ドアフロアマットなままで
ドアフロアマットって・・・。
かつて大富豪の娘だった安藤聖羅は、父親の事業失敗そして両親の突然の死により、親戚の家へと引き取られることになった。
しかし、聖羅は家族としてではなく、使用人のように扱われたのだった。
それまでの裕福な暮らしが一転、ドアフロマットな虐げられた暮らしを送る彼女であった。
「聖羅っ!」
同い年の絵里花が、顎を動かし聖羅を呼ぶ。
「はいっ!絵里花」
聖羅は彼女の元へ駆けつける。
「絵里花だあ。なに呼び捨てにしているのよ。使用人の分際でっ!」
絵里花はスープの入った皿を投げつける。
胸に皿があたり、熱いスープが全身にかかり聖羅は激痛でうずくまった。
「いい加減。立場を弁えなさいな。昔はアナタの家の方が、格式は高かったかもしれないけど、今や没落どん底の底辺。そして、身よりもないアナタを救ったのがワタクシの家っ!ならばアナタは、この家に忠誠と勤労を誓うべきではなくて」
聖羅は、きゅっと唇をかみしめる。
「さぁ。言いなさい。絵里花お嬢様って、言ってごらんなさいよ」
「・・・・・・」
「あなたは使用人。もう一度言うわよ。あなたは使用人なのよ」
聖羅の目からポロポロ涙がこぼれだす。
「はい、絵里花お嬢様」
「ほーっほっほっ!それでいいのよ。使用人聖羅。今日のディナーは口に合わなかったわ。聖羅・・・聖羅し・よ・う・に・ん片付けておいて」
「・・・はい、お嬢様」
聖羅は唇をかみしめる。
「それから、アタクシの部屋のベッドメイキングと、寝る前にホットミルク持ってきてちょうだいね」
「はい、お嬢様」
聖羅は機械的に言った。
そうするしかなかった。
「それでいい。それでいいのよ。薄汚いお姫様・・・使用人聖羅」
絵里花は高笑いと共に、ナプキンを床に投げ捨て部屋を出て行った。
そうして、エンヤコラ半年。
父が残した鉱山の地下にまだ大量の資源が残っていることが発見された。
さらには、死んでいたと思われていた両親も生きていたことが分った。
聖羅の前途には明るい未来が開けたのだった。
両親が、派手な投資で行き詰まりをみせていた親戚の家に娘を迎えに行く。
ギィ。
扉の門がひらく。
聖羅の姿がみえる。
両親は手をとりあって喜び合う。
ゆっくりと歩いて来る娘は、目には生気が無くブツブツと独り言を喋っていた。
その声が両親にも聞こえる。
「おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、おそい、よっ!きゃはははははははははははははははっ!」
聖羅はその場にうっ伏し倒れた。
小公女のイメージでいいんだよね。




