1 アタル、死す
やあ、俺は犬歩 アタル、どうか名前の由来は聞かないでおいてくれ
今年で25歳になるのに彼女の一人もいたことがない、天涯孤独のプロフリーター
もちろんアニ・漫画オタ、当たり前のようにDTだ
こう聞くといかにもこれから異世界に飛ばされて
俺TUEEEしだしそうだろ?
驚くなよ?今まさにその時が来たんだ
目の前には俺が突き飛ばしたJK
驚いた顔で俺を睨んでいるな
それもそうだろうなだって俺のすぐ右には大型トラックが...
ガシャーン!!!
キャー!
誰か!救急車!
ピーポーピーポー...
他人の心配や恐怖をよそに何やらブツブツ言う者がいた
そう、俺である
「異世界転生、最強スキル、勇者、可愛い奴隷、王女、エルフ...ぼそぼそ...」
こんな世界でこれ以上生きるくらいなら
かもん異世界!剣と魔法のファンタジーでの充実した毎日がきっと俺を待っている...!!
ピーーーー
「残念ですが...犬歩さんは...」
医師がそう伝えるが
別に誰も聞いちゃいない
俺のほんのわずかな生命保険金目当てに叔父が顔をニヤつかせているだけだ
やっぱりこの世界にもう用はないな...
ん?俺、意識あるくね?
え?死んだら普通こうなん?
なんか死んでから数分は耳に声が届く、だとか聞いたことあるけど
これってつまりその現象?
でも脳が動いてないんじゃ考えようないよな?
・・・・・
思えばあの時俺は冷静すぎた
トラックに弾き飛ばされたときも
不思議と痛みは対してなかったし、
死ぬことへの恐怖もなかった
死んだ後に俺が置かれた状況は死ぬ前の俺が望んでいたようなもの
ではなかったかもしれないが
今でなら自信を持って言える
「異世界最高っ!!」
名前はオヤジギャグ好きの祖父が二日酔いの時にひらめいたらしい