背後に迫る影
暗い夜道は気をつけて。
はあはあはあはあはあはあ。
ひぃははははははははははははは!
仕事帰りの若い女性は懸命に夜道を走っていた。
背後から奇声混じりの笑い声が迫る。
ずっと以前から気配を感じていた。
だけど、彼女は内気な童貞男の悪さと気にしていなかった。
(よりによって、こんな大胆に来るとは・・・)
今は後悔していた。
はぁはあはぁはあはぁはあ。
あはあはあはあはあはあはっ!
(ぜったいヤベー奴じゃん)
どんどん暗くて細い道へと追い詰められていく。
「ぜったい、じぇーったい、逃がさないぞ。ひゃひゃひゃひゃ」
男は興奮しているのか、声はうわずり独り言を喋るようになっていた。
(マジキモイ・・・あ)
暗い裏路地の先は、行き止まりだった。
「・・・・・・」
「ふふふふ、永遠にボクのモノになりなっさいっ!」
ギラリ。
白刃が煌めく。
次の瞬間、ナイフが彼女の左胸に刺し込まれた。
「ぐふっ、ぐふっ、これで一緒、マミたんと一緒、いいっしょに遊ぼう」
彼女は鮮血を散らしその場に倒れ込んだ。
「ふっふっふー、やった。やった。やったぞー」
男は狂気乱舞小躍りをしている。
(・・・・・・)
彼女はじっとその姿を目に焼きつけた。
「やった。やってやったぞー。さっ、マミたん、さっ一緒にお家に帰るでござる」
男は背後の屍に声をかけた。
ゆらり。
男は気配を感じる。
「へ」
ゆらり。
ゆらり。
恐る恐る振り返るその先には、やったはずの彼女がいた。
「・・・そんなバナナ」
「ふふふふふはははははは。我は不死の女王エルフィーネ。我に死を賜おうなぞ片腹痛し」
「あわあわわわわ」
「よっては、貴様にもっとも相応しい死を授ける」
不死の女王は断を下す。
「滅。脳みそガブリ」
「ギャフン、脳汁ブシャー、あじゃぱ~!」
断末魔の叫びをあげ、頭から鮮血がほとばしるシルエット。
「ふふふ、ははははははははははは」
女王は夜陰に紛れ去って行った。
男の無残な姿が発見されたのは翌日の朝だった。
逆転ホラー。