60 これから、ミラが目指す道1(ミラ視点)
自分の強さに自信がない――。
そう言っていたレキに、ミラは親近感を持っていた。
剣士と魔術師という違いはあれど、似たようなコンプレックスを持つ仲間のように感じていた。
初めて会ったときから妙にウマがあい、気が付けば親しい友人になっていた。
レキは、かつての大戦争……【覇王戦役】において、大きな挫折を味わったという。
それ以来、自信をなくして本来の力を戦場で発揮できなくなった。
ただ、レキはそれを克服するために懸命にがんばっていた。
そんな彼女を見ていると、自分も頑張ろうと思えた。
ミラの場合は、自分の才能に限界を感じ、自分の弱さに劣等感を抱いている。
修行は続けているが、強大な力を持つ敵が現れると、なすすべなく打ちのめされる経験は何度もあった。
努力しても努力しても――。
どれだけ強くなっても、上には上がいる。
彼女には、根本的に才能が欠けているのだ。
そのことに心が折れそうになることはある。
昔も、今も――数えきれないくらい、ある。
けれど、そんなとき彼女を支えてくれたのは仲間の存在だった。
とあるモンスターに敗れたミラを勇気づけてくれたゼルの存在。
強くなるために努力を続けるミラの存在。
他にも、3番隊には自分の力を磨く努力を続け、強さを求め続ける者はいる。
そんな者たちの頑張りを目にして、自分も頑張ろうと思えるのだ。
心が折れかけても、また立ち上がることができる。
彼らの存在こそが、ミラにとって支えであり、勇気の源泉だった。
けれど、そんな中で――レキが死んだ。
夢半ばにして。
志半ばにして。
あえなく、殺された。
以来、ミラの心の中にはぽっかりと穴が開いてしまった。
レキの死に落ち込んで、しばらくは何も手に付かなかった。
失って、初めて気づく。
自分は彼女のことを大切に思っていたのだと。
大切な友人だと思っていたのだと。
これから先、もっと多くの時間を過ごせるのだと。
けれど、それは突然断ち切られてしまった。
もちろん、ミラもレキも軍人で、死と隣り合わせの生活を送っている。
だから、突然の別れもあり得ることは分かっている。
頭では理解できている。
けれど、心が付いてこなかった。
そうやって一週間ほど何もせずに過ごしていた。
隊からは人間界への長期調査の後に休暇をもらえていたので、ミラは自分の家で何をするでもなく過ごしていた。
茫洋と、ただ過ごしていた――。
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