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なろうにだろう

 これ投稿には躊躇いました・・・けど、良し。


 俺ことペンネーム「ひとやまあてたい」は、今日もせっせと小説投稿サイト「小説家になるだろう」通称だろうに投稿している。

 だろう3年目の俺だけど、そこそこ人気作家の仲間入りをしているという自負がある。

 俺の代表作「夢だと思ったら、モノホンでした。美しい女性には棘がある。すなわち俺の妻は魔女だって・・・ってと思っていたら古代帝国の姫でした」が、常にランキングの上位に位置している。

 だろう仲間からは、もうすぐ書籍化も夢じゃないんじゃないと囁かれている。

 実際、この作品の感想欄には「書籍化求む」や「書籍化キボンヌ」という声も多いのだ。

 ここまでの道のりだが、俺の努力は計り知れなかった。

 自画自賛?何が悪い?


 いいか、なろうってのは、己の力で這い上がるのには、かなりハードルが高いんだ。 

 仲間を増やして、ポイントを獲得し、いつか日の目を夢みる。

 たゆまぬ活動に努力が必要なんだ。

 そんな事しなくったって・・・作品の力があればって・・・いやいや、そうかもしんない、そうかもしれないよ、だけど、ここにどんだけのチャレンジャーがいるんだって話、仮に凄い作品が出来たとしても、きっかけが無きゃ埋もれてしまうでしょ。

 読んでもらう機会の裾野を少しでも広げなくっちゃ、どーゆーあんだーすたんど?


 俺には夢がある。

 でっかい夢、小説家になって、コミカライズ、アニメ化されて、この世に名を残したい。

 誰だってそうだろう?

 なんのために書いている?

 ただの趣味?

 はん!

 自己満なんて、ただの言い訳だろ。

 本当はそうじゃないだろ。

 最初はそうだったとしても・・・今は違うだろ。

 俺たちはこの為に膨大な時間を削っている。

 だったら、目指そうよ。

 高みへ、決して届かないことはないんだ。

 だから、やってやる。

 誰に何と言われようと、いかなる手段を用いても勝ち取るべきなんだ。

 

 そして、俺は禁断の・・・手を出してしまった。

 ポインツをお金で買えるらしいと。

 しかも・・・格安で・・・だ。

 俺はおそらく、もう手の届くところまで来ている。

 あと少し・・・きっとあと少しなんだ。

 クリックを押し依頼してみる。

 罪悪感?

 ないとはいえない、だが、俺には使命がある。

 しばらくすると、俺の作品はすげーポイントを叩きだし、まずは日間1位を奪取。

 もはや、俺を止められる者などいない。


 ついに俺の時代がやってきた!


 しかし、だろうに件の注意喚起が・・・。

 やはり、いけない行為だったのか・・・?

 いや・・・そんな。

 こうなるように仕向けたのは・・・そっちだろ。

 俺は、渾身の作品を書いた。

 だから、この結果があるんだ。

 自慢の小説情報が映るモニターで佇む俺。

 マウスを動かし削除ボタンに手が動く。

 ぴたり。

 手を止めた。

 俺は・・・俺は・・・。

 消せる訳ないだろう。


 これは悪い事なのか?

 いけない事なのか。

 教えてくれ・・・。

 なぁ。

 魔がさした・・・そうじゃない。

 俺は最善を尽くしたんだ。

 仰ぐ天井を見て歯軋りをする。


 だけど・・・だけど。

 間違い・・・なんだ。

 そうか、そうだよな。


・・・・・・。

・・・・・・。

・・・・・・。

 くそっ、くそっ、くそっ、くそっ、くそっ、くそっ、くそっ!




 立ち上がる。

 何度でも。

 それでも。

 俺には夢がある。

 掴むんだ。

 きっと必ず!

 立ち上がろう。

 帰り道はここにある。

 


 それでも、立ち上がれ!

 

 21話と22話は、しばらく筆が止まっていた拙作でした。

 これを契機に簡潔にはなりましたが、書けてよかったです。

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