表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪のアスティレア ~傲慢な王族や貴族、意地悪な令嬢、横暴な権力者、狡く卑怯な犯罪者は、みんなまとめて断罪します!~  作者: enth
王国崩壊編 ~せっかく貴方たちのために働いたのに国外追放とは、そんなに早く滅びたい?~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/165

☆番外編☆ 6:グラナト王子の未来(前編)

番外編です。

本編未読でも大丈夫かと思われますが、

パルブス国が崩壊し共和国となるまでの経緯は

『断罪のアスティレア ~王国崩壊編~』

を読んでいただけると幸いです。


本編を読む時間がもったいない方へ。

パルブス国の王族と貴族は民衆を虐げ、犯罪に加担し、

大変な悪事を行い、国を追われることになりました。

その王族最後の一人、グラナト元・王子のその後になります。

どうぞ、よろしくお願いいたします。


※このたび、各編・各話の関連性が高い事や管理の都合につきまして

 「断罪のアスティレア」シリーズを1つにまとめることになりました。

 「王国崩壊編」「学園廃校編」「職場廃業編」「国土壊滅編」は

 それぞれ各章となります。


 ブックマークやいいね、感想をお寄せくださった方々、

 本当にありがとうございます。

 いっそう流れや登場人物が分かりやすく、

 また読みやすいものになるようにしていく所存です。


 どうぞよろしくお願いいたします。

 皆様の周りの理不尽な物事が、

 スカッと断罪されますようにお祈り申し上げます。


 ☆番外編☆ 6:グラナト王子の未来(前編)


 グラナト元・第三王子は収容されていた施設を出るなり

 怒り狂った国民の群れに取り囲まれてしまった。

「おい! みんな! グラナトが出てきたぞ!」

「よくもお守りを俺たちから取り上げやがったな!」

「呪いのついたものを街中にバラまくなんて最低だわ!」


 オロオロと戸惑うグラナト以上に、皇国の兵は動揺していた。

 ……こんなはずでは、なかったからだ。


 そもそもグラナトは、両親や兄たちと異なり、

 ありとあらゆる意味で()()()()()()()()()

 軍にも所属していなかったため兵士と会うこともなく

 国務もしていなかったので国民と接することもなく

 同じ年くらいの貴族とつるんで遊ぶ毎日だったから。


 そのため罪を犯す機会は少なかったが、

 アスティレアの来訪により、一気にその罪状は増えた。

 またパルブス国崩壊につながる経緯の証言収拾や、

 今後についてかなりゴネたこともあり、

 両親や兄弟よりかは少々遅い出所となったのだが。


 出所が近づき、皇国と今後について協議したが、

 先に出て行った家族たちが

 引き取りを頼んだ遠戚や交流のあった国々から

 バッサリと断られるのを見ていたため

 彼は早々に国外に出るのを諦めていた。


 次に共和国で働く旨を申し出てみたが。

「この共和国で、メイナ技能士を束ねるメイナ局長になってやろう。

 この国とメイナを良く知るものが上に立つ必要があるからな」

 などというグラナトに対し、もちろん共和国の代表たちは

「あなたはこの国の事も何にもわかってないし、

 メイナの知識や能力においても役には立ちません」

 と失笑し、あっさりと拒否されてしまったのだ。


 慌てて一般市民となった、遊び仲間だった貴族に連絡を取るも

「我儘放題だったから、みんなお前を嫌っていたんだぞ」

「やっと受け入れられ始めたのに近づいてくるな」

 と冷たく断られてしまった。


 他の国にも、国内にも居場所がない。

 そう知って困り果てたグラナトは、

 身分を隠してこっそりと国を出るしかないと思ったのだ。

 ……それなのに。


 怒り狂った暴徒を皇国の兵が制止している間に、

 グラナトは必死に馬を走らせて逃亡した。

 誰だ? 誰が今日、俺が出所すると皆に伝えたのだ?

 それに、なぜあの人数が激怒したまま押し寄せてきたのだ?


 ひたすら馬を走らせていたが、山道に差し掛かったところで、

 馬がいきなりひと鳴きし、

 何かに驚いたように後ろ足で立ち上がったのだ。

 その拍子にグラナトも転がり落ちてしまう。


 痛みで立ち上がることができないグラナトを放置し、

 馬はそのまま、走って行ってしまった。

「嘘だろ……なんで、こんな……」

 痛みや惨めさに泣いていた、その時。


 後ろから来た黒い馬車が彼の横を通り過ぎた。

 その馬車には、隣国ディンドの国旗と、

 見知らぬ貴族のものと思われる紋章がついていた。


 グラナトは”他国の貴族にこんな惨めな姿を見られたくない”と言う気持ちと

 ”とにかく助けてくれ”という相反する気持ちが拮抗していた。


 すると馬車はやや前方で止まり、

 心配そうな顔で、若い貴族の男が降りてきた。

 金髪碧眼、爽やかな風貌の美しい青年だった。

 彼はうずくまるグラナトに駆け寄り、肩に手をかけて、

「どうかされましたか? 貴方の打ち身はひどいようですが」

 と案じてくれる。

「……馬が急に何かに驚き、俺を落として去ったのだ」

 うめくようにグラナトは言う。こうなったら助けてもらうしかない。


 青年はそうですか、とうなずき、

 そしてグラナトに自分の馬車に乗るように促す。

「僕は隣国ディンドから仕事で参りました、

 フェステス・カパールと申します」


 俺は……といいかけて、グラナトは口ごもる。

 引取り手を探していた時の、他国の冷酷な対応を思い出したのだ。

 元・王族などとバレたら、どんな目にあわされるかわからない。

 かといって、平民だと言えば助けてはくれないかもしれない。

 かつてパルブス国の王族や貴族は、平民がどのような目にあおうとも

 決して助けたりはしなかったから。


 そこで慌てて、用意していた偽名を語った。

「俺はグリフ・ライアンだ。この国の……元・貴族だ」


 ************


 グラナトは国境付近にある、カパール伯爵家の別荘に連れていかれた。

「どうぞ、傷が癒えるまでこちらでゆっくりお過ごしください」

 フェステスはとても優しく、親切だった。

 グラナトは戸惑った。

「俺がこの国の元……貴族でも、か?」


 爽やかな笑顔を見せながらフェステスはグラナトにうなずく。そして。

「今回のこと、僕はこの国の貴族の方々を大変お気の毒に思っています。

 皇国は、全ての貴族を十把一絡げに断罪してしまった。

 それぞれ罪の重さは異なるだろうし、良い貴族だっていただろうに」

 グラナトは深く頷きながらも、

 やはり王族だと言わなくて良かったと心の中で思っていた。

 そして彼が”皇国が十把一絡げに断罪した”という思いについても、

 それは全くの誤解であり、実際は慎重に、

 かつ検討を重ねての処罰であったとは言わないでおいた。


「……まったくだよ。とんだ()()()()()だ」

 そんなグラナトに、フェステスは深く同情してくれる。

「諸外国の貴族はみな、内心では今回の件を苦々しく、

 また恐ろしい事だと思っています。

 皇国がその武力を振りかざし、

 他国の王族・貴族の権利を踏みにじったのですから」

「そうなのか? じゃあなんで俺たちを受け入れてくれない?

 皇国に抗議してくれないんだよ!」


 グラナトの怒りを含んだ問いに、フェステスは悲し気に言う。

「罪を犯したものがいたのは確かだからです。

 その被害を受けた諸外国も多いのですよ。

 だから皆、表立って支援することができないでいます。

 ましてや、皇国を批判することなど恐ろしくて」

 そんなことをしようものなら、

 次につぶされるのは自分たちの国かもしれないのだ、と。


 パルブス国は盗賊から多大な利益を得ることで

 その活動を支援していたのだ。

 グラナトはそれ以上文句も言えず、怒りの矛先を皇国に向ける。

「皇国め……巨大な権力を盾に、好き勝手しやがって」

 他国の王族や貴族は皆、本音は皇国を恐れ毛嫌いし、

 今回の処遇を不満に思ってくれていると知り、

 彼の気持ちは加害者から被害者へと変わっていく。


「だから、陰ながらこうしてお助けできるのは

 他国の貴族として誇りに思います。

 どうぞゆっくりとお過ごしください」

 そう穏やかに言ってフェステスは、美しい笑顔を見せたのだ。


 ************


 落馬の打ち身が治っても、グラナトはフェステスの側にいた。

 同じ年くらいの彼らはすっかり打ち解け合い、

 友だちのように語らうようになっていた。


 フェステスはカパール侯爵家の一人息子だが、

 数年前に相次いで両親を失い、

 彼がその全てを引き継いだのだそうだ。

「気軽といえばそうだけど、正直一人は心細く……寂しいものだよ」

 その言葉を彼から聞きグラナトは、

 彼の自分に対する親切の理由が分かったような気持ちでいた。


 フェステスは育ちの良い、愛されて育った貴族の子息らしく

 常に穏やかで温かく、万事において前向きだった。


 失ったものや立場についてグラナトがグチグチと不満をこぼすたびに

 フェステスは明るい言葉で彼を励ましてくれるのだ。

「グリフ、過去のことはもう良いじゃないか。

 これからの君の未来について、一緒に考えていこう」


「未来……か。でも、俺はどうすれば良いのだ?

 パルブス国の元……貴族だと知れれば

 何をやっても反発を食らうだろうし」

 自分で考えることは放棄し、口をとがらせるグラナトに対し、

 なだめるように高級な茶菓子や酒を進めながら

 フェステスは穏やかに言葉を続ける。


「そうだね、確かにやりにくいかもしれない。

 では、しばらくの間は身分を隠して

 僕の仕事、まあいわゆる古物商なんだけど、

 それを手伝ってくれたら良いよ」


 面倒見が良く優しい彼の言葉に、グラナトは感謝ではなく、

 さらに調子にのった要求をのせてきた。

 パルブス国王家は、どこまでいっても傲慢なのだ。

「ちゃんと俺にふさわしい報酬は得られるのか? それは」


 その言葉に、気分を害することもなく

 フェステスは大きくうなずく。

「もちろんだよ。必要なものは何でも言ってくれ。

 服や身につけるもの、食べたいもの、それから……」

 かつての王族としての暮らしが戻って来たかのようだった。

 グラナトはやっと、明るい気持ちになれたのだ。


 ************


「で? いったいどんなものを扱っているのだ?

 壺や刀剣か?」

「んー、それも扱うけど、一番の売れ筋は違うかな」

 グラナトの問いに、フェステスは一見にしかず、と

 地下にある収納庫へと案内する。


 厳重に管理された入り口を抜け、たどり着くと。

 そこには見たこともない物体が山積みになっていた。

「……なんだよ? これ」

 グラナトは薄暗い空間をうろうろと歩き回って眺める。

 おおよそのものはつるんとした角の取れた四角い形をしており

 ボタンや取っ手が控えめについているのもある。

 なにかの装置? 機械と呼ばれるもののようだった。

 こんなの、古文書や歴史の本でしかみたことがない。


 グラナトはふと、それらに札が付けられているのに気が付く。

 手に取って読んでみると”レイゾウコ”と書いてあった。

 他にもいろいろある。

 ”テレビ、センタクキ、デンシレンジ……”


 後ろでフェステスが正解を教えてくれる。

「これは前時代に使用されていた数々の遺物だよ」

「なんだって?! そんなもの、まだ残ってたのか」

「たくさんあるよ。まあ、もう動かないけど。

 骨董品だからね。好事家(マニア)には高値で売れるんだよ」


 そしてフェステスは笑いを含んだ声で言葉を継ぎ足す。

「もちろんこれらは合法だから安心してくれ。

 古代装置とは違って、ね」

 グラナトは一瞬、ビクッとなる。

 禁忌とされる古代装置を、王族が中心となって使用したのが、

 パルブス国崩壊の一番の理由だと、フェステスも知っているはずだから。


 グラナトはドキドキしながら平静を装って言う。

「そ、そうか。では皇国を気にせず

 どんどんこれを売れば良いのだな?」

 フェステスはフッと笑い、手元にあった小さな機械を見せる。

「これは録画機だよ。

 今でも使われてるけど、皇国は主に裁判で使うよね」


 それを見てグラナトは眉をしかめた。

 これにはさんざん、嫌な思いをさせられたからだ。

 アスティレアが勝手に国から出て行ったことにしたかったのに、

 これのせいで自分が追い出したことが立証されてしまったから。


「……こんなもの無ければって思うかな?

 便利なんだけどなあ」

 グラナトの思いを見抜いたかのようにフェステスは軽い調子で言い

 それを横に置く。もしかして、知っているのか? 俺のことを。

「ここにあるもの全て、あると本当に便利なものばかりさ」

 大きく手を広げながら、フェステスは言う。


 黙ったままで立ち尽くすグラナトの前で、

 大きなセンタクキの上に座り、フェステスは話し出した。

「なぜ皇国は文明を、前時代の中世あたりに設定していると思う?」

「せってい?」

 グラナトには質問に対する回答どころか、内容すら理解が及ばなかった。


 そんなことは気にせず、フェステスは答えを続ける。

「それは権力者が民衆を、一方的に支配しやすいシステムだからだよ」

 グラナトはあんぐりと口を開けて聞いている。

 こいつ、何を言い出したのだ?

 フェステスは肩をすくめて言う。

「もちろん僕だって貴族だからね。その()()を受けている身だ。

 だからそれ自体にとやかく言う気はないよ」


 グラナトもうなずく。

 でも彼の鈍い頭の中で、どこか違和感や疑問が浮かんでいた。

「一方的に支配したいんだったら、

 なぜパルブス国を共和国にしたのだ?」


 フェステスは露骨に嫌な顔をし答えた。

「共和国だって? 形だけじゃないか。

 建築物も協議会も、全部皇国の支配下だろ?」

 え? そうなのか? 建物は建築支援だけで

 デザインや仕様についてはパルブス国の提案だし

 協議会は運営についての疑問や問題点に対する回答のみだった、

 ……はずなのだが。実際は、違うのか?


 それはもちろん事実なのだが、グルナトはもう口を挟まずにいた。

 物を知らない、頭が悪いと思われたくなかったのだ。


 フェステスは笑顔に戻り、センタクキから降りて歩いてくる。

「だから、大事なのはこれからだ」

 グルナトは必死に考える。これは、皇国の作り上げた世界、

 つまり民衆を一方的に支配する状況を利用して、

 ガンガン稼ごうぜ、ということなのか?


 グルナトはそう、結論を出してうなずく。

「……そうだな。ぜひ、やってやろうぜ」

 その曖昧な返事を聞き、フェステスはさらに笑った。


「で、具体的にはどうするつもりかな?

 君の未来、どのようにしたい?


 グリフ……いや、グラナト王子」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ