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第17話 オンセンが見つかりましてね。

「はて、オンセンとは?」

 ミカからの報告で、俺は首を傾げていた。

「新たな観光資源ですわ」 

 井戸を掘る為の掘削作業中、偶然、ソレが出たらしいのだが……。

 とにかく見ない事にはなんとも。


 と言う訳で、俺たちはオンセンとやらにやって来た。 

 

「なるほど、温かい泉か」

 俺、一瞬で納得。

 火山地帯などでよく見るヤツだ。


「で、これが、どんな観光資源に?」

 と、そのまま教えてミカさん!

「これは、浴場として利用できます。温泉は怪我や病気にも良いとされ、なにより美容に最適だとか」

「美容……効果ですってぇ?」

 と、速攻母さんが食いついた。目がキラキラしてやがる。

 それ以上、若く見えてどうするのか。


 さて置き、なるほどなるほど、オンセンで大浴場が作れるわけか。


「じゃあミカ。大浴場建設の方も、よろしく手配してくれる?」

「畏まりました。それと提案なのですが、よろしいですか?」

「ほうほうほう、なになに?」

 

「どうせなら大々的にイベントを。美人コンテストなどいかがでしょう」

 美人コンテストとな? 美容効果を前面に圧していく魂胆か。

 ミカめ、やりおる。


 で、その段取りから工事までが急ピッチで始まった。


 そして、急ピッチで仕上がったわけで。

 出来上がったばかりの、大浴場特設広場。



「第一回、湯けむり美人コンテストを開催いたします」

 ミカが司会でコンテストは始まった。

 スーツをビシッと決めていて、司会が似合い過ぎているよミカさん。


 そして凄い、大盛況だ。

 このイベント、賞金が出るとあって参加者も相当数集まった。

 それに群がる見物客も集まった。

 そして当然ながら、ラッキースケベ目当ても集まった。


 ちなみにだが、俺はムッツリなので、オープンエロは好まない。

 密やかな、背徳的な……、おっほん。


「それでは、この街の領主、ベネット伯爵からのご挨拶です」

 おっと、出番だ。


 壇上に上がって、手を振る。

 野郎どもの視線が一気にしらけている。まあ、分からんでもない。


 と言う訳で、長話は無用!

「えー、今日は集まっていただきありがとうございます。トラムの街も温泉も、存分にお楽しみください」

 さっと、終らせて壇上から降りようとした時だ。


「きゃぁ、勇者様ぁ!」

「かっこいい!!」

 など、歓声が上がったのだ。

 

 勇者効果って凄い、だが俺は、シーフ以下略。

 ま、母さん以外に言われ慣れてないからね? うれしいけどね?


 ところで、さっきから母さんの姿が見えないが……。


「それでは始めて行きましょう。エントリーナンバー1番 リーゼロッテ!」

 おい、子持ちエルフよ、なぜそっちにいる?

 

「リーゼロッテさん、一言お願いします」

「みんなぁ、集まってくれてありがとぉ。私に清き一票をよろしくねぇ」

 

 欲望渦巻くこの会場で、清きってなんだろうね。


「うお~、リーゼロッテちゃあああん!」

「リーゼロッテ様! 今日も可愛らしい!」

 などの、黄色い歓声。

 息子としては非常に複雑な気分だ。


「続いてナンバー2番! シャルロッテ!」

「あ、あのあのあの、こここ、こういうの。よよよよ、よくわかりませんが、頑張ります!」

 頑張るところは、そこ(出場)じゃないと思うんだ。

 と言うか、おいこら。主催側が何故、そんなに連続で出場している?

 王国の姫なんだが? しかも俺の妻なんだが?

 

「うお~、シャルロッテ様~!」

「か、可愛らしい!」

 こちらにも歓声が、夫としては複雑だよ?

 

「続いてナンバー3番……――」

 

 楽しげなのはいい事だが、人混みは苦手だ。

 恥ずかしいやら、複雑やらで、俺は会場をそっと抜け出した。

 

 そして潜り込んだ酒場は、イベントの影響で閑散としていた。

 静かなのは、俺にとってはありがたい。

 ここで時間を潰そう。

 

 暫くして背後から声が掛かった。

「よお、にーちゃん。冴えねえツラしてんな」

 俺は声に振り返った。

 無精ひげの茶髪、人族のオッサンだ。

 

 と言うか、背中に向かって冴えない顔とか、どんだけ失礼なんだ。

 まあ、実際冴えない面をしているだろう。……予言者か?

 

「ああ、なんだかドッと疲れがね」

「そういうときは酒に限るぜ。ところで、ものは相談なんだが、一杯奢ってくれないか? いやコンテストに賭けたらスッカラカンになっちまってな、大方の結果はでてるようなもんだから、あとで返すから、な?」

 

 このオッサン、絶対ダメなヤツだ。

 けど、まあ主催者としては責任がないとは言い難いので、一杯くらいはおごってやろう。

 

 しかし賭けまで催していたのか、シュペー商会よ。

 

「ところで、にーちゃんは誰に賭けた?」

「俺は賭けてないよ。そういうアンタは?」

 

「俺はリーゼロッテさ。魅力的な女性さ」

 おいおい、いい感じに黄昏るなよオッサン。

 

 というか、母さんの魅力か、

「チョット、分カラナイデスネ」

 動揺が片言を誘発した。

 

 身内なのだ、母さんの魅力なら嫌と言う程知っている。

 内心でも照れてしまう。

 

「ははは、にーちゃんは6番のニーシャちゃん辺りがお似合いだな」

「誰それ」

 可愛いなら、一度そっと覗きに……、いや見物に行こうとは思ったのだよ。

 

「おっと俺はもう行くわ。ご馳走さん」

 と、オッサンは立ちあがって背を向けた。

 

 ご馳走とは、アンタさっき返すって言ってなかった?

 とは、言わないで背中を見送っていると、オッサンは出口で立ち止まり、俺に向かって振り返った。

 

「忘れものか?」

 静かな酒場で、俺の声は容易く届いただろう。

 オッサンは、微笑みながら首を横に振った。

 そしてオッサンの唇は、声を出さず何かを紡いでいた。

 

 俺は、シーフなのだ。だから唇を読んだ。

『ベネット、元気でな』

 声を出せよ、オッサン……。

 

 俺は有名人だしな。知ってても変じゃないか――。

 

 

 

 で、会場に戻ると、美人コンテストは佳境を迎えていた。

「最終審査は入浴衣(水着)です。セクシーなコスチュームで会場をトリコに出来るのか!」

 

「リーゼロッテは白の入浴衣(ビキニ)。彼女を先頭に参加者の揃い踏みだ」

 おい、子持ちエルフよ、け、けしからん。 

 

 その時だ。

 壇上に向かう階段で、8番の娘がつまずいた。

「うわっ、とととと!!」

 そのまま転びそうになりながら、シャルに向かって突進したのだ。

 

「シャルちゃん! 危ない!!」

 咄嗟に母さんが起こした局地的な竜巻。

『ブオォォォォォ』

「あぁぁぁれぇぇぇぇぇ……――」

 あ、8番の娘さん!?

 

 ぶっ飛んでいく8番さん、保護魔法は勿論かかっていたが……。

 その時、俺は見逃さなかった。

 さっきは好きじゃないと言ったが、見えたモノは仕方ない。

 そう、ラッキースケベだ。

 

 無意識に俺は、ひらひらと落ちて来た黒いビキニを掴んでいた。

 

 

 そして、賭けでは本命だった母さんが優勝した。

「賞金は、みんなのために使うわぁ。取りあえず晩御飯にぃ」

 相変わらずみんなの範囲が狭い件について、俺は何も言う気はない。 

 

 

 屋敷では、みんな(身内)で祝勝会をした。

 

「旦那様、シャルの入浴衣(ワンピース)、いかがでしたか?」

「ああ、可愛かったよ」

「良かったぁ。ローザと相談した甲斐がありましたわ」

 で、俺は件のメイドに視線を向けた。

 

 美人なローザも出場していたら、母さんといい勝負をしたんではなかろうか。

 と、言わぬが花だ。

 この微笑みまで周知したら、俺の密やかな……おっと。

 

 そして余談だが、オッサンの言う通り、6番のニーシャちゃんは可愛かった。

 密やかリストにそっと……おっと。 

 

 

 宴も終わりを迎えたころ、母さんが酔いつぶれていた。

 後は任せ、俺は母さんを寝室へと運ぶ。

 

「ピエール……――」

 寝息混じりに母さんの零した寝言は、どっかいってしまった親父の名前だった。

 

 

 ※※※※※※

(SIDE:ヘキサ)

 

 私の名前はヘキサ。ある組織から雇われた暗殺者だ。

 前回の蛇使いでは失敗に終わった。これが三度目の正直だ。

 

 失敗なんてしないんだ。まだ間に合う。

 深呼吸して自分に言い聞かせる。

 

 私は今、美人コンテストに出場者として紛れている。

 しかし入浴衣(水着)審査だと?

 

 は、肌を晒すなんて……。

 え? 壇上に上がれ? は、恥ずかしいが我慢だ。

 

 観客たちよ、見るな、私を見るんじゃない。 

 グギギギ、体が強張っている。

 し、しまった、足がもつれて、つまずいた――。

 

「うわっ、とととと!!」

「シャルちゃん! 危ない!!」

 

「え?」

『ブオォォォォォ』

「あぁぁぁれぇぇぇぇぇ……――」

 

 

 

 ※※※※※※

(SIDE:アナザー)

 

「今回はヘキサが悪いだろ」

「完全に、ええ。ヘキサがやらかしましたね」

 

「もうヘキサをクビにするか」

「うむ……」

 

「それより……我々の身も()()()()()()ぞ。とにかく早々に隠れよう」

「おお、そうだな」

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