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才女はお姉さん?

「はぁ…食った食った。よは満足じゃ」

「何様、どこかの王族?」

「うへへ、冗談」


 それぞれ頼んだ食事を食べ終えた。

 本当に美味しかった。やはり外食もいいな。


 基本、イヴは少食である。お子様ランチでお腹いっぱいになる。

 お子様ランチで腹八分ってところだ。


 だから、パフェは一緒に食べた。

 

 俺がデザートを頼まない理由はイヴと食べるからである。

 お会計をすませ店を出ようとする。

 

 ーーその時だった。


「あ!また同じやつだったよママ!」


 背後から幼い女の子と声が店内に響く。

 後ろを振り向くとそこには入店したばかりの親子がいた。

 身なりは高価そうな生地で仕立てた服を着ている。どこかの商家の家族だろうか?

 女の子は4、5歳くらいでおかっぱ頭の活発そうな子だった。

 

 察するにグーソくんがダブったんだな。


「もう一個開ける!」

「ダメよ、一つだけだから」

「やだ!……」

「でも、ほらこのグーソくんもかわいいでしょ?」

「持ってるやつだもん!」

「な、ならまた来た時にね」

「いやだ!……うぇぇぇん!」


 子供が癇癪を起こしていた。


 母親はどうしようかな戸惑っている。周りのお客さんからの視線も刺さり、雰囲気が悪い。

 特に目つきの鋭いおじさんなんて子供を見つめているし……あ、目が合った。慌てて目を逸らす。


 親子の近くにいるウェイトレスさんたちもどうしようか迷っている。


 もう一つ開けさせてあげたい気持ちもあるが、その子だけ特別扱いは許されない。

 ……少しだけ協力するか。

 まず何故癇癪を起こしているのかわからないから。


「どうしたの?」

「うぇぇぇん!」


 俺は近づき視線を合わせて座る。

 だが、声をかけても泣き続ける女の子。


 母親から戸惑いの視線を感じるが、任せてくれと小さく頷く。通じたらしく黙って俺を見守っている。

 よし、まずはなんで泣いているかを聞かなきゃいけない。


「お嬢ちゃん、これ、なーんだ?」


 だから、その子が興味を持つであろうものを土魔法で生成する。

 掌に乗るくらいの大きさ。氷魔法で適当な洋服を着かせる。


「…へ?……あ!グーソくんだ!」

『どうしたのお嬢ちゃん?』


 小さいグーソくん。

 なるべく可愛らしい声を演出し、腹話術で話をふる。


「グーソくんだ!ねぇ!ママ見て見て!グーソくん!」

「あ…あら」


 女の子ははしゃぎ、母親はオドオドしている。

 俺はそんな対照的な反応をする二人を横目で見ながらもつづける。

 魔力を込めてグーソくんを操作する。

 サイキックを使ってグーソくんを女の子の目の前のテーブルにジャンプさせる。

 二足歩行で立たせて女の子に向き直る。

 風魔法を使って音声をグーソくんが話していると思えるように工夫する。


『どうしたの?悲しいの?君が悲しいと僕も悲しくなっちゃう』

「ううん!もう泣いてないよ!」

『そうなんだ。えらいえらい』


 よかった。これでどうにかなりそうだ。

 女の子は動くグーソくんに大はしゃぎ。

 

「これ、俺の魔法ですよ」

「え?……これが魔法……なんですか?」

「ええ。魔法にはこんな使い方もあるんですよ?」

「……あなた、すごいのね。初めて見たわ」


 母親に伝えると驚いていた。この魔法の使い方に驚いていたのだろう

 まぁ、確かにこんな使い方ができるのはどこの世界探しても俺だけだ。

 この世界の魔法はいかに威力や華やかさを出すかが求められている。

 俺の魔法は言うなれば地味、この世界の魔法基準においてそれを評価する人は誰一人いない。 

 俺には大岩を砕く魔法も、人を魅了する魔法も使えないが初級魔法の扱いは俺の右に出る人はいない。


『君、お名前は?』

「サユナだよ!」

『そうか、サユナちゃん。いい名前だね』

「うん!」


 よし、この調子だ。

 

『今日はママとお出かけなんだね』

「うん!ウェイトのおようふくきてるグーソくんもらいにきたの!……でも、外れちゃって」

『そうなんだね』


 なるほど、そういうことか。

 だから、母親の次に来ようかと言われた時いやだと言ったのはこれが原因か。


 でも、これは解決できないな。

 ……どうしたものか。また思い出したのか涙目になっちゃった。

 少し会話をすり替えようとしたけど、話題のチョイスミスったな。

 悩んで次何が話そうと考えている時だった。背後から小さな手が伸びてくる。


「泣き止んでいい子だね。いい子の君にはこれをあげよう」

「……イヴ?」

 

 いつのまにか俺の横に移動していたイヴが何かを差し出していた。

 ……まさか。


「あ!グーソくんだ!いいの!」

「……うん」

「ありがと!お姉ちゃん!」


 ……イヴ、それって。

 女の子が持っていたのはウェイト姿のグーソくん。

 

「……イヴ」


 相当葛藤したのだろう。イヴもグーソくんストラップを全て揃えるほど大ファン。


 心配で声をかけるも視線が合うとイヴは首を横に振る。


「……私の宝物、大切にしてね」

「うん!ありがとうおねえちゃん!」

「あ、あのいただくわけには」


 イヴの勇姿を無碍にするわけにはいかない。

 母親はウェイト姿のグーソくんを返そうとするが、視線で制す。

 

「お母さん困らせちゃダメ。サユナちゃんもお姉ちゃんだから」

「うん!わかった!」


 イヴが……イヴがお姉さんっぽくなってる。

 いつのまにか成長してたんだな。


 俺は喜んでいた。

 だが、イヴは今にも泣きそうな顔で耐えているのはわかった。

 ……そんなに悲しかったのか。


『よかったねサユナちゃん。あ、僕もう帰らなきゃ行けないんだ』

「……え、まだお話ししたいのに」

『……ごめんね』


 イヴのためにも早くこの場を去るべきだろうな。


「……また、会える?」

『うん!会えるよきっと』

「わかった!」

『サユナちゃんはえらいね』

「うん!お姉ちゃんだもん!」


 ふふーんと胸を張るサユナちゃん。

 そうか、子供ってこうやって成長していくんだなぁ。

 

『バイバイサユナちゃん』

「うん!バイバイ!お姉ちゃんもバイバイ」

「……ばいばい」


 ……イヴのバイバイはサユナちゃんのも含まれるだろうが、多分ウェイト姿のグーソくんに向けてだろう。

 俺はイヴの頭をポンポンと優しく撫でるとサユナちゃんの母親に黙礼、イヴを連れて店を後にした。


 俺の作ったグーソくんはサイキックを使い俺の肩に乗せて手を大きく振る。

 それを見せが出て、サユナちゃんが見えなくなるまで繰り返した。







「よかったのか?」


 帰り道、俺はイヴの隣を歩く。

 

「うん、悲しいけどサユナちゃんが泣くのを見たくなかったから」

「……そうかい」

「うん……早く行こ!」

「走ると転ぶぞ?」


 そう告げたイヴは小走りで先行する。

 イヴ自身まだ割り切れていないだろう。それでも、小走りするイヴの背中は以前よりも大きく見えた。


 イヴもまた、一つ成長したのだろう。


「へぶぅ!」

「ちょ、イヴ!大丈夫かよ!」


 ……と、イヴに感心していたところだったのだが、忠告通り石に躓き転んでしまう。

 慌てて駆け寄り、起き上がらせるとイヴは涙目であった。


「……言わんこっちゃない。ほら、まず涙拭いて?」

「泣いてないもん。……痛くないもん」


 転んで右膝を擦ってしまったらしい。

 目立った外傷はないものの、擦り跡があった。

 水魔法でついた土を落として氷魔法で冷やす。


「絆創膏と持ってきておいてよかったよ。工房行く前に……あそこのベンチ行こうか」

「……う…い」


 幸い近くに小さなベンチが目に入りイヴを抱えて座らせる。

 しばらく冷やしてから、念のため絆創膏を貼った。

 イヴも成長しているけど、本質は変わらないようだった。


 今日はおんぶして家に帰った。


最後まで読んでくださりありがとうございました。


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントはモチベーションになります。


よろしくお願いいたします。


次の話は明日の7時頃投稿します。

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