67 羅刹と夜叉
「鍵……?」
「異空間通路を開くための鍵があるらしい。そいつを手に入れれば、いつでもここに来られる」
と、彼らが説明する。
「その鍵がどこにあるのか。どうやって手に入れられるのか。そこまでは分からんが――確か、魔界の北部地方にある大魔導図書館の禁書に記されているらしい、って噂は聞いたぞ」
「大魔導図書館――」
そいつは大きなヒントだった。
「ありがとう」
俺は彼らに礼を言った。
「その……君たちを痛めつけてしまったのに、そんな重要情報を教えてもらって、感謝する。本当に」
「へっ、もともとは俺らがお前を馬鹿にしたからだ。俺らは報いを受けただけさ」
彼らは小さく笑う。
「それに死んだ仲間のため、なんて言われたらな」
「はは、仲間を大事にするって気持ちは、俺らにも分かるからよ」
嫌な奴らだと思ったけれど――いや、それは実際にそうだったんだけど、でも仲間に対する思いについては分かり合えた気がした。
少し、嬉しかった。
俺は彼らと別れ、闘技場を進んだ。
前回は闘技場に入るなり、ゲーム内と同じメッセージが出てきたんだけど、今回はない。
中級は勝手が違うんだろうか?
と、
「ようこそいらっしゃいました、ゼル・スターク様」
タキシード姿のスラリとした青年だ。
背中からは黒い翼。
青い髪を長く伸ばした美しい青年だった。
「君は――」
「羅刹と申します。お見知りおきを」
青年が一礼する。
「あたしは夜叉です。同じくお見知りおきを」
羅刹とよく似た顔立ちの女が一礼した。
こちらは煽情的なバニーガールのコスチュームをしている。
豊かな胸に思わず視線を吸い寄せられてしまった。
羅刹と同じく背中から黒い翼を生やし、青い髪を長く伸ばした美女だ。
もしかしたら双子だろうか。
「お察しの通り、僕たちは双子の兄弟です」
羅刹が言った。
「僕たちがここの案内人となります」
「よろしくお願いしますね、【プレイヤー】様」
二人の言葉に俺はハッとなった。
「【プレイヤー】……だって」
その言い方は、ここがゲームの世界だと俺が認識していることを知っていなければ出てこないんじゃないだろうか?
「……何者だ、君たちは」
俺は表情を険しくした。
「僕たちは【システム】の一部なんです」
「あなたがこの【ゲーム】を快適に遊んでいただくための、ね」
双子が微笑む。
「システム……」
「おっと、僕たちに許されている返答内容はここまでです」
「詳しくお知りになりたいのであれば、より上位の【管理者】にお願いしますね?」
羅刹と夜叉が言った。
その態度はそっけない。
彼らが言った通り、これ以上の内容を会話から引き出すのは難しそうな雰囲気だ。
【システム】だとか【ゲーム】だとか【管理者】だとか――気になる単語はいくつもあるけど、まずはここに入った最初の目的を果たすところからだ。
俺は頭を切り替えた。
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