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才女との過去その2

 イヴが熱を出してしまった。

 昨日、寝る前に少し話をしてイヴは俺が来なくなったと勘違いしてしまったようだ。

 出かける前に食事で話した内容は覚えていなかった。とりあえずお互いに謝った。

 これでお互い元通りだ。


 ……だが、その次の日だった。


『イ…イヴどうしたんだよ』

『レイくんおはよ。朝ごはん出来てるよ』


 まずイヴの家に到着して驚いたことは部屋が綺麗なままだったこと。

 普段ならば来た時に部屋は散らかっている。

 到着後は片付けから始まるの日常なのだ。

 また、イヴは基本朝に弱い。キリッとしているなんてあり得ない。

 しかも料理をそつなくこなすなんて、天地がひっくり返ってもあり得ないのだ。


『どう?……美味しい?』

『あ、はい。普通に美味しい』


 イヴが作ったのは焼いたトーストとベーコン卵であった。

 あり得ないのだ。卵すらまともに割れない。

 ましてや面倒くさがりで料理なんてしないイヴがなんで?


 その原因はすぐわかった。

 顔がほんのり赤い。昨日の今日でこの異変。イヴの額に手を触れる。

 

『イヴ……熱出てんじゃん。体調は?』


 暑かった、てか、体温上がりすぎだろ。

 イヴは平然な顔をしていた。


『大丈夫だよ?』

『今すぐ寝なさい』


 急いで服を着替えさせて寝かせた。

 消化にいいお粥と水、砂糖、塩、レモンを混ぜてスポーツドリンク的なやつを作って飲ませる。


 いや、熱出したらまともになるとかどうなってるねん。

 そのツッコミは誰も聞く人はいなかった。


 ……これだけならよかった。風邪は油断大敵だが、しっかりと休めば平気のはずだ。

 だが、イヴは普通の人ができる。


 ちなみに早朝にイヴは手紙を送ってくれていたお兄さん宛に手紙を出していた。

 手紙を出したのは風邪を引いたイヴ、手紙を書いたのは普段のイヴ。

 風邪を引いたイヴは手紙の内容を見ずに送ったらしい。

 結果ーー。


『こんのクズが!イヴを貶しやがって……ぶち殺してやる』


 真夜中にイヴの家にお兄さんが突撃してきた。

 血走った目で片方に羊皮紙を掴み、片方に自分の身長よりも長い魔法の杖を俺に向けてきたのだった。



 

 

 

 話をして誤解を解くのに時間はかからなかった。

 このときまだイヴは微熱を出していてしっかりと説明してくれた。

 イヴのお兄さん……グレイス=ニコラさんは魔法工学師統括ギルドの組織で働いているらしい。

 

 手紙の内容を見て飛んできたとか。

 もちろん自分の仕事を終わらせてから。


 握られたくしゃくしゃの手紙を見せられる。

 手紙を見ると箇条書きでーー。


『レイくんと一緒に寝た。

 レイくんは初めてを教えてくれた。

 レイくんのせいでドキドキして眠れない。

 レイくんが私の服を着せてくれた。

 レイくんが私の体を洗ってくれた。

 レイくんが私の好きを作ってくれた。

 レイくんが私をいじめてくる。

 レイくんなしで生きていけない。

 レイくんが怒って出ていっちゃった。

 レイくんに会いたい……』


 なんともまぁ、誤解を招きそうな文言。

 いや、確かに箇条書きで書けと言ったけどまさかこんな……。

 誓ってイヴも俺も清いままだ。

 ……それにしても俺のことしか書かれてない。最近手紙は何故か水滴が垂れたような痕跡も残っている。

 イヴのお兄さんが握ってきている時についたのか……イヴの涙なのか。


 はっきりしないが……とりあえず。


『誤解です!誓って何もしてません!』


 必死に訴えた。着替えの方法から風呂に入れるやり方まで全て魔法でお披露目した。

 イヴの口添えもあり、どうにか誤解が解けた。

 

 






「おにい様が来てたんだ」

「そうそう」

「でも、何も覚えてない」

「婚約って聞いたとき何に思わなかった?つまり婚約までの流れを知らないまますんなり受け入れてたの?」

「別に?ワタシ、レイくんのこと好きだったから」


 イヴに全ての説明を終えると納得していた。てか、すんなり受け入れていたのか。

 いきなり婚約したって聞いたら戸惑うだろ普通。

 俺だって嫌われていると思っていたグレイス様にいきなり婚約しろなんて言われて理解するまでに時間かかったのに。 

 話は終わりちょうどマッサージも終わる。


「さ、マッサージも終わり。これで明日筋肉痛はないだろうけど」

「うん……おやすみレイくん」

「いや、まだ寝かせないよ?」


 なんでこのまま寝ようとしてんだよ。まだ再試の勉強してないだろうに。

 多分大丈夫だと思うが念のため要点だね復讐させる。イヴは一度読んだ本をすぐ覚えられる。瞬間記憶能力ってやつだ。


 だから、念のため一回本を読ませておかなきゃいけない。

 何故かイヴの顔は少し赤くなり俺の視線が合うと逸らした。


「……レイくん」

「……今ので照れる要素あった?」

「ついに私たちは初めてを」

「だから、説明したばかりだよね?清い婚約関係が必要だって。寝る前に少しだけ勉強してもらうの。イヴには絶対合格してもらわなきゃ困るんだから」

「……レイくんの意地悪。レイくん私のこと本当に愛してるの?」

「……なんでそんな話になる」


 昔話をしたからか、イヴの反応は乙女モード?みたいな感じになっている。

 イヴはベッドに女の子座りで俺を見上げる。

 どう答えたものか。


「言葉にしなきゃわからないよ?」

「う……」


 ブーメラン、俺が以前言った言葉をそのまま使ってきた。

 人に言ったものの、実際に言われると逃げ道塞ぐんだなこれ。

 覚悟を決めるか。

 俺はイヴの瞳を見つめ一言。


「……愛しているよ。だから、頼むから勉強してくれ」


 そう告げたのだった。


「……よ、よろちぃ」

「照れるならやらせなきゃいいのに。口調おかしくなってるよ?」

「……うい」


 イヴはぎこちなく、照れていた。







最後まで読んでくださりありがとうございました。


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントはモチベーションになります。


よろしくお願いいたします。



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