49 刃
「し、しまっ――」
鮮血が、散った。
「えっ……」
痛みはない。
斬られた感触もない。
それも当然だ。
斬られたのはレキではなく――、
「ゼルさん!?」
「はあ、はあ、ま、間に合った……」
ゼルが青ざめた顔でうめく。
「上手く位置を入れ替えられて……君に襲い掛かるアッシュを……ギリギリでしか、止められなかった……」
「ゼルさん……い、今、治癒魔法を――」
「させるかよ!」
アッシュがさらに襲い掛かる。
「きゃっ……」
かろうじて避けたものの、右腕を浅く斬られた。
魔術師タイプのレキにとって、ここまで接近した状態での剣士アッシュは厄介な相手だ。
「レキは……やらせない……」
ゼルが弱々しく立ち上がった。
胸元が大きく切り裂かれ、明らかに重傷だ。
それでも――、
「仲間は――俺が守る! 絶対にだ!」
吠えるゼルを、レキは呆然と見つめていた。
※
胸元を斬られた痛みが、徐々にひどくなっていく。
おそらく肉だけじゃなく内臓にまで達している傷だろう。
呼吸が苦しい。
けれど、ここで倒れるわけにはいかない。
レキを、守るんだ――。
俺は剣を握る手に力を込めた。
前方のアッシュをにらみつける。
少し前までは冒険者仲間として協力してクエストに当たった仲だけど、今はもう――敵だ。
俺たちを殺そうと襲い掛かってくる敵なんだ。
なら、剣で立ち向かうしかない。
黙って殺されるわけにはいかない。
たとえ相手が人間であっても――。
「魔族め……!」
アッシュが吐き捨てた。
ついさっき俺を賞賛し、憧れるように見ていた表情は、もうどこにもなかった。
おぞましいものを見るような目つきで俺をにらんでいる。
それにショックを感じないわけじゃない。
俺のメンタリティは、基本的には『人間』なんだ。
同じ人間にこういう目で見られて、何も感じないわけじゃない。
けれど――。
「先に襲い掛かってきたのはお前たちだ……!」
俺はアッシュをにらみ返した。
俺自身と俺の仲間を守るために――。
「お前を斬る」
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