105 五人の戦士、決定
「むう……命拾いをした、ということでござるか」
カザオトがつぶやいた。
「はは、命拾いをしたのは俺の方かもしれないな」
「ご謙遜を。この間合いでの勝負なら、まず間違いなくゼル殿が勝っていた――」
言いながら、カザオトは悔しそうだった。
「遠距離戦で仕留められなかった時点で、拙者の負けでござる」
「いや、紙一重だったよ」
俺は微笑んで、彼に歩み寄る。
と、
「よう、お前も選ばれたか」
ミラが声をかけてきた。
「さすがだな、ゼル」
さらにバロールも。
「君たちも残ったんだな」
二人とも3番隊上位の実力者だから、この結果は妥当だろう。
「メリザガルドが落ちるとは思わなかったが……」
バロールが意外そうな顔をしていた。
「俺は面識がないんだけど、そんなに強いのか?」
「強い」
と、バロール。
「ただ、相手が悪かった。ちょうどラヴィニア隊長と一対一でぶつかる格好になったからな」
「要は強い者同士でつぶし合う形になったわけか」
「それがバトルロイヤルの難しさってことさ」
ミラが言った。
「俺はそんなに強い相手とはぶつからなかったな。途中、バロールとやり合ったけど、俺が押してたし」
「な、何を言う。押してたのは俺だ。撤退したのは、お前と戦っている隙を他の者に突かれたくなかったからだ」
「ま、その辺は俺も同じだな。強敵と戦って、弱い奴に隙を突かれて負けるってのは最悪だからな」
「強敵と戦って生じる隙、か……気を付けないとな」
俺自身もカザオトと戦っていたとき、周囲に気を配る余裕がなかった。
「そういうこと。君たち四人と私とで、後日行われる【魔王軍部隊別対抗戦】に挑むことになるわ。みんな、期待しているからね」
と、ラヴィニア隊長。
「対抗戦はいつ行われるんですか?」
「一週間後よ」
その一週間、俺はカザオトに頼み、修行することにした。
「拙者が相手でよいのでござるか、ゼル殿」
「俺は君の遠距離攻撃にかなり押されていた。もともと近距離での戦いは得意だけど、遠距離攻撃をさばくのは苦手なんだ。だから、君は練習相手としてすごくいい」
俺はカザオトに言った。
実際、選抜戦では彼に苦戦を強いられたからな。
「なるほど。逆に拙者は接近戦ではゼル殿のような強者に対して分が悪い……その練習ができるならありがたい」
「じゃあ、互いの利益が一致しているわけだ。よろしく頼むよ」
「こちらこそ。よろしくお願いいたす」
というわけで、俺とカザオトの修行が幕を開ける――。





