XIII.アカルイミライ
お久しぶりです。
大変、お待たせいたしました。
やっと、更新です!
本当に申し訳ありません泣。
ここで、お知らせです。
この度、「a trick of destiny-運命の悪戯-」完結です!
え、どうなっちゃうの!!
亜紀と賢は!!??
…ということで、、どうぞ!!
あれから、賢のお母さんは一週間入院した。
自宅に戻る前に、私の父・一雄と話をする機会を設けた。
長年の誤解が解けたことで、賢のお母さんは賢と私の交際に反対していたことを謝罪していたとのこと。
「亜紀のこと、気遣いのできるお嬢さんって褒められたぞ。」
「それは恥ずかしいけど、よかった。」
「下着、用意してくれて本当に助かったって。やっぱり男じゃわからないしさ。」
「少しでも、力に慣れてよかった。」
「さすが、俺の娘だな。」
酒屋の店舗の入店ブザーが鳴り、
「ごめんくださーい。」
と、女性の声がきこえてきた。
「はいはーい!」とお父さんが向かっていくと、そこにいたのは翼のお母さんだった。
「橋詰さんじゃないですか!この前はどうも〜。」
「こちらこそ、わざわざ観にきてくださって〜。」
翼のお母さんだとわかって、私もお店に顔を出すと、とびっきりの笑顔で翼ママは応えてくれた。
「翼ママ!こんにちは!」
「あら、亜紀ちゃんいたのね!よかったわ!」
「ん?」
「今日ね、NYから海が帰ってくるのよ。光も夏休みに入るから海に合わせて帰ってきててね。」
「え!?海ちゃんとひっくんが帰ってきてるの?」
「それでね、海の誕生日会をやろうと思ってて。翼のライブで亜紀ちゃんと会ったことを話したら、亜紀ちゃんに会いたいって言ってて。」
「亜紀、行ってきたらどうだ?」
「うん。じゃあ私も誕生日会の準備一緒にしていいですか?」
「ぜひぜひ。みんな喜ぶわ。」
そう言って、翼ママはお酒を何本か買って、夕方に翼ママと近くのスーパーで待ち合わせをして、食材やケーキを買いに行く約束をした。
「わあ〜、亜紀ちゃんとお買い物なんて嬉しいわ。」
「本当ですか!?私も嬉しい!」
「娘とお買い物するのが夢だったのよ。うちは3人とも男の子じゃない?スーパーに行くといつも自分の好きなものしか目がないもの。」
「ふふ。たしかに。」
「光くらいかしら。一緒にカートを押してくれる子は。」
「ひっくんは優しいから、翼ママのこと一人にできないんだろうね。」
買い物から帰ると、翼から電話がきた。
「亜紀、海兄の誕生日会の準備してくれてるんだって?」
「うん。仕事は?終わった??」
「終わったよ。賢に代わろうか?」
「うん。ちょっとだけ。今日のこと言ってないし。」
「じゃあ代わるわ。」
(賢ー!亜紀が話したいことあるって。)
(え?あ、ありがとう。)
「もしもし?亜紀?どうしたの?」
「今日、翼のお兄ちゃんたちが帰ってくるから、海ちゃんのお誕生日会することになったの。」
「うん、わかった。久しぶりに会うんだろ?楽しんでな。」
「うん。ありがとう。」
「じゃあ翼に代わるわ。」
(え、もういいの?)
(うん。)
「亜紀?賢が少し拗ねてるかも。」
「そうかもね。後から伝えるともっと拗ねるだろうから。」
「たしかにね。じゃ、後でな。」
電話を切ると、ちょうど玄関の鍵が開いたようだった。
「光かしら。亜紀ちゃん、お出迎えしてもらっていい?」
「はいっ!」
早足で玄関に向かうと、中学生以来会っていなかった光くん(ひっくん)がいた。
「ひっくん!おかえり!」
「ただいま、亜紀。久しぶり。元気そうだね。」
「うん。元気だよ。」
「これ、お土産。部屋に荷物置いてくるから、仏間まだ持っていってもらっていい?」
光くんらしい優しい声と言葉。
中学まで恋焦がれた人の大人になった姿にドキッとした。
荷物を置いたひっくんは、「ただいま〜」とリビングへと来た。
「翼は?」
「もうすぐ帰ってくる。」
「翼がこの前のツアーの時に大阪来た時に聞いたけど、剣斗くんと付き合ってるんだって?」
「…うん。」
「海兄、知らないんだろ?知ったら嫉妬するだろうな〜。」
「嫉妬?海ちゃんが?」
ひっくんはそう言うと、おばさんが出した麦茶を一口飲んだ。
「さ、あと少しでお料理できるから光も一息ついたら準備してもらっていい?」
「うん、わかった。」
わたしは料理の盛り付けと、部屋の飾り付けを手伝った。
ひっくんが帰ってきて一時間後、海ちゃんが到着した。駅まで迎えに行った末っ子の翼が海ちゃんの大きなキャリーケースを持って玄関を上ってきた。
「海、おかえりなさい。」
翼ママが玄関まで迎えに行った。
「ただいま。亜紀は?居るんだって?」
「光とリビングに居るわよ。」
海ちゃんがリビングに入ってきたのと同時に
「ハッピーバースデー!!」
と、わたしとひっくんはクラッカーを鳴らした。
「海ちゃん、おかえりなさい。」
「亜紀。」
海ちゃんはわたしのことをぎゅっと抱きしめた。
「海ちゃん、欧米化した感じ?」
ずっとアメリカに住んでるとハグも普通になったのかなと思ったら、わたしの耳のそばで
「会いたかった。」と囁いた。
「海兄、亜紀がびっくりしてるから。」
「あ、ごめん。」
「さ、亜紀ちゃんと一緒に作ったのよ。みんなで召し上がりましょう。」
海ちゃんは「亜紀はこっち。」と、わたしを自分の隣の席に座らせた。
「亜紀、サラダ食べるか?ブロッコリー苦手だったよな?」
「もう、海ちゃん私もう大学生だし、成人してるんだよ?お子ちゃま扱いはやめて。」
「仕方がないよ、海兄にとっては10年前の亜紀からアップデートされてないだろうし。」
「翼には何もされてないか?いじめるなよ?翼。」
「ふふふ。海ってば、亜紀ちゃんの保護者みたいね。」
海ちゃんは昔のまま。
兄の博人と翼に泣かされた私をいつも慰めていたのは海ちゃんとひっくんだった。
私にとって、海ちゃんは王子様だった。
6つも年が離れているから、いつも可愛がってくれた。
「ちょっと、トイレ行ってくるわ。」
海ちゃんが席を立つと、
「海兄、やばいな。」
「剣斗くんと付き合ってるなんて言った日には…」
「想像しただけで背筋が…凍る。」
いつもクールな海ちゃんは、橋詰家の中でも魔王のような存在だ。
「絶対に口を滑らせても言うなよ。」
私とひっくん、翼ママは翼の言葉に深く頷いた。
海ちゃんの誕生日会は夜遅くまで続いた。
みんなでゲームをしたり、トランプをしたり、いつの間にか小さい頃に戻ったようだった。
「お邪魔しました!」
「亜紀、またな。」
「うん。」
「二週間くらいはこっちにいるから、亜紀が暇な時連絡くれ。」
「海ちゃん、久しぶりに日本に帰ってきたんだから同級生と会う予定もあるでしょ?」
「そんな毎日誰かと会うわけでは…。」
「ま、亜紀ちゃん。またご飯食べにきてね。」
「はい!」
「じゃあ、送ってくるわ。」
翼が家まで送ってくれることになった。
「海兄の誕生日会、ありがとな。」
「海ちゃんにも、ひっくんにも会えてよかった。翼パパがいなかったのは寂しかったけど。」
「ま、海兄には賢のこと言わないように気をつけるから。」
「そんなの気にしないと思うけど…。」
「いや、海兄は意外と純粋だからなあ…。」
約束していたあの日が近づいていた。
今日は、賢の家に泊まることになっていた。
「亜紀。これ。」
「ん?なに?」
賢から封筒を受け取り開けてみると、そこには新幹線の切符が1枚入っていた。
「切符?」
「ちゃんと見て。」
「ん?東京から仙台?」
「平泉行きたいって言ってたじゃん?今回は、イベントライブも見に来て欲しいし、それに俺たち遠出したことないしマネージャーと充さんに相談したら、ライブの後なら二日間旅行してきていいって言ってくれて。」
「え、本当?」
「うん。行きは俺は機材車で一緒に行けないから、新幹線で一人で仙台来て。マネージャーが亜紀のこと迎えに行ってくれることになってるから。」
「ありがとう。楽しみにしてるね。」
「俺も、かなり楽しみだよ。」
いつもはみんなの遠征している間、私は東京に居て、遠征中みんながどう過ごしてるのかもわからなかった。
「レコーディングも終わったし、亜紀との旅行から帰ってきたらPV撮影だし、着々とメジャーデビューに近づいていってる実感が湧く一週間になりそうだな」
「デビューしたら忙しくなるかもしれないもんね…」
「なんだよ、寂しいのか?俺は忙しくなっても、亜紀とは離れないよ?」
「本当?約束して…?」
「約束…」
そう言って、賢は私の手を取り小指を絡ませた。
少し、賢の優しさに甘えている自分がいた。
翌朝目覚めると、賢は私のために朝食を用意してくれた。
「おはよ。ちゃんと眠れた?」
「うん。」
「さ、顔洗って朝ごはん食べて。」
夫婦になったらこんな朝が毎日来るのかな、なんて考えてしまうくらい幸せだ。
「今日、雑誌の撮影とかで忙しくて、もうすぐ出なきゃいけないんだ。」
「え?それ先に言ってよ。私が朝食用意してあげたのに…」
「今日は亜紀に朝食作ってあげたかったからいいんだよ。初めてじゃん?」
「確かに…初めてだね。ありがとう。」
「亜紀、いつもありがとう。」
ありがとうなんて足りないくらい…賢には感謝してるのに。
私は賢に何かしてあげられてるのかな?
賢たちが東京を発った翌日、仙台に向けて出発した。
「じゃあ、行ってきます!」
「着いたら連絡しろよ。」
「もー、子供じゃないんだし、一時間半新幹線乗ってれば着くから大丈夫!」
お父さんに東京駅まで送ってもらい、私は最低限に抑えたつもりの大きなキャリーバッグを持って新幹線に乗り込んだ。
お父さんにはあんな見栄を張ったけど、新幹線に一人で乗るのは初めて。家族以外で乗ったのは多分中学の修学旅行くらいだろう。
新幹線に乗ったことを賢に連絡すると、
「ちゃんと乗れてよかった。魅波が首を長くして待っているよ。気をつけてきてね。」
と返事が来た。
窓際の席を用意してくれたみたいで、私は慣れない新幹線に一人で乗っているとなんでも真新しく見えてくる。
大宮駅を過ぎて数十分経つと、田んぼや畑が窓から見える。
駅が近くなるほどにやはり商業施設が密集しているなあ、と思いながら山の方の小学校は何人くらいいるのかな…なんて考えていた。
そんな疑問が次々と浮かんでくるうちに、社内の音楽が鳴り「まもなく仙台、仙台。」と自動音声のアナウンスが流れた。
そばに置いてたキャリーバッグを持ち、出口に向かい、新幹線を降りて指定された改札を抜けると、久山さんが待っていた。
「亜紀さん!こちらです!」
「あ!久山さん!今日は迎えに来ていただいてありがとうございます!」
「いえいえ。充さんも是非と言っていたので。旅行、楽しみですね。」
「はい!最低限の荷物にしろって言われたんですけど、キャリーバッグになってしまって…」
「相当楽しみなんですね!さ、会場に向かいましょう。」
久山さんはとても童顔で、魅波くんは私たちより年下だと勘違いしていたくらいだ。
とても仕事をテキパキこなしてくれる。子供も生まれたばかりだそうだ。
「荷物は預かります。ライブが終わったら泊まるホテルにお送りしますので、剣斗さんの荷物と一緒にしておきますね。では、会場にご案内します。」
「あ、はい。お願いします!」
さすがマネージャー!と言わんばかりの行動力を見せ付けられる。
私にバックステージパスを貼ってくれ、関係者のプレートまで渡してくれる。
今日もたくさんのバンドがイベントに出ることになっている。
久山さんの後ろをついていくと、悠奈や泉たちの口からよく聞くバンドの名前もチラホラ伺える。
久山さんは、DIM-TAMの控え室のドアをノックして開け、
「亜紀さんがいらっしゃいました!」
と言うと、魅波くんが私に駆け寄ってきた。みんなメイクを済まして待機していた。
「亜紀ちゃん、来てくれてありがとう!久しぶりに会えて嬉しいな〜」
「魅波くん、元気そうでよかった。」
「亜紀ちゃんも元気そうだね!」
「うん!あ、柳くんも久しぶりだね。」
「そうだったっけ…?」
「なんだよー、彼氏と幼馴染には挨拶ねえのか?」
「だって翼は海ちゃんの誕生日会で会ったじゃん!」
「ま、迷子にもならずに無事についてよかった。」
「剣斗は亜紀に甘すぎる!兄さん達も!」
「何?翼も優しくして欲しいの〜?」
「何言ってんだよ、バカ!」
「あ!そうそう!海ちゃんが翼にお土産送ってきてって。牛タンがいいってよ。」
「先週ニューヨークに帰ったってのにニューヨークに牛タン送れねえだろ。そういえば海兄、もしかしたら日本の本社の管理職に昇格するかもしれないって言ってたな。そんなに亜紀の近くにいたいのかね〜。」
「もしかして、翼のお兄さんって俺の恋敵!?」
「大丈夫。魅波は戦力外。」
「え、戦力外通告…?」
「あ!忘れるところだった!酒饅頭〜!」
「これ美味しいんだよね!」
「明日から2人で平泉だっけ?」
「うん。」
「じゃ、俺らは3人で牛タン食べて帰るか。」
「えー、俺も亜紀ちゃんと平泉行きたい〜!」
「だから、お前は戦力外だっつーの!」
そんな話をしてると、開演の時間が迫ってきた。
イベントライブは動員が多いバンドが後から出てくる。
DIM-TAMは最後から二番目。
「亜紀、せっかくだからいろんなバンド見てきて。あとで率直な感想教えて。亜紀はDIM-TAMしか見たこと無いから、一番一般人として客観的に見れると思うし。」
「さすが、剣斗は言うことが違うな〜!」
「じゃ、私DIM-TAMのためにお仕事してきます!」
「おう!よろしく!」
「魅波くん、柳くん、翼、賢。頑張ってね!またあとでね!」
そうして久山さんに案内されて関係者席に座った。
周りには女性はあまりいなくて、少し私は浮いていた。隣には雑誌のライターさんがいた。
どのバンドも3曲、4曲くらいずつ演奏する。
きっと、新曲とか代表曲なんだろうけど。
出演バンドの中には魅波くんに連れて行ってもらったDIM-TAMの先輩バンドBUTLERも出ていた。出番はDIM-TAMの2つ前。
どのバンドもそれなりにファンがいて、ライブを盛り上げている。
DIM-TAMが出てくると、一際声援が大きくなった。
「魅波ぃいいいいい!」
と会場全体に響くファンの声。
「もっと声でるだろ?かかってこい!」
と魅波くんが観客を煽る。いつもの魅波くんとは全く違ってクールだ。
ライブを見るのは3回目。本当にライブを見るたびに引き込まれてる気がする。
1曲目はライブでは定番になってる曲、2曲目は会場のノリを誘う曲、3曲目はインディーズラストシングル『Precious』、4曲目はインディーズのデビュー曲だ。
最後の曲の前に魅波くんは口を開いた。
「この歌は、僕らがライブをしてきて初めてCD化した大切な一曲です。それに負けないくらいのメジャーデビュー曲を制作中です。インディーズラストシングル、そしてメジャーデビューシングルも誰かの人生の一部として励ましたり勇気づけたりできる曲になれるように頑張っていこうと思います。では、最後の曲です。『Reason』」
『Reason』はこの前のツアーファイナルでも歌っていたし、初めて悠奈と行ったファンクラブのLIVEでも歌っていた。
生きることについて、ストレートに歌っている歌。
サークルの仲間たちもこの歌が好きで、コピーしたいと言っている。
バラード曲ではないのに、涙するファンも多く、この曲がどれだけ心の糧になっているのだろうと思わされる。
DIM-TAMの出番が終わると、10分して、一番人気のバンド「Quartetto」が登場する。
メジャーデビュー5年、結成10周年。中堅なのか。ベテランなのか。
「仙台、待ってたかぁああー!」
ヴォーカルの人が大声でオーディエンスを煽る。
「俺も会いたかったぜ」
というヴォーカルの甘い言葉に、オーディエンスの「キャー」という声が少し聞こえる。
メジャーデビューしたら、DIM-TAMもこんな感じになるのかな。
胸が高鳴るほどのオーディエンスのテンション。DIM-TAMとはまた違った雰囲気にやられる。
Quartettoのヴォーカルは、容姿端麗で俳優としても活躍しているHIROKI。
素人のわたしでもわかる。
熱狂的なファンが多いようだ。
少し聞いたことがある歌。きっと、CMとか何かの主題歌に起用されていたのだろう。
デビューするとは、こういうことなんだなと思わされた瞬間だった。
全部のバンドの出番が終わり、終わりかと思っていたが、アンコールの声がやまない。
閉まったはずのカーテンがまた開き、出演したバンドのメンバー全員出てきた。
最後に、Quartettoの名曲を出演者全員で演奏。
各バンドのヴォーカルが最後に一言挨拶をして幕を閉じた。
ライブの後は、打ち上げのために夜はホテルで一人で過ごすことになっていた。
久山さんが宿泊するホテルまで送ってくれて、チェックインをすると電話が鳴った。
「亜紀?ホテル着いた?」
「うん。着いたよ。」
「一緒に過ごせなくてごめんな。」
「ううん、今日のイベントライブすごく良かった!他のバンドもステキだったよ!」
「俺はモニターでしか見てなかったけど、本当に盛り上がったよな。」
「打ち上げはお疲れ様って意味でやるものだから、みんなで楽しんできてね。」
「先に寝てろよ?」
「うん、温泉入って寝るね!」
「はいよ。」
「おやすみ。」
「おやすみ。」
きっと、打ち上げの途中で少し抜けて電話してくれたのかな。
賢の優しさが嬉しかった。
「亜紀。亜紀。」
「ん…?」
「おはよう。」
「賢、いつホテルに戻ってきたの?」
「0時過ぎかな。抜けて帰ってきた。」
「起こしてくれたらよかったのに。」
「だって、亜紀の寝顔可愛いからさ。」
「ちゃんと眠れた?」
「うん。亜紀の寝顔見ながら寝てたよ。」
「もぉー、恥ずかしいなぁ。」
「さ、出掛ける準備して!」
「うん。」
ベッドから起き上がると、賢が背中から抱きしめてくれた。
「亜紀、初めてのふたり旅だね。」
「うん。賢と一緒に行けるのが幸せ。」
二人のはじめての旅行は仙台から岩手へ。
いつもは車で移動しているから、二人で手を繋いで新幹線でゆったりできる時間が幸せに感じた。
「ツアー以外の新幹線っていつぶりだろ。」
「お母さんを見送りに行った時は乗らなかったもんね。」
「誰かと旅行に行くっていうのも久しぶりだな。」
「修学旅行とか家族旅行しか経験ないよね。」
「彼女と二人で出かけるって幸せだな。」
そういうと、賢は私の手を強く握った。
私も強く握り返す。
この手を離したくないと強く思った。
二人の時間はあっという間で、幸せな時間はすぐに過ぎ去っていく…
この一瞬一瞬を大切に生きていかなきゃいけないんだと改めて思う。
この先の二人には何が待っているだろう。
二人なら乗り越えられる。
幸せな未来を描こう。
To be continued...
2019.8.1〜
a trick of destiny Ⅱ - 運命の悪戯2 -
お読みいただき、ありがとうございます。
作者の、樋山 蓮です。
はい、皆さんの言いたいことわかります。
「DIM-TAMメジャーデビューしてないじゃん!!」
はい、そうです…笑。
だらだら書いていて読んでくれている皆さんに申し訳ないなと思い…
悩みに悩んだ結果…
シリーズ化させていただくことにしました!
ということで、
シリーズ2作目も亜紀と賢、そして翼のこれからを見届けてください。
これからも、何卒よろしくおねがいします。
樋山 蓮
2019.7.29