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外伝 変わり出す歴史

「まったく、クライドの奴、どこへ行ったんだ」


 それは、ジークが彼らと遭遇する少し前の話だ。

 教団の実験室で、無数の子どもの死体を見た後、クライドはいきなり外へと駆け出した。


 オルトはその後を追って、アジトの中を走り回っていた。


「ぎやぁあああああああああ!!!!!」


 男の絶叫が響いた。オルトは、急いで声の方へと向かう。


「あ、が……ひぶっ……」


 その目に飛び込んできたのは、もがき苦しむヨトゥン教徒と、その首を持ち上げて無残にへし折るクライドの姿であった。


「クライド、まさかこれ全部君がやったのか?」


 周囲には教徒達の死体が無数に積まれていた。

 それはクライド一人で行った虐殺であった。


「当然だろう?」


 首を折った教徒を雑に放り捨てると、クライドが懐から何かを取り出した。


「それは……瞳か……?」


 その手のひらにあったのは、血まみれになった蒼い瞳であった。

 それはあの拷問部屋に落ちていたもので、リヴィエラの瞳の色と同じものであった。


「リヴィエラは全て奪われた……だからこんなものじゃ足りない。釣り合いが取れない。そうは思わないか、ジーク?」


 か細い声で悲しみを露わにしながら、クライドが瞳に頬ずりした。

 その瞳がリヴィエラのものかは分からない。しかし、クライドは彼女の物だと信じ込んでいた。


 無残な拷問を受け、この世を去った妹の形見として、クライドは瞳に保存の魔法を掛けて大事に持ち歩いていた。

 

「もう、絶対にリヴィエラのことは放さないよ。死ぬまで僕が側にいるからね」


 先ほどの出来事によって、クライドの心は半ば崩壊していた。


「ああ、分かっているよ、リヴィエラ。君を苦しませたヨトゥン教徒達には必ず報いを受けさせるから」


 今のクライドには、瞳から自分に語りかけるリヴィエラの幻聴が聞こえていた。

 まるで目の前にリヴィエラがいるかのように、瞳に語りかけている。


「ハハ……こりゃ、予想以上の仕上がりだな。まさか、ここまで堕ちるなんてな」


 そんな様子を見てオルトは興奮に身をよじらせる。

 あれほどの偽善者が、復讐者に身を堕としたことがたまらなく愉快であった。


「ククッ……よもやこのような形で、新たな器を得ることが出来るとは……」


 その時、二人のものでない声が響いた。


「かはっ……」


 瞳に頬ずりして無防備なクライドの背後から、一人のヨトゥン教徒がその背を手刀で貫いた。

 致命傷には至らないものの、かなりの深手だ。


「悪……あがきを……」


 クライドは苛立ちを見せると、男を焼き払った。ヨトゥン教徒は抵抗する素振りもなく、不敵な笑みを浮かべるとそのまま絶命した。


「まさか、不意を突いてくるとはな。姑息な奴だ……クライド、無事か?」


 男は一際、豪華な衣服を身に纏っていた。

 どうやら、このアジトにおける指導者だったようだ。


「大丈夫だよ、ジーク。この程度の傷、治癒の加護を借りれば一瞬で――」


 その瞬間、心臓の鼓動のような音が辺り一帯に響いた。それは、クライドから響き渡っていた。


「ど、どうしたんだ?」


 突然、膝を折ったクライドに、ただ事でない気配を感じたオルトが駆け寄る。

 同時に、クライドの全身を禍々しい瘴気が覆い始めた。


「なんでも……ないよ。一瞬、立ちくらみを起こしただけだ。むしろ、気力が充実してきた。このまま他の残党達を一人残らず始末しよう」

「あ、ああ……」


 クライドは治癒の魔法で傷口を塞ぐと、そのまま奥へと進み始めた。

 オルトは、その雰囲気に不穏な物を感じながらも後を追う。


 この時、二人は気付いていなかった。

 先ほどの鼓動と禍々しい瘴気は、クライドに刻まれた傷口から漏れ出ていたことを。


 そう、先ほどのヨトゥン教徒は、最後の悪あがきとして《魔王の核》というとんでもない置き土産をクライドに遺したのであった。

 お読みいただいてありがとうございます!!


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