宇宙船ドリームトゥルー号
ん~SFやってみたけど・・・。
20XX年、月面旅行は一大ブームをむかえる。
かつては、一般民にとっては敷居の高かった月旅行は、思い切って手を伸ばせば届く時代となった。
そんな最中、クラウドファンディングで立ちあげられた有限会社ドリームトゥルーの一号機ドリームトゥルーは、一時間前に宇宙フライトを終え、次の月面旅行へと備えていた。
あまりにも過酷なスケジュールに圧倒的な人員不足、有限会社ドリームトゥルーは度重なる他社との価格競争で、まさに火の車状態であった。
だか、それは言い訳でしかならない、残業および徹夜明けの技師が、たった一度の燃料ゲージ確認を怠り、人員不足で二重チェックもしなかったとしても・・・。
あり得ない事故なのである。
絶対にあってはいけない・・・しかし絶対などということはない。
月面到着。
狭く過酷で劣悪な環境の宇宙船より、しばし観光客たちは、月面遊泳および歩行を楽しんだ。
その間、宇宙船のクルーは深刻な問題に悩まされた。
地球到達までの燃料が足らないのである。
船長は至急、会社へ燃料の輸送を依頼する。
しかし会社には余裕がない、とった作戦というのは、無人の燃料ロケットを射出、想定される燃料ギリギリの大気圏内高度400㎞の位置で、ドッキングを試みるというものだった。
客を危険にさらすことは出来ないクルーたちは、反対をしたが会社の方針は揺るがなかった。
この時点で、クルーたちが政府や国、もしくは世界に訴えかければ、こんなことにならなかったかもしれない。
翌日、舟は月を離れる。
順調に帰路へ向かう宇宙船。
しかし、その時はやってきた。
あと、少しのところ。
船の窓から燃料船がすり抜けていくのが見えた。
想定したよりも早かった。
宇宙船は自動操縦で高度が下がっていく。
クルーたちは、自動操縦を解除しようとするが、会社側が想定外の動きを恐れてロックしていた。
計算によれば、高度120㎞のところで燃料切れを起こし、船は大気圏突入に耐えきれず、燃えてしまう。
揺るぎのない事実と叩きつけられた結末。
ただただ時間だけが過ぎて行く。
船長は最後の誠意を見せ、重い口を開いた。
「・・・みなさん・・・この舟は」
瞬間、真っ赤に燃え上がったドリームカムトゥルー号に閃光が走った。
知識が・・・。




