109 ミラとラヴィニア2(ミラ視点)
「【石化】」
「ぬおっ!?」
ラヴィニアのスキルを避けきれず、ミラは両足を石に変えられた。
「詰み、ね」
と、目の前に魔力の剣を突きつけられる。
「ぐっ……これで二十連敗……」
「動きが直線的すぎるわ、君は」
ラヴィニアが言った。
「確かにスピードは相当のものだけど、動きが単純で読みやすいの」
「うーん……」
「実際、スピードだけなら君の方が私より上。でも、いくら速くても予測できるから、私はこうやって対応できる」
と、ラヴィニア。
「つまり、私の裏をかければ――私の対応を超えて、間合いに侵入することも可能よ」
「……けど、そこからは剣の勝負。隊長は剣でも俺と同等か、それ以上――」
ミラは唇をかみしめた。
正直、打開策が見つからない。
遠距離の間合いの戦いでは、向こうから一方的に【石化】の連打を受け、いずれは捉えられてしまう。
だから、まず距離を詰めなければ話にならないのだが、ラヴィニアはそれをさせてくれない。
そして、なんとか接近できたとしても、剣の勝負で彼女を制圧できるかといえば、そう簡単にはいかない。
並の剣士など歯牙にもかけないレベルで、ラヴィニアは剣の実力も高い。
「【石化】」
「ぬあー! また……」
「動きが単調よ、ミラさん」
ラヴィニアが言った。
彼女は決して怒ったり、冷淡な態度を取ることはない。
指摘自体は厳しいが、その態度はどこまでも温かかった。
温かく、相手の成長を見守ってくれる。
それがありがたかったが、しかし、
「いつまでも隊長の優しさに……甘えてられねぇ」
ミラはギリッと奥歯を噛みしめる。
「隊長、次で決めるぜ」
「ミラさん……?」
「もし駄目だったら、別のやつを対抗戦のメンバーに選んでくれ」
ミラがきっぱりと言った。
「それくらい自分を追い込まないと無理そうだ」
「……分かったわ」
ラヴィニアがうなずく。
「君の覚悟を尊重して、今まで以上に私も力を尽くすわね。さあ、来なさい――」
「絶対に、隊長から一本取る……!」
ミラの挑戦が、始まった。





