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21 冒険者ギルドへ


「あっ……!」


 俺はそこで気づいた。


 ロクゼロの世界は基本的に巨大な『中央大陸』が舞台になっている。


 他の大陸や島もあるんだけど、メインシナリオにはほとんど絡まない。


 で、ここはその中央大陸にある大国【バロンレイド】にある【西の大草原】だ。


 ところどころに特徴的なタワーツリーが生えているので、すぐに分かった。


 ゲーム内のビジュアルそのまんまだからな。


「確か、【西の大草原】にはダンジョンが三つあったな。成長用のアイテムも手に入るはず――」


 それを入手すれば、本来はゲームのモブキャラクターである俺でもパワーアップできるかもしれない。


 それとも主人公サイドにしか効果はないんだろうか?


 分からないけど、試してみる価値はある。


 普段の修行や異空間闘技場とは違う手段でのパワーアップ――。


 それが実現できれば、俺はさらに加速的に強くなれるはずだ。


「さて、と。人間界での潜入任務に関してだが――俺たちは基本的に冒険者としてやっていく」


 バロールが言った。


「他の職業に比べ、人間世界における知識が浅くても、どうにかこなせるからな」

「へへっ、農家や商家は無理だぜ、俺」

「だろうな」


「だろうな、ってなんだよ、だろうなって」


 バロールの言葉にミラが怒ったように言った。


「まあ、冒険者なら腕っぷし一つで――要は戦闘技能さえあれば、やってい

けるはずだ。モンスター討伐専門で」


 と、バロール。


「迷宮探索だとか薬草採集なんて仕事もあるが、それらはいずれも専門知識や技能がいるし、俺たちには向いていない。討伐専門の冒険者としてやっていくなら、魔族としての戦闘能力を生かせるし、十分やっていけると思う」




 というわけで――俺たちは冒険者ギルドにやって来た。


 緊張と、そして高揚感がある。


 ついにゲームで描かれる世界に足を踏み入れたんだ、という実感で、俺はワクワクしていた。


「おお~、人間がいっぱいだ」

「私、こんなにたくさんの人間を初めて見ました……」


 ミラとレキは周囲をキョロキョロと見回している。


「お、落ち着け、俺たちもここでは『人間』だ。周囲に人間がいても珍しくないぞ……っ!」


 バロールは妙にテンパっていた。


 なんか人間界に慣れてる風な雰囲気を出してたくせに……。


 しょうがない、ここは俺が先導しよう。


 このメンバーで唯一の『人間』だからな。


「案内板だと、あっちが受付みたいだし、全員で移動しよう」

「受付?」

「まず冒険者登録をしないといけないだろ?」


 たずねるミラに、俺は答えた。


「お前、天才かよ!」

「……いや、それくらいは普通に想像つくと思うが」

「う、うむ、俺だって今そう言おうとしていた」


 バロールが胸を張った。


「ゼルさん、頼りになります……」


 レキが俺を見つめた。


「行こう」


 人間界に慣れてない三人組を率いて、俺は受付窓口に向かった。


 とりあえず俺が主導して、どんどん手続きを済ませてしまおう。




「俺たち四人で冒険者登録をしたいんです。パーティの登録も一緒に」


 ゲームで主人公が冒険者をするときのことを思い出しながら、俺は受付嬢に言った。


「分かりました。ではこちらの申請用紙に必要事項を記入してください。名前とクラス、種族、他に必要なことは備考欄にお願いします」


 と、四枚の申請用紙を差し出す受付嬢。


「種族も書くのか……」


 と、ミラ。


「……人間って書くんだぞ」


 俺は三人に釘を刺した。


 ちなみに種族という項目があるのは、人間以外にエルフやドワーフ、獣人に竜人など、様々な種族が冒険者をしているからだ。


 さすがに魔族で冒険者をしている者は見たことがないけど。


「クラスは魔術師でいいんですか?」


 と、レキ。


「ああ。俺とミラは剣士、バロールは魔法戦士、レキが魔術師……って感じでいいんじゃないか?」


 ……という感じで、俺たちは申請書を提出する。


 それが受理された後、受付嬢が言った。


「では、最後に適性試験を行います」

「適性試験?」


 あれ? そんなのあるんだ――。


 ゲームではその辺のことが描かれていないから知らなかった。


「どんなことをするんですか?」

「簡単な能力テストです。それによって暫定の冒険者等級を決定します」


 受付嬢が説明した。


「新人冒険者といっても、既に突出した能力を持っている方も時々いらっしゃいますし、逆に能力的に非常に低い方もいます。なので、一律に最底辺のEランクからスタートせず、場合によってはBやCといった上位から中位の等級を最初から付与することもあるんです」

「なるほど……」


 うなずく俺。


「冒険者ランクが高ければ高いほど、受けられる仕事の幅が増えたり、依頼料が上がったりするんですよね、確か」

「ええ。基本的にランクが上がるほど、稼ぎも多くなる仕組みです」


 じゃあ、なんとかこのテストで頑張って上のランクに行きたいな。


 まあ、仮にイマイチな結果だったとしても、最底辺のEランク冒険者にはなれるわけだし気楽に行こう。


「くくく、腕が鳴るぜぇ……冒険者の世界でも俺がエースだ」

「気合い入ってますね……」

「当たり前だろ。レキは違うのか」

「眠いです……おうち帰ってお布団に入りたい……です……ふああ」


 やる気にあふれるミラと、本当に眠そうなレキ。


 二人とも、なんか馴染んでる感じだなぁ。


「て、適性試験……試験か……緊張するな……」


 一方のバロールは妙にテンパっている様子だ。


 それぞれの性格が出ている気がして、俺はクスリとしてしまった。




 俺たちはギルドの裏手にある中庭に異動した。


 そこは、かなり広いスペースになっており、学校のグラウンドみたいな感じだ。


 模擬戦用の闘技場や、いくつかの測定器具らしきものが設置されていた。


「本日は三組の冒険者パーティが適性試験を受けます。順番に名前を呼びますので、呼ばれた方は前に出てきてください」


 三組か、けっこう多いな。


「ふん、随分と華奢じゃねーか。お前も冒険者志望かよ」


 近くにいた大男が話しかけてきた。


 見るからに傲慢そうで、俺を小馬鹿にしているような雰囲気だ。


 まあ、こいつは身長2メートル近くあるし、対する俺は身長160センチほどで、それほど背が高いわけじゃない。


 体格に大きな差があるため、俺を見下しているわけか。


「俺はガザン。格闘技の世界にいたが、とある試合で勢い余って相手を殺しちまってな。それがもとで業界を追放され、ここに流れついたわけよ」


 プロの格闘者か……。


「次、ガザンさん、お願いします」


 と、そのガザンの名が呼ばれた。


 俺は剣士や戦士系の冒険者の適性試験を受けている。


 ミラも一緒だ。


「へへへ、見てろよ」


 ガザンは巨大な魔導機械の前に立った。


 魔導機械の上に赤い人型の模型が設置されている。


 これは攻撃力を判定する装置らしい。


 ゲーセンとかで見かけるパンチングマシーンみたいな感じか。


「俺は武闘家だ。俺の武器は拳――おらあっ!」


 気合いと共に、ガザンが渾身の右ストレートを赤い人型に叩きつけた。


「これはすごい。攻撃力Bランクですよ」


 受付嬢が測定器を見て、驚いた顔をした。


「Bランク? 本当はAを出すつもりだったが、まだ古傷の右膝が完治してないから、まあこんなもんか」


 ガザンがニヤニヤと笑っている。


「では、次はゼルさん、お願いします」


 俺が順番を呼ばれた。

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