メイド喫茶way home
リアルとは違う。
佐伯悠は今年で40になるおじさんだ。
悠の心の安らぎは、メイド喫茶の店員、みるみるみるくちゃんの接待を楽しむことだ。
彼女はメイド服に身を包み、猫耳そして大きな眼鏡かけ、声優ばりの可愛い声で応対してくれる。
今日も安らぎのひとときを満喫する。
悠はいつものテーブルに座ると、右手をあげる。
「ご主人様~」
猫耳をフリフリし、みるみるみるくちゃんはやって来る。
「いつもの頼むよ」
「はい、スペシャルAコースですね。今日もたっぷり愛情注ぐにゃん」
彼女の手招きポーズにつられ、彼も「にゃん」とやってしまう。
・・・10分後。
「はーい。ご主人様っ!スペシャルAコースの到着なのだっ!」
みるくは、トレイからアイスコーヒーとパンケーキをテーブルの上に置く。
「ねぇ、ふーふーあーんする?ご主人様?」
上目がちに覗き込むみるく。
「喜んで」
悠はサムアップする。
「喜んでいただきましたにゃん!えーと、その前に、デリシャスおいしくなーれのおまじない♡にゃんにゃにゃん、おいしくなーれ、おいしくなーれ。らぶらぶ注入っ♡」
「いと尊し」
「ミッションコンプリート」
ミルクは満面の笑顔でウィンクをする。
「はい。ふーふー、あーん」
「あーん」
・・・・・・。
・・・・・・。
彼の至福の時は過ぎて行った。
エナジー注入完了の彼は、心なしか身体も軽く、アニメショップでお目当ての商品を購入し家路へ。
ほくほく顔で歩く、彼の背後から声がした。
「あのう。悠くん」
「?どちら様?」
全く記憶にない少女が立っていた。
「私・・・みるく」
「へっ、みるみるみるくちゃん・・・なの」
「うん」
メイド喫茶の時とは打って変わり、地味な姿の彼女に驚いた。
「どうしたの?」
「あの悠君・・・私のこと・・・好きでしょ・・・付き合ってくれる?」
彼女が思っていたのと彼は違う反応をしめす。
難しい顔をして、
「ん、それとこれとは別だよ」
「そんな・・・ひどい・・・勇気をだしたのに」
「ボクは2次元専門なんだ」
「・・・だけど、そんなところが好きっ!」
めげずに彼女は、勇気をだして悠の懐へと跳んだ。
「やめてよ!」
悠はおよそ、20キロの鉄製萌っぴフィギュアの入った袋を振り回した。
ぐしゃ!
潰れる音がした。
運悪く、みるくのこめかみに直撃したフィギュアは側頭部を破砕し、彼女は顔面から崩れ落ちた。
そんなお話。