118 対抗戦、決勝の前1
「よう、ここまで勝ち残ってきたか」
インターバルの時間中、やって来たのはルインだった。
かつて一度手合わせした魔界最強の騎士団長の一人。
今は人の姿を取っているけど、その本性はゴーレムである。
それも最強クラスの【オリハルコンゴーレム】だ。
物理攻撃には最強レベルの耐性を誇るため、『剣』や『ナイフ』という物理攻撃メインの俺にとっては相性最悪といっていい相手だった。
こいつに勝つ方法は、たった一つ。
オリハルコンの物理耐性をも上回る一撃を加えるしかない。
「おいおい、怖い顔でにらむなよ。素直に敬意を表しにきたんだぜ?」
ルインが肩をすくめる。
「それはどうも」
言いながらも、俺はどうしても気が張ってしまう。
かつて戦った時、俺はこの男から一本を取った。
けれど、それは向こうが俺の実力を見るための『様子見』モードだったからだ。
今回はそうじゃない。
『本気』のルインと戦うことになるだろう。
俺もあのときとは比べ物にならないほど強くなったけど、魔界最強の一角に通用するかどうか――。
「お、笑ってるじゃないか。楽しみなのか?」
「えっ」
俺、笑ってたのか?
「戦士の顔になったな。あのときよりも」
言って、ルインが笑う。
獰猛で攻撃的で、そして楽しげな顔。
まるで子どものように無邪気で、ワクワクした気持ちを表に出した顔だ。
――俺も、こいつと同じ顔をしているんだろうか。
確かに、気持ちが高ぶっているのは事実だ。
その中には緊張や不安もあるけれど。
それ以上に、試してみたいという高揚感がある。
俺とルイン、どちらが上か――。
「早くお前と戦いたいよ、ルイン」
俺は自然とそんな台詞を口に出していた。
※
「久しぶりだな」
バロールは彼女の前に立った。
「? 誰だっけ、君」
彼女……サーラが首をかしげる。
「……覚えてないのか」
バロールは苦笑した。
「まあ、天下の第一騎士団1番隊のエース様が、俺なんて覚えてるわけないか」
と自嘲気味につぶやく。
「君、どこの所属?」
「第七騎士団3番隊さ」
「知らない。眼中にないね」
サーラがふんと鼻を鳴らした。
「ボクが警戒しているのは――この中じゃルイン団長くらいだよ」
その視線の先にはゼルとルインがいた。
何やら楽しげに話している。
ルインに注目されているゼル。
サーラの眼中にもないバロール。
これが今の自分の立ち位置なのだろう。
――いいだろう、そこは認める。
バロールは静かに自答した。
そのうえで、俺は必ず乗り越えてみせる。
サーラを。
そして、過去の自分を。
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