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24 サイクロミノタウロス討伐1


 俺たちはギルドのある町から北西部にある小さな村にやって来た。


 村のすぐ近くの森が【サイクロミノタウロス】の生息地だ。


 この村は何度も【サイクロミノタウロス】に襲われ、かなりの被害が出ているようだった。


 実際、村に入ると大半の家が壊れているし、畑もあちこち陥没したり、爆発したように小さなクレーターができていたり……。


 確か人死にも出てるんだっけ……。


「おお、冒険者の方ですか!」

「あいつを……あの悪魔を討伐しに来てくれたんですか!?」

「頼みます……どうか息子の仇を……」


 村人たちは俺たちを見て、駆け寄ってきた。


 誰も彼もが、すがるような目だ。


「ええ、俺と彼女で【サイクロミノタウロス】を討伐します」


 俺は村人たちに言った。


 たちまち、村人たちから歓声が上がった。


「おお、ありがたい!」

「絶対に倒してくれ!」

「頼む……頼む……」


 その雰囲気からは切実な様子が伝わってくる。


 これがこの世界のリアルなんだろう。


 大多数の人間にはモンスターと戦うような力はない。


 理不尽な暴力に対して、ただおびえ、ただ逃げることしかできない。


 そして、俺たちのような存在にすがることしかできない。


 ならば、俺たちが為すべきことは――。




「勝たなきゃな。あの人たちのために」


 俺とミラは村の近隣の森に入った。


 この中に【サイクロミノタウロス】の生息地があるのだ。


 そこを見つけ出し、討伐する――。

 と、


「人間のために戦うのか……」


 隣を歩くミラがぽつりとつぶやいた。


「ん? 抵抗があるのか?」


 俺はたずねてみた。


 俺自身は精神的には人間そのものだけど、ミラは違う。


 彼女は純粋な魔族だ。


 もしかしたら、人間を憎むような心根があるかもしれない。


 ゲームでは人間と魔族は相いれない存在という感じで描かれているしな。


「さあ……正直、人間っていっても、ここに来るまでほとんど見たことのない種族だったからピンとこねーんだよな。魔族の仇敵とか宿敵とか言われてもさ」


 ミラが苦笑した。


「俺からしたら、別世界に住んでる別の種族って認識だけだ」

「へえ……そういう考えの魔族もいるんだ?」

「まあ、中には人間が憎い、殺したいって奴もいるさ。けど、俺は違う」


 と、ミラ。


「お前こそどうなんだよ?」

「俺は――」


 考える。


 俺にとって人間とは――魔族よりもよっぽど近しい存在だ。


 同胞だ。


 ――とそこまで考えて、疑問を覚える。


「本当に……同胞なのか……?」


 今の俺は魔族のゼル・スタークで、魔界で十七年間暮らしてきた。


 ……といっても、前世の知識が目覚めたのは最近だから、長年魔界で暮らしていたという感覚はないんだけどな。


 ともあれ、俺の身近にいる仲間はすべて魔族だ。


 だから、俺にとってどっちが『同胞』なのか――考えていくと分からなくなってくる。


 人間か。

 魔族か。


 俺は、どっちの――。


「なんだよ、急に難しい顔して」


 ミラが俺をにらんだ。


「話題を振ってきたのは、お前の方だろ」

「はは、悪い。なんだか考えがグルグルして」

「変なところで思い悩むタイプだよな。お前って」


 笑うミラ。

 と、


「お、そろそろ奴の生息地だな」


 彼女の表情が引き締まった。


「相手は耐久力が高い。それと単眼から一撃必殺の光線を撃ってくるから注意してくれ」

「……詳しいな」

「えっ? あ、いや、受付嬢から情報を仕入れたんだよ」

「おお、用意周到じゃねーか。俺は戦うことで頭がいっぱいで下調べを怠っていたぜ」


 と、ミラ。


「お前みたいにちゃんと準備した方がいいよな……うん、見習うか」


 へえ、意外と反省するタイプなんだ。


「エースは俺だからな。俺がこの隊で誰より優れた戦士になる。そのために、すごい奴らからどんどん吸収するんだ、へへ」


 ミラが笑う。


「偉いよ」

「別に偉くねーよ。強くなるためにやってるだけさ」

「……ミラはどうして強くなりたいんだ?」

「は? なんだよ、急に」

「いや、なんとなく」

「もう奴が出てくるかもしれないだろ。そういう話は後だ――」


 ミラが言いかけたそのとき、




 ぶももももおおおおおおおおっ!




 獰猛な雄たけびと共に前方の茂みをかき分けて巨大なシルエットが現れた。


 ――おでましか。

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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


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