幽霊おっちゃん
懐かしく感じつつ。
小学校の頃、思い出に幽霊おっちゃんがある。
かつてお城があった廃城の石段にところに座り、子どもたちに幽霊話を聞かせるおっちゃんである。
なので、まんま幽霊おっちゃんという名が自然とついた。
子どもたちは帰り道に、おっちゃんの話が聞きたくて、お城の階段をのぼる。
最上段の近くの石段におっちゃんは座り、とっておきの幽霊話を聞かせてくれるのだ。
今日も幽霊話を聞かせ、階段上から手を振るおっちゃん。
家へ帰る子どもたちは石段を降りながら手を振り返す。
夏のあつーい時期だけ、幽霊おっちゃんは階段にいて、子どもたちが来るのを待っている。
黄昏時、夕日に染まる頃合いになると、寂し気な顔を見せ、おっちゃんは話を終える。
「さあ、今日はここまで、また明日」
と、子どもたちを家路へと促す。
みんなの姿が消えるまで、手を振り続けるおっちゃん。
夜の帳がおり、幽霊おっちゃんは、ゆっくりと石段から立ち上がる。
「さてと」
階段をのぼりきると高台になっていて、真ん中には、かろうじて城の礎石が残っている。
おっちゃんの身体は青白く薄くなり、城跡へと消えて行った。
「また、明日」
書きました。




