41 原作ヒロインとレキの本性
「闇の気配……!?」
他のメンバーたちが表情を引き締める。
「僧侶としての本能が告げています。あなたたちは邪な気配を漂わせている――」
「っ……!」
マリエルの言葉に俺は思わず後ずさった。
まさか、彼女は――俺たちが魔族だと気づいているのか。
いちおう、ここに来るときに魔族の気配である『邪悪な魔力』や『瘴気』などを消すように、あらかじめ魔王軍の闇僧侶から幾重にも術式をかけてもらい、偽装工作は済ませてある。
だから、魔に敏感な人間の僧侶と出会っても、まずバレないはずなんだ。
けれど、マリエルは作中でも屈指の能力を持つ聖女である。
もしかしたら、俺たちのことがバレているかもしれない――。
「おいおい、初対面の相手にちょっと失礼じゃないか?」
パーティのリーダーがマリエルに言った。
「えっと、こっちのレキは闇属性の魔法を得意としているんだ。それで邪な気配が漂ってるんじゃないかな」
俺はとりあえず言いつくろってみた。
実際に彼女が得意にしているのは地水火風の四属性魔法なので、当然嘘だ。
「俺は……以前のクエストであるモンスターから呪いを受けたことがあって……もしかしたら、それが影響しているのかもしれない」
と、これまた嘘八百を並べておく。
大ウソで合っても、何かしら反論しておかないと、マリエルに糾弾されそうな雰囲気だったからな。
これでだめなら、なんとか隙をついて逃げるしかないか――。
「……ゼルさん」
と、レキが近づいてきて耳打ちする。
「もし私たちが魔族だと気づかれた場合、不意打ちで先制攻撃をかけましょう。確実に殺すんです」
「えっ……!?」
「魔族が潜入調査をしている、と気づかれる可能性がありますから。証拠隠滅です」
「い、いや、でも殺すのは……」
「? 相手は人間ですよ」
レキがキョトンと小首をかしげた。
「……!」
俺はゾクリと背筋が粟立つのを感じる。
平然と人間を殺すことを提案したレキ――。
けれど、それは彼女が魔族だからだ。
人間側だって、相手が魔族ならためらいなく殺そうと考える者は少なくないだろう。
あくまでも種族の違いに起因した考え方なんだ。
そう分かっていても、仲間が『人間を殺す』ことを当たり前のように提案してくるのは、やっぱりショックだった。
「失礼ですが、あなたの魂に触れさせていただけませんか?」
マリエルが俺に言った。
「魂……?」
「私は相手の魂に触れ、その属性を読み取る能力があります。本能です」
本能ってワードは、確か彼女の口癖だったな。
「断る理由、ありませんよね?」
「……!」
俺は覚悟を決めた。
断れば、それはやましいことがあるという証拠だ。
即戦闘になる可能性がある。
けれど、魂に触れてもらったらどうだろう?
俺はもともと人間だから、魔族という判定を受けないかもしれない。
そこに賭けるしかない――。
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