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短編集

【短編】君と出会えた奇跡と軌跡 .

作者: ひだまり



誰かと出会えることって必然だと思いますか .



あの道に行っていなければ、それに興味を持たなければ

大切な人とは出会えていなかったかもしれない .


そう思うと人と出会えるのって奇跡だと思いませんか .




____________________




「今日は付き合ってくれてありがとね。」



少し申し訳なさそうに笑う彼女 .

別に気にしてないよ、なんてハイスペックな言葉は僕の口からは出てきてくれなかった .


現時刻19:00 .

大学生になり一人暮らしをするようになってからは、

門限を気にする必要もなくこの時間まで出歩いていることが普通になった .


僕には何か好きなことや趣味があるわけでもなく、

大きい夢なんかは中学生の時に捨てた .


良くも悪くも平凡な人生を送ってきた僕は、

とりあえず大学に行っておけばある程度の仕事には就けるだろう、だなんて甘い考えを持っていた .


しかし、大学に入ってみるとそんな甘い考えは通用しないことがわかった .

周りの人は各々の目標、夢を持ってそれに向かって努力している .

そんな姿を見ていると本当に自分に飽き飽きしてくる .


そんな生活をしていた時に君に出会ったのだ .

誰とでも楽しそうに話し、いつでもクラスを盛り上げている、いわばクラスのムードメーカーだ .

しかも彼女にはぴったりな、教員になるという夢に向かって今を全力で走っている .


今こうやって彼女と一緒にいれているのも、

ある日彼女が、クラスの陰で息を潜めて過ごしていた僕に話しかけてくれたことがきっかけだ .


話しかけられた時は、なんで自分なんかに話しかけてくるのだと動揺したものだが、

きっと彼女なりに、誰1人見捨てないクラスを作ろうと努力していたのであろう .


実際に彼女と話してみると、こっちが話しやすいように話題を振ってくれたり、

手振りや身振りなどをつけて楽しそうに話しをしてくれたりと、すごく親しみやすい人なんだなという印象を受けた .

人と関わるだけ時間の無駄思考だった僕でも、

彼女とは話していたいと思えて自分でもびっくりした .


それから彼女が話しかけてくるたび、

他の人と同じように接しつつも内心すごく喜んでいた .


そんな少しイレギュラーな日々を送っていたある日 .

いつものように彼女がやってきたと思ったら、急にこんなことを言い出した .


「ねぇ、今日放課後買い物付き合ってくれない?」


放課後に人と遊んだこともない僕は、もちろん異性と放課後にどこかに行くということも一度も経験したことがなかった .

きっと大量に買いたくて、荷物を持ちきれないから男手が欲しいということだろう .

少し期待してしまう気持ちにそう言い聞かせる .


「うん、全然大丈夫だよ。」


そして迎えた放課後 .

初めてのことに少し浮かれてしまったようで、集合時間より少し早く着いてしまった僕 .

適当にSNSなんかを開いて暇つぶししていると、聞き馴染みのある声が聞こえてきた .

顔を上げると、私服姿の彼女が少し頬を紅潮させて僕を見ていた .


「お待たせ…っ!ごめんね、こんな寒い中待たせちゃって。」


そう彼女は言うと、ポケットから何かを取り出し僕の手のひらにのせた .

そして、彼女はついてきてと言うように、数歩前に出てから僕の方を向いた .


「お詫びのカイロ!寒かったよね、早くお店入ろう。」


それから彼女は服屋さんに入っては数分考え込み、僕にどちらの服がいいか聞いてきたり、

小物を売っている店に入っては、可愛いなどと言って楽しそうにショッピングをしていた .


そして気づけば閉館間際 .

服も何店舗かを回って買い荷物は結構な量になっていた .

それでも持っているのが苦痛に感じないのは彼女といるからだろうか .


最初は彼女も、荷物を僕が持つのを遠慮していたが、

自分では持ちきれないと悟ったのか、毎回僕が持つたびにありがとうと言って持たせてくれた .


店舗も回り尽くせたところで、そろそろ帰ろうと言う話になった .

彼女は送らなくてもいいと言ってくれたが、

荷物もかなりの量だったため、結局彼女の家まで送って行くことになった .


荷物を彼女の家の中に運び終えて、改めてお礼を言われた .

じゃあまた学校でね、と別れの言葉を告げられた時、咄嗟に体が動いてしまった .

扉を閉じようとする彼女の手首を掴んでしまったのだ .


困ったようにこちらをみる彼女 .

僕にはなんで体が彼女と別れることを拒んだのかがわからなかったため、

言葉を発することができなかった .


「えっと…はづきくん…?」


動きもしない僕に声をかける彼女 .


「あの、さ…愛莉沙(ありさ)と僕が出会えたことって奇跡だと思わない…?」


意味がわからないと言うようにきょとんとする彼女__愛莉沙 .

僕でさえ何を言いたいのかわからないのだから、意味がわからないのも当然のことだろう .


「愛莉沙が僕と同じ年に生まれたことがまず奇跡だし、こうやって同じ大学にいることも奇跡だし。」


僕の上手くまとまっていない話でも、真剣に聞いてくれる愛莉沙 .

彼女のそういうところに僕は惹かれたんだなと改めて思う .


「実はさ、君と出会うまでは平凡な日々を過ごしていたんだ。

でも君が話しかけてくれたことで僕の人生は変わったと言ってもいい。

人と関わることが嫌だったのに、君のおかげで最近は人と関わる機会も増えてる。」


そう、愛莉沙との出会いで僕は変われた .

今までやってこなかったようなリーダーなどのことも、少しずつ挑戦してみている .


「君の明るくて、みんなを引っ張っていっている姿に影響された。

そんな君が……」


少し息を吸ってから次の言葉を発する .




____________________





「はづくんおはよ~っ!」


やっぱり君と出会えたことは奇跡だ .

出会ったその時は何も思っていなくても、こうしてずっと側で支え合うパートナーになるのだから .


「おはよ、愛莉沙。」



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