表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/38

第15話 側室があらわれましてね。

 知ってた? 遺跡迷宮も財源になるって。

 俺はシャルに聞くまで、知らなかったよ?

 

 魔王はやっつけたし、聖剣がある限り魔物も現れない。

 と言う訳で安全な観光地として新たな財源となる。

 

 シャルはこのことを王都に周知した。

 結果、どうなったか。

 

 勇者一行が魔王を倒した遺跡と言う事で、観光客殺到。

 勇者が領主を務める土地と言う事で、移住希望者殺到。

 

 それと再三申し上げておりますが、俺、シーフですけどなにか?

 

 ちなみに余談ではあるが、何故シャルはこの妙案を思いついたのか。

 答えはローザの入れ知恵だった。

 シャルは、それを俺にそっと告白してきたが、シャルだからこそ出来た宣伝でもあるので、二人の手柄だとシャルを褒めてやった。

 良い判断だと、ついでに自分も褒めてやった。

 

 しかし新たな問題も発生した。

 

「土地はあるけど、観光客の宿も居住地も、建築が間に合わないよぉ」

 と、困った事があると俺は直ぐ母さんに頼ってみる。

 もしかしたら、とんでも魔法で、ちょちょいっと……ならないかなぁって。

 

「そうね、いい方法があるわぁ」

 おお、さすが母さん、やはりとんでも魔法が? 

 

 違うわ馬鹿め、何でも魔法で出来ると思うなベネットよ。

 と、自分で自分を叱責してから数日後。

 

 母さんの知らせを受け、以前お世話になったシュペーさんが、何人かの使用人と娘をつれてやってきた。

 なるほど、シュペー商会の会頭。あの時築いたコネクションが、ここで生かされるわけか!

 

 

 それから直ぐに、応接間にお通しして、俺と母さん、そしてシャルとで話を伺う事にした。

 出来るメイドのローザにも、勿論スタンバイしてもらっている。

 

「観光地整備と職人の手配。そして資材はお任せください。トラム村をベネット伯爵領の中心都市に押し上げましょう」

 シュペーさん、かっこいい。

 と言うか、もともとココしか集落ないけどね。

 

 しかし都市になると聞くと、胸が躍る。

 

 だから俺は速攻だ。

「是非、お願いします」

「ええ、つきましては、二つばかりご相談が」

 商人なのだから条件はあるでしょう! あるでしょうとも!!

 

 貴方、無理いわない人って俺知ってるよ、だから、

「ええ、相談を伺いましょう」

 と、俺、いい笑顔で応じる姿勢。

 

「観光業、商業を是非、我が商会に仕切らせていただきたい」

 むしろ願ったりですよ、ええ。プロに任せて儲かるならウインウインだ。

 

 いい笑顔継続中。

「で、もう一つは?」

「この娘を、是非、伯爵様の側室(そくしつ)にしていただきたく」

 いい笑顔かたまる。ソクシツってなんだっけ? 脳内検索。

 検索結果がヒットするまで、約3秒。

 

 うーむ、14歳か15歳といったところか。

 長い黒髪に茶色の目、眼鏡がキリっとしてて美人だとは思うのだが……。


挿絵(By みてみん)


 俺、固まった笑顔のまま、静かな母さんを見る。別に顔色を窺うわけじゃないんだが、参考までにね。

「まあ、伯爵だもの。お母さんは歓迎よぉ?」

 で、この答えである。

 

 え、いいんだ? というのが俺の感想だ。

 たまに不思議に思う事がある。それは、母さんのこの()()()()さだ。

 

 俺が、人族の街にいた時のこと、

『恋はするものじゃない。落ちるものだ』

 なんて、おれが追放されたパーティーのリーダーは言っていた。

 だが、エルフに関して言えば、恋すらもひっくるめて(はぐく)む性質がある。

 愛も蓄積するものだから、ゼロからスタートでもやっていけるのだ。

 

 母さんの発想は、まさにエルフの()()なのだが、話に聞く“親父”との関係が、妙に不自然に思えたのだ。

 

「ミカ・ベルドナンドと申します。旦那様、よろしくお願い致します」

 と、ミカは既に乗り気の様子じゃないか。

 

 まあ、美人だから良しとす――、

「わわわ、私は、私は……」

 と、シャルが動揺マックスで声を発した。

 勇気を振り絞った感がある。


 そうだ、忘れていたが、重要なのはエルフがどうとかより、人族であるシャルの気持ちだ。

 

「正妻の、シャル、シャル、シャルシャルロッテと申しますわ」

 シャルは、気丈に振る舞っている。名前が、シャルシャルシャルシャルロッテ、みたくなってるが。

 

「いいのか?」

 俺は、シャルを傍らに呼んで問い掛けた。

「ええ、正妻のよよよよ余裕ですわ。それに、領地が発展するならららら」

 よよよよ余裕ね。なんか、歌っているみたいな動揺の仕方だが、目が口ほどの物を言っていた。

 “私は大丈夫”ってね。本当にいい子だ。

 

 だから俺、シュペーさんに即答する。

「では、改めてお受けしますよ」

 鉄は熱いうちにって言うしね。

 

「私が言うのもなんですが、ミカは類稀なる商才があります。必ずや領地経営の一助になることでしょう」

 シュペーさんも満足げだ。よろしくな、お義父さん。

 

 で、改めて見ればシャルはミカに引き攣った笑みを向けている。

 それに対し、ミカは眼鏡を光らせ、余裕の笑みだ。

 

 妙なライバル心だろうか? まあ、……時間が解決してくれることを願う。

 

 

 

 

 それから数日。

 で、今後トラム村村長が都長になるとしても、一人では色々が無理だ。

 と言う訳で役人も雇う事に。

 

 早速募集した。

 

「このたびは領主就任おめでとうございます。徴税官のゼニッスと申します」

 と、王国直轄地だったころからの担当役人が一番にやってきた。

 面接は、俺と母さんとミカで行う。

 

 ゼニッスは、臆面無く俺に小箱を差し出した。

 受け取って開けてみれば、金貨が50枚程度入っていた。

 いわゆる賄賂だ。 

 

 それから、しばらく面談をして、満面の笑みでゼニッスは出て行った。

 手応えありって感じなのだろう。

 

 だが、母さんが直ぐに言った。

「あれは駄目ねぇ」

 

「ええ、義母様。ですが、一つだけいい事が分かりました」

 ミカの同意後に続く言葉に、俺、首を傾げた。

 

「ミカさーん、教えてぇ、いい事とは?」

 と、俺は生徒気分だ。

 

「金貨50枚出しても、役人に付きたいと言う事は、この土地にそれ以上の価値があると試算したからです。いわば、これは評価額ですから、新興の領地としてはかなり良い評価です」

 な、なるほど、頭いい子だ……。

 

 で、母さんは、金貨50枚を眺めながら言った。

「このお金は、みんなのために使いましょう。まずは晩御飯に」 

 みんなの範囲がやたら狭い件については、俺、何も言わないよ。

 

 

 それからミカの手腕で役人も揃い、俺たちの領地運営が本格的にスタートしたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ