水族館の夜のゾーンのような幻想的な空気に、みんな一斉に「おお……」と息を呑む。
やがて司祭が戻ってきて、掌を見せた。
「では、まずは私がお手本を」
ふわふわとした茶色の魔力が掌に現れ、空中で形を変えながら舞う。
「今日は魔法の“緻密な操作”を練習します。形、距離、速さ、大きさ……自在にコントロールできるようにしてください。ただし、実物化・実体化は禁止です」
司祭は魔力を伸ばしたり、縮めたり、跳ねさせたりと自在に操ってみせる。そして再び掌に収めると、フッと消えた。
「はい、では皆さんもやってみましょう」
(うわー、みんな手ぶらでやってる……“アレ”使ったら絶対目立つな。でもマークと作戦会議して“手のひらサイズ”も持ってきたし、なんとかなるはず)
クロノは内心ドキドキしながら、そっと準備を始めた。