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3.11 彼女は叫ぶ  作者: 海那 白
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5、 2020年3月11日

 こんな人殺しの私でも、おばあちゃんは抱きしめてくれた。

 小学校はもう卒業だったから、中学は少し遠い隣の中学に行くことになった。

 もう、あの人たちがいる学校にはいられない。

 でも、隣じゃ全然足りなかった。

 もっと遠くに行くべきだった。

 部活の交流などにより瞬く間に中学校にも小学校までのうわさが入ってきて、いじめがはじまるまではすぐだった。

 それでもおばあちゃんを安心させるために、学校に行き続けた。

 いじめも、いやがらせも、全部、我慢して。


 そして中学三年生のある日、おばあちゃんは重い病気にかかって倒れてしまった。

 お医者さんからは、余命はあと1年もないといわれた。

 おばあちゃんは長期間入院することになり、私は一人で家にいることが多くなった。

 おばあちゃんとの二人暮らしだったため、おばあちゃんが二人で協力して家事して家を回していけるようにと、こんな私に早いうちから手取り足取り教えてくれてたおかげで、家事全般は一人でも大丈夫だった。

 でも、おばあちゃんの容態はどんどん悪化していった。

 おばあちゃんは、私の目の前で息絶えてしまった。

 最後に、私にかけてくれた言葉があった。



「私のように、あなたを分かってくれる人は絶対にいるから。だからそんな人と出会うまでは、前を向いて生きてね。…元気でね。おやすみ」



 私はこの言葉を、一生忘れないように胸に刻み付けた。

 そして、これでもかというほど泣いた。

 おばあちゃんほど、私を肯定してくれる人はいないのだと、おばあちゃんがいなくなってから気が付く。

 もう、手をのばしても、抱き着くことはできない。

 いくら駆け寄っても、暖かい手で頭をなでてくれることはない。

 その悲しさを、虚しさを、苦しさを、辛さを、耐えられる自信がなかった。

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