4 女神降臨
朝早く。のどかな平野を駆けているのはレグラコス一家を運ぶ馬車である。
「アクアぁぁぁ!!!! いでよアクアぁぁぁ!!!」
馬車内でもアベルは魔法の練習をしていた。隣ではリアナがうとうとしてアベルの肩に頭をかける。
何故レグラコス一家は馬車で移動しているのか。
それは次の場所にゆく為である。
父ヴィルヘルム・レグラコスが寝ぼけている妻と爆睡を始めた娘を起こす。
「着いたぞみんな。『聖地』アランバレルだ」
聖地アランバレル。この世で最も信者数の多いクリアナ教の発祥地である。水源を中心とした街があり、その水源の上に女神クリアナを祈る為のリメルク神殿が建てられている。
父ヴィルヘルムもクリアナ教の信者であり、今回は何に一度の祭り「晴天式」の為に訪れたのだ。
「ぬぉぉ!! 凄いです父上ぇ!!」
「そうだろアベル、何せ聖地だからな。山の上だから空気も澄んでいる」
馬車を降りた4人は執事のネルドルを連れてリメルク神殿へと向かう。
「リアナ、どうした。….あぁ。あそこの屋台の菓子を食べたいのか?」
父の気遣いにリアナはビクッと驚いた。理由は尊敬する父に庶民のような所を見られたくなかったのだ。
「ははぁ、さては図星だな。いいぞ、どの種類が欲しい」
「父上ぇ! 俺も食べたいです!」
父親は2人分の菓子を買ったのちアベル達に優しく手渡しする。
祭りを楽しんだ後、アベル達はリメルク神殿に着いた。
リメルク神殿内にある巨大な女神クリアナ像前に着いた。
ヴィルヘルムとカーラは像に向かって手を組んで祈りを捧げる。
それを見てアベルとリアナも続いて祈りを捧げる。
ー魔法が使えるようなりますようにぃぃぃぃ!!!!
うおおおおおおおぉぉぉぉ!!!
『うるさいぃ!! 念もうるさいとかバカにも加減があるでしょ!』
「!? この声は!!」
「ん? どうかしたのかアベル」
ヴィルヘルムが振り返ったその時、女神像が光出す。その眩しさに周りの信者、観光客、そしてアベル達も目を瞑る。
ようやく光が消えて見られるようになった時、巨大な女神像が消えていたのだ。
そして女神像の顔があった筈の方向から目線を下ろすと1人の女性がいた。
10年前。
アベルが見たことのある。あの女性だ。
「あなたはぁ!!」
「10年ぶりね、異世界生活は楽しい?」
「誰ですか?」
「忘れてるのかいぃ!!」