第26話 お昼寝してましてね。
(SIDE: ?)
ある晴れた午後のことです。
お花畑で花を摘んでいたシャルは、ポカポカ陽気に誘われ、うつらうつら。
だんだん眠たくなった様子です。
「ワタチも一緒にお昼寝するにゃ~」
おやおやぁ、護衛のパンサーまで一緒にお昼寝してしまいそうな勢い。
するとそこへ、空飛ぶ絨毯がやって来て、
『へい、俺に乗りなよ』
と、言わんばかりに、主張します。
なんだったら、絨毯の端で親指を立てているポーズのようにも見えます。
「いいんですの? ではお言葉に甘えて」
「言葉なんてないけど、ありがとにゃー」
シャルとパンサーは絨毯の上に乗っかり、直ぐにスヤスヤと眠り始めてしまいました。
絨毯は二人を乗せ、フワフワと浮いていきます。
ぽかぽか陽気にふわふわ絨毯。
二人は夢見心地でお昼寝です。
あらら、絨毯はゆっくり空を泳ぎ始めましたよ。
そして屋敷から遠ざかっていきます。
どこへ行ってしまうのでしょう?
(SIDE: トール)
「あ、絨毯の上に人が。あれは天使、いや伯爵家の悪魔! だけど!」
以前は終わった恋だと思いました。
だけど、再び僕の前に現れました。
きっと彼女は逃げてきたに違いない。
僕が助けなきゃ。
僕は空飛ぶ絨毯に飛びつきました。
「今、助けますから!」
そして僕たちは、真実の愛で結ばれる。
と、思った時もありました。
『バァァン』
「あれぇぇぇぇ?」
絨毯に蹴られてぶっ飛び、僕は川に落ちました。
『ドボンッ』
ちくしょう、もう何も信じるもんか。
※※※※※※
(SIDE: ?)
途中、絨毯に飛びかかって来た少年がいましたが、彼の席は絨毯の上には無かったようです。
『バァァン』
と、絨毯にぶっ飛ばされて川に落ちました。
「あれぇぇぇぇ?」
絨毯はフワフワ飛んでいきます。
フワフワと流れる絨毯の前方に、
「キャー! 誰か助けて!」
と、盗賊に襲われている娘がいました。
フワフワ飛んでいる絨毯は、機敏な動きで4人の盗賊たちをバッタバッタとなぎ倒しました。
乗せているシャルたちの安眠を妨げない華麗なテクニックです。
「ありがとう絨毯さん」
疑問も持たず絨毯にお礼を言うなんて、変な娘もいたものです。
絨毯はお礼を無視してフワフワ飛んでいきました。
おや? 今度は子猫が風車小屋の屋根の上で、降りられなくなってニャーニャー鳴いています。
もちろん、グレイたちとは違う真っ当な猫ちゃんです。
絨毯は、華麗に絨毯の端と端でそっと子猫を捕まえ、降ろしてあげました。
「にゃぁ、にゃぁ」
絨毯にお礼を言うなんて、妙な子猫もいたものです。
絨毯は子猫のお礼を無視して、フワフワ飛んでいきました。
「む。あれは我が絨毯! こんなところにいたのか! さあ、魔王城に帰るぞ!」
と、人相の悪い魔族が現れました。
さてさて、絨毯となにか関係があるのでしょうか?
ですが絨毯は、魔族を無視して少しだけ高く移動。
魔族の手の届かない位置で、フワフワ飛んでいきます。
「コラコラコラ、どこへいく! 待てったらまて!」
魔族は頑張って追いかけましたが、絨毯の巧みなスピードワークに翻弄され、なかなか追いつく事が出来ませんでした。
その間、絨毯はシャルたちに一切の不快感を与える様子もありません。
匠の技です。
そして息もたえだえに、追いかける魔族は、絨毯ばかりを気にしていたせいで、
『ドボン』
と、肥溜めに落ちました。
「クソー!」
はい、その通り。“クソ”もとい、そこは肥溜めですから。
絨毯はただフワフワ飛んでいきます。
そうして絨毯は、いつの間にか、ベネット伯爵屋敷のお花畑に戻ってきました。
「ふぁぁよく寝た。ありがとう絨毯さん」
「気持ちよく眠れたにゃ」
それは、心地よい午後のお話。
※※※※※※
(SIDE:ベネット)
って事がありましてね。
それを見ていたのは、実は俺。
え、ずっと追いかけてたのかって?
まあ、覗きは、ライフワークといいますかね。
見守るのも夫の務めというか?
ま、さて置き、途中、何やら事件事故もあったけど。
シャルとパンサーには、秘密、と言うことで。




