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いもうと

お待たせしました。

「さ、帰った帰った。男子禁制なんだから」

「いや、要件頼んだのあなたでしょうが」

「あん?なんか言ったかい?」

「いえなんでも。……今度は正式にギルド通してくださいね」

「わかったよ現金なやつだねぇ、全く」


 イヴと別れた後、寮長の婆さんのお願いを済ませた。

 やはり雑用で掃除から今晩の炊事まで頼まれた。全く、すべてやらせる気だったんじゃないだろうか?そう疑えるほどすべて用意が揃っていた。


「ちょいとお待ち」

「まだ何か?」


 寮長の部屋を出ようとしたら声がかかる。

 

「すべてやってもらったんだ。流石にタダで返すのは申し訳ないからねぇ。これやるよ」

「え?別にいいのに……ってうぉ!急に投げないでくださいよ」


 婆さんが何かを投げてきたのはわかり、条件反射で受け取る。

 

「……これって限定版グーソくんのストラップ……」


 それはイヴが以前子供にあげていたものであった。でもなんで婆さんがこんなものを。

 まさか。


「まさか、婆さんお子様ランチ頼んだとか……」

「んなわけないだろ!孫が頼んだんだよったく……いらないと押し付けられたんだ。いらなきゃそれも捨てといとくれ」

「……勿体無いから貰っとくよ」

「なんだい、そんな気色悪いの集めてるのかい?おまえさんの趣味はわからん」

「俺じゃないし、イヴのだし」

 

 ついつい素の口調になってしまうも、イヴの欲しかったものが手に入った。

 これからお願いを聞いてみて良かったと思った。

 

「まぁ、いいさね。ようはそれだけだ。さっさと帰りな」

「わかったよ」

「ああ、いつでもあのガキを連れてきていいからね。おまえさんならいつでも歓迎さね」

「魂胆見え見えですよ。どうせ雑用やらせようと思ってるんでしょ?」

「わかってるなら早い。今後も頼んだよ」

「はぁ、はいはい。機会がありましたらね」


 相変わらず読めない表情だったが、俺は右手を軽く左右に振ると寮長の部屋を出た。








 女子寮を出ると急ぎネーメル先生の元へ向かう。なるべく早く手紙の詳細を掴みたい。

 いらぬ誤解は特に限る。

 

「ーーと、いうわけでして……これがその件の手紙なのですが心当たりありませんか?」

「申し訳ないが、わからない」

「そうすか」


 ネーメル先生は魔法薬学準備室にいた。

 尋ねた後、お茶を出してくれ一服した後わけを説明する。

 だが、ネーメル先生でもわからないとはなら一体誰が。

 単なる悪戯の可能性があるが、元俺の家名があるから。

 お家騒動なんてことになったらごめんだ。俺は今の暮らしが好きだ。それを壊されるのはいやだ。

 はぁ。わからない。 


「心当たりではないが……混乱させるだけかもしれないが……」

「言ってください。今は情報が欲しいので」

 

 何か思い出したらしいネーメル先生。


「最近熱心に我が校に通い詰めている少女がいたな」

「え?」

「学院長に許可をとったとかで許可証を携えて学院内を見学している者がいたな」

「その女の人と話したのですか?」

「単なる注意をしようと声をかけただけだ。確認を取れたら一言交わして別れた」


 ……この時期に見学に来る生徒はいるか?

 確かに学院は休みだが、見学ならもっと早めの時期。学期末の試験以前にくるものだが。


 生徒もいないこの時期に来るのは……少し怪しいな。


「先生、その人の容姿を教えてください」

「……どうだったか……ふむ」


 ネーメル先生は手に顎を乗せ考え始めるが、すぐに容姿が浮かばない限りあまり印象が残らなかったのもしれない。

 少し間が開く。


「……ああ、そうだ思い出した。そうだな……ミスターレイモンドのような癖のある茶髪であった気がする。かなり気品のある人だったな」

「……うん?」


 俺と同じ髪質に色?それに気品あるってことは貴族ってことだよな。

 今年入学で俺と関係があって……髪質が同じで貴族……もしかして、シュベスタか?


「ちなみにその女生徒を見かけたのっていつですか?」

「いつだったか……一昨日だったな」

「最近ですね」

「何か心あたりでもできたのかな?」

「え、ええ。少し気になることが」


 シュベスタは俺の妹である。

 唯一の家族と思えた存在。そうすればすべて合点がいく。


 それから推測ができると俺はすぐにイヴの家を目指す。

 いないかもしれないが、こんな手の込んだことをする手前今日もいるかもしれない……いや、仮にシュベスタが犯人ならこういう手口は一度だけでなく2度はする。


 急ぎ向かうとちょうどポストに投函しようとする久々に見た少女の姿が目にはいる。


「……何をしてるんだ、シュビー」

「え?」


 もしかしたらと思い学院内を捜索する。ただ、一番可能性があったのは俺も住んでいるイヴの家であった。

 ちょうどタイミングがあったか、その少女は手紙を投函したばかりであった。


「やっぱりおまえだったのか……」

「……あ」


 癖っ毛のある栗色の長髪に、垂れ目で左目付近の涙ぼくろが特徴的な少女……シュベスタ=ヒューズは俺を見るなり感極まる


「お兄様!」


 シュベスタは三年越しの再会を喜びに感じたのか、涙目でダイビング。

 しかも、身体強化を使いながらだから衝撃を殺しきれず尻餅をつく。

 

「会いたかったですお兄様!」


 泣き泣き俺を兄と慕うのは唯一家族と言える存在の妹であった。




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