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66 嘲笑は、力で打ち砕く

「下級魔族が何の用だ?」

「弱っちいくせに迷い込んだのか」

「たまに来るんだよな。お前みたいな雑魚」


 入り口を通ると、数人の魔族がやって来た。


 人型もいれば獣人型やスライムのような不定形タイプ、それに竜型もいる。


 誰もがニヤニヤ笑いながら俺を見ていた。


 明らかな嘲笑だった。


 まあ、確かに俺は魔族の中でも下級の種族だからな。


 軍にいるときも、たまに種族差別を受けることはある。


 3番隊の連中に関しては、そういうことはしてこないけど――。


「ここは『中級闘技場』だぜ?」

「お前みたいな雑魚、お呼びじゃねぇよ」

「帰れ帰れ」

「俺はここで自分を鍛えに来た。帰るわけにはいかない」


 俺は彼らを見回した。


「そこをどいてくれ」

「ハア? 【デモンブレイダー】ごときが中級に挑もうってのかよ?」

「身の程知らずが。俺たちが今から修行するんだ、お前は消えろ」

「消えろ消えろ」

「……お前たちも修行?」


 俺は彼らを見回した。


 俺以外に、ここでの修行者に初めて会った。


 が、逆に言えば、俺以外の魔族でもここを『利用』できるってことか。


 以前、ラヴィニア隊長に異空間闘技場のことを話したとき、あの人もここに行きたがっていた。


 隊長には隊長の、強さを求める理由があるからな。


「なあ、俺は偶然ここに迷い込んだんだけど――」


 彼らをもう一度見回す。


「もし、偶然以外でここに来る方法を知っていたら教えてくれないか?」

「ハア?」

「それを教えてどうするんだよ?」

「知りたいなら、力ずくで聞き出してみろよ、へへ」


 彼らからは相変わらず嘲笑と、さらに挑発まで返ってきた。


「力ずくか……」


 俺としても異空間闘技場に行くための情報は、是が非でもほしいところだ。


 だから――悪いけど、ちょっとだけ荒っぽく行かせてもらう。


 俺は前に出た。


 どんっ!


【突進】で一気に加速し、彼らの背後に回り込む。


 弱点を【見切り】、当て身を一発ずつ。


「がっ!?」

「ぐはっ!?」

「あがっ!?」


 苦鳴とともに彼らは倒れ伏した。


 ギリギリまで手を抜いたから、大きな怪我はないはずだ。


 ダメージを最小限にとどめたつもりだけど――。


「大丈夫か?」


 俺は倒れた彼らに声をかけた。


「つ、強い……」

「強すぎる……動きが、全然見えない……」

「お前、何者だ……本当に【デモンブレイダー】なのか……」


 彼らはいずれも驚愕した表情だった。


「お前たちの見立て通りだよ。下級種族の【デモンブレイダー】だ」


 俺は彼らに答えた。


「さあ、お前たちがさっき言った『異空間闘技場に行く方法』を教えてくれ」




「俺らも全てを知ってるわけじゃない……」


 彼らは話し始めた。


「異空間闘技場に入るための条件は複数あるそうだ。その一つが魔獣との戦闘だ」

「魔獣との――」


 確かに前回も今回も魔獣との戦いの中で、あるいは戦いの後で、ここにやって来た。


「魔獣と戦えば、必ずここに来られるわけじゃない。稀に発生する事象のようだ」


 と、彼らが説明する。


「ただ、魔獣が強ければ強いほど、あるいはそいつ自身が強ければ強いほど、確率は上がるそうだが――」


 なるほど、な。


「他にも条件があるんだよな。知っていることがあれば、教えてほしい」


 俺は彼らに頼んだ。


「俺はある事情があって、強くなりたいんだ。定期的にここに来る方法を確立できれば、格好の修行になる」

「それだけ強いのに、まだ強くなりたいのか……?」


 彼らが俺をまじまじと見る。


「まだ、足りない」


 俺は首を左右に振った。


「俺は、弱い。その弱さのせいで仲間を一人失った。俺は――俺の弱さを許しておくわけにはいかないんだ」


 そう、俺が強くなりたい理由に、『レキの死と向き合うため』という新たな理由が加わったんだ。

 だから――、


「頼む」


 俺は彼らにもう一度言った。


 短い沈黙が流れる。

 それから、


「……鍵だ」


 彼らが言った。



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