帰り道
毎年、この時期は。
名前は忘れた。
あたしは幼い子どもだったと思う。
お母さんの言う、お国の仕事が終わるまで、どっか(多分親戚の家)に預けられていた。
ガラっと扉を開ける音、そしてトタトタの足音。
お母さんだ。
迎えに来ると、いつも飛びついて喜んだ。
ずーっと、お母さんと一緒にいれたらいいのになあ。
あたたかいお母さんの手。
ぎゅっと握りしめ、帰り道を歩く。
あたしは、おうたを歌いながら、お母さんは上手だねと褒めてくれた。
サイレンが鳴る。
空襲警報だ。
これがなると危ないんだって。
お母さんの顔が急に怖い顔になった。
あたしの手を強く握りしめると、
「あっちゃん走るよ」
って、思いだした、あたしの名前あつこって言うんだよ。
走りながら見上げると、空がビカビカに光だす。
大きな音が近づく。
ぶぃーんと大きな羽根音がした。
それからものすごい音がしたんだ。
・・・・・・。
閃 光。
・・・・・・。
あたしとお母さん死んじゃった。
あたし生きたかった。
おいしいものお腹いっぱい食べたかった。
お母さんにもっとぎゅっとしてもらいたかった。
もっともっと絵本読んでもらいたかった。
学校も行きたかった。
我慢していた玩具買って欲しかった。
お嫁さんになりたかった。
なんで・・・なんで・・・どうして。
お空にいるの。
ねぇ、ねぇ、ねぇ。
お母さん、おかあさん。
「あっちゃん、いこ」
「・・・うん」
あたしは空から思いを伝えた。
こういう作品を書きたいと思っています。