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「あなたって最低のクズね」と罵倒された最低ラスボスに転生してしまったので原作にない救済ルートを探してみる  作者: 水都 蓮(みなとれん)
第二章

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第11話 状況の整理

 結局、それ以上の情報は手に入らず、俺は明け方に宿へと戻った。


「ジーク様!! ジーク様ぁ……!!」


 戻ると同時にリヴィエラが飛び込んできた。

 心配で一睡も出来なかったらしく、げっそりした表情を受かべたリヴィエラを、俺は寝かしつける。


「一つだけ認めないといけないな。オルトは俺が思っている以上に(したた)かで、行動力もある」


 オルトは既にボーマンと接触し、この街で起こる事件の幕を切った。

 それはあまりにも素早い動きで、俺は後手に回ったと言える。


「だが、このままアイツの思い通りにはさせない」


 既にボーマンの加護は奪った。

 これでオルトはアイリスに手を出すことは出来ない。

 奴の最大の目的は潰してやった。


 しかし直に、オルトは己の計画の邪魔をしようとする何者かの存在に気付くだろう。

 そして、それはオルトが計画を止める理由にはならない。


「まずは、これまでの状況を整理しよう」


 俺がいるのはエルドリアの街で、ヒロインのミレイユの故郷だ。


「今、ここを治めるラフィリア伯爵家では後継者争いが起こっている」


 ミレイユとその婚約者であるクライドに爵位を継がせたいラフィリア伯爵と、それに反対する叔父のボーマンの対立だ。

 そのため、ボーマンはオルトと協力してこの街で何か暗躍しているらしい。


「本来であれば、クライドとミレイユが解決するんだが、今のクライドは人が変わっていてミレイユとの仲も進展していない。だいぶ状況が変わっているな」


 正直言って、状況は差し迫っている。

 オルトはボーマンに協力することで、その見返りに《魅了》の加護の力を借りるつもりだ。

 恐らく、自分に疑念を抱く婚約者のアイリスを無理矢理従わせるためだろう。


「既にオルトの計画は動き始めている。恐らく、原作で起きる事件がこれから立て続けに起こるだろう」


 結局、昨日は具体的な計画については話していなかった。

 原作でも、ここでオルトがやったことも描写されていない。


 しかし、分かっているのは、オルトはラフィリア伯爵に〝加護なし〟が愚かな存在であると示すつもりだと言うことだ。

 俺の持つ、原作の知識と照らし合わせれば、だいたいオルトが何をするかは見えてくる。


「この後、立て続けに〝加護なし〟絡みの事件が起きる。そして、加護なしに失望した伯爵は〝加護なし〟への差別政策を復活させる」


 そして〝加護なし〟への差別意識はピークに達し、〝加護なし〟を排除しようとする住民と、自由を勝ち取ろうとする〝加護なし〟の間で熾烈な争いが起こる。


「それに、ミレイユとラフィリア伯爵も酷い目に遭うんだよな……」


 エルドリア市民は〝加護なし〟の反抗に対して激昂する。そして、そんな彼らを増長させた原因こそ、〝加護なし〟の地位向上を図ったミレイユとラフィリア伯爵にあると考えたのだ。

 二人は、過激な市民に攫われ、凄惨な暴力を受けることになる。


「アイリスだけじゃない。ミレイユとラフィリア伯爵もどうにかしないとな……」


 原作ではクライド達がボーマンが一連の事件の糸を引いていたことが白日の下に晒され、彼が処刑されることで一応の沈静化は図られる。

 しかし、その間にミレイユ達は悲惨な目に遭う。特にミレイユには原作で卑劣なことをした。俺が居る世界では、そんな目に遭わせたくない。


「アイリス、ミレイユ、伯爵、俺がいる以上、絶対に悲惨な目には遭わせないからな」


 俺は改めて決意する。

 俺の幸せな人生のためにも、彼女達を悲惨な目に遭わせないようにしないと。


「オルトが何かを仕込んだのであれば、恐らく今日がエルドリアの転機となる」


 まず起こるのは二つの事件だ。

 〝加護なし〟に関わる者達を操り、伯爵の大切な存在に危害を及ぼす。


 しかし、それを今から完全に阻止することは難しい。

 重要なのはその後、起こるであろう第三の事件をどう処理するかだ。


 さて、まずどう動くべきか。

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