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39 ゴーレム軍団を討伐する


 俺たちはダンジョン内を進んでいた。


 町の外れに小さな山があり、その中腹辺りに位置するダンジョンだ。


 どうやらこのダンジョンもゴーレム軍団の創造主である魔術師が作ったらしい。


 内部は入り組んでいて、結構深そうだった。


 これだけ大きなダンジョンを一人で製作したり、大量のゴーレムを作ったり……なかなか力のある魔術師だったのかもしれない。


「……はあ」


 隣からため息が聞こえた。


「レキ?」

「あ、すみません……いつモンスターが出てくるかと……緊張してしまって……」

「生息予想地点はまだずっと先だよ」


 俺は微笑んだ。


「もし現れても、奴らは動きが鈍いし、俺が前衛になって君を守る。だから、もうちょっとリラックスしても大丈夫だぞ」


 なんとか彼女の気持ちをほぐそうと、俺は気楽な口調で語りかけた。


「そう……ですね……」


 レキはうなずきつつ、


「はあ……」


 二度目のため息をついた。


「あ……ごめんなさい」

「いいって。俺にまで気を遣わないで」


 俺はレキに対してうなずいた。


 そうだ、雑談でもして彼女の気を紛らわせるか。


「なあ、【カオスメイジ】って魔術師系の魔族の中でもかなり魔力が大きいんだよな?」

「はい、魔族の全種族の中で五本の指に入る、と言われています」

「すごいじゃないか」


 俺は驚いた。


「レキはそんな種族なんだ。落ち着いて全力を出せば、絶対に強いはずだよ」

「そうですね……全力を」


 レキがうなずいた。


「私、子どものころから上手く全力を出せなくて……それが戦場で自分の力を出し切れないことにつながっているのかもしれません」

「全力を?」

「魔力のコントロールが下手なんです。自分に自信が持てなくて、余計に緊張してしまって。それに加えて、昔の心の傷もあって、ますます自信がなくなって……」

「うーん、悪循環ってことか」


 ――ずしいん。


 そのとき、前方から地響きが聞こえた。


 音は遠くから聞こえてくる感じだけど、少しずつこっちに近づいてくる気配がある。


「ゴーレムか――」


 俺は表情を引き締めた。


 レキの顔が青ざめる。


「大丈夫だよ」


 俺は彼女の背中を軽く叩いた。


「さっきも言ったろ。俺が君を守る」

「よ、よろしくお願いします……」


 レキは震えながらうなずいた。




 やがて、ゴーレムの軍団が前方の通路から姿を現した。


 いずれも灰色の金属質なボディをしている。


【メタルゴーレム】の一種か。


 ただ、こいつは創造主である魔術師がアレンジし、特に物理攻撃には強く作られているらしい。


「俺一人で全部撃破……は大変そうだな」


 ただし、そのぶん魔法攻撃には弱いそうだ。


「俺が前衛で奴の攻撃を引き付ける。君は後衛から狙いをつけてくれ」

「は、はい……」


 レキの顔が青ざめていた。


「君のところまで一体たりとも来させない。安心して撃ってくれ」


 俺はクエストの前に言ったことを、もう一度繰り返した。


 こういうことは何度でも繰り返し言った方がいい。


 彼女が少しでもリラックスしてくれるように。


「じゃあ――いくぞ」


 そして戦いが始まった。




 俺は【メタルゴーレム】の軍団に突っこんだ。


 奴らの金属装甲は物理に強く、やたらめったら剣を叩きつけても、剣自体が傷んでしまうだろう。


 あくまでも仕留めるのはレキの魔法――。


 俺はそのために敵を引き付け、あるいは動きを止めるのが役割だ。


 なら、必要な立ち回りは敵を撃破する剣技ではなく、敵を牽制するためのそれだった。


「はあああああっ……!」


 俺は矢継ぎ早に斬撃を繰り出した。


 とはいえ、それは本気で奴らに当てるつもりはない。


 奴らが前に出てこないように、かといって後退もしないように――その場に釘付けできる程度に威力を弱め、俺は動き回っていた。


 いつもなら、ただひたすら敵を倒すために剣を振るうから、こういう立ち回りは初めてだった。


 ただ敵を倒すよりも、敵を『引きつける』っていうのは、難しい。


 ただ、それはそれでいい訓練になる。


「レキ、魔法を撃つときに合図をしてくれ。すぐに飛びのくから」


 と、背後に向かって告げる。


 が、返事はなかった。


「……レキ?」


 振り返ると、


「うう……やっぱり緊張します……」


 あ、緊張で魔法を発動できない感じか。


「大丈夫だ、レキ! 君が落ち着くまで、俺がゴーレムを牽制し続けるから!」


 微笑み交じりに言った。


「気持ちが落ち着くまで深呼吸でもしていてくれ。ゆっくりでいいんだ」

「ゼルさん……」

「俺を信じろ。俺は、ゴーレムなんかにはやられないから!」


 そう、今必要なのはレキが落ち着くこと。


 そして、そのために必要なのは、レキが『俺は絶対にやられない』と安心することだ。


 だから、俺は必要以上に余裕ぶってゴーレムたちと渡り合っている。


 こちらから攻勢に出る必要はない。


 いくらでも時間を稼げる――そうレキに安心させるために。


「ゼルさん、すごい……」


 しばらくゴーレムと戦っていると、背後で彼女のつぶやきが聞こえた。


「そうだ。こんなゴーレムなんて俺の敵じゃない。だから」

「……はい。少し落ち着いてきました」


 レキが言った。


「私も、戦います。ゼルさんのように」


 その声は、さっきまでと違って震えていない。


 よし、ここから反撃開始だ――!

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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


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