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生贄

 帰り道は・・・。

 

 暗い明かりの無い部屋に通される。

 美しい衣装に着飾った少年が、たどたどしい動きで儀礼をおこなう。

 濃厚な甘い匂いの立ち込める空間で舞う。

 式の終りにグラスに注がれたものを飲めと言われていた。

 ごくり。

 かあっと全身が燃えるように熱くなった。

 ぐらり。

 目の前が消えた。

 彼は気を失った。



 ざくっざくっ。

 あたたかいぬくもりを感じる。

 父の背中におぶられ、山をのぼる。

 両親はずっと泣いていた。

 山の奥の奥まで。

 あたたかいあたたかい。

 少年はぬくもりを感じる。

 氷のカンバスを抜け、3人はついに果てへとやってきた。

 朽ち果てた小屋に少年は降ろされる。

 両親は抱きしめ息子にキスをする。

 夕暮れ前に、別れを告げた。



 ・・・・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・・・・。

 少年はぼんやりと目を開く。

 分かっている。

 ぼくは分っている。

 分かっているよ。

 ありがとう・・・でも。

 彼は意識を深遠へと預ける。

 深い深い永遠の眠りへと・・・。



 ない。

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