ガベルアンジ王国
ダメダメな異世界の駄異世界にあるダリヤーンプオ大陸の北部にあるガベルアンジ王国。
高さ3メートルの全然立派じゃない城(ダンボールの手作り)の一室で、ガベルアンジ王国の自称女王ダスト・ガベルアンジは真っ昼間(午後1時1分)に目が覚めた。
「ゴキブリメイガスの夢で変な気分だけど今日はあたしの誕生日だな! きっと町は夜にやるあたしの誕生日祭で賑わってるだろうから、ちょっと様子を見てみよう! あぁ誕生日祭楽しみだなぁ」
ダスト・ガベルアンジは外に出て、近くにある広場に行った。そこには貴族から庶民までたくさんの人で賑わって……いなかった。
「あれぇ? ゴーストタウンみたいになってるぞ? おいおい、なんで誰もいないんだよ? しかもあたしの誕生日祭の準備これっぽっちも進んでないじゃん。……あ! これはサプライ――」
「それはあり得ないです。陛下」
ダスト・ガベルアンジの「これはサプライズだな!」を途中で遮ったのは、ダスト・ガベルアンジの自称使用人の女トラス・ファキトラシュである。
ダスト・ガベルアンジは馬鹿みたいな顔でトラス・ファキトラシュに聞いた。
「おいトラス・ファキトラシュ。これあたしへのサプライズじゃなくてマジで進んでないの? あたしの誕生日祭の準備進んでないの?」
「いいえ。準備が進んでいないのではありません。準備を始めてすらいません」
「なんでだよ? 早くみんなを呼び出して準備させるんだ!」
「嫌です。断固拒否です。めんどくせえし」
「え……?」
使用人ごときが女王である顔もダスト・ガベルアンジの命令を拒否した。それによりダスト・ガベルアンジは馬鹿な上に間抜けな顔になった。
ダスト・ガベルアンジに顔に微塵も興味が無いトラス・ファキトラシュはブッサイクな顔してるダスト・ガベルアンジに言う。
「たかが一人のクズの誕生日くらいで大人数の民衆を巻き込むなんて可笑しいと思います」
「なに言ってるの? あたし女王だよ? 女王なんだからたくさんの人が祝うのは当然でしょ?」
「いいえ。そんな事はありません。巻き込むのは仲の良い数人の友達だけで良いのです。……もっとも人付き合いを怠ってきたくそぼっちの陛下にそんな人いませんが」
「民を友達と思うなんて無理だし」
「だから誰も祝わないのです。赤の他人の誕生日を祝う必要なんて無いのですから」
「な……なんでだよ? この国の民はあたしを祝うひ――」
「必要ありません」
ダスト・ガベルアンジが「あたしを祝う必要がある」と言うのをトラス・ファキトラシュは遮ったあげく、「必要ありません」とひと蹴りだ。
あまりに態度の悪い使用人のトラス・ファキトラシュにダスト・ガベルアンジはキチガイ化寸前である。
その時、ダスト・ガベルアンジのところにやさぐれたぼさぼさの髪の女が近づいてきた。
「……やぁダスト・ガベルアンジ。キチガイみたいな顔してどうしたんだい? ただでさえブサイクな顔が超絶ブサイクになってるぞ」
ダスト・ガベルアンジにそう言ったのはガベルアンジ王国の自称王族の女のガベジ・ガベルダンプァである。この国屈指の美女好きだが、駄異世界に美女はおらず、ブサイクしかいないと知って酷くやさぐれている(地球という世界の存在を知ったりしたら絶対転生するために自殺する)。
ダスト・ガベルアンジはガベジ・ガベルダンプァに怒りながら言う。
「馬鹿のトラス・ファキトラシュがあたしの誕生日祭はいらないとか言うんだ! なんとか言ってくれ!」
「いらんやろ。そんなクソゴミイベント」
「なんでだよ?」
「誕生日はめでたい日じゃない。どんどん老いていく日だ。ましてはダスト・ガベルアンジはもう60歳。おばさんじゃないか。それくらいの年になると普通の人は誕生日が来ても祝ってもらおうとは思わないんだよ」
「なにを言うか! あたしは普通の人ではない! 女王だ! 女王の誕生日は皆が祝福すべきなんだ!!」
「ダスト・ガベルアンジの事を女王として敬っている人いないでしょ」
「えぇぇ……。お前たかがあたしの親戚の分際でなんて事を……」
とてもアホみたいな間抜けっ面をするダスト・ガベルアンジ。こんなブスを放って、ガベジ・ガベルダンプァはトラス・ファキトラシュに言う。
「トラス・ファキトラシュ。今日庶民のスクラ・ダスタエルが20歳の誕生日なんだ。最後のめでたい誕生日を祝ってやってくれ」
「承知しました。……陛下と同じ誕生日だなんて……可哀想です」
トラス・ファキトラシュのその言葉でダスト・ガベルアンジはブサイク極まりない顔になった。
使用人が主の誕生日よりも庶民の誕生日を優先し、主の誕生日と同じ日が誕生日の庶民を可哀想に思うのだ。……そもそも、冷血漢(女)のトラス・ファキトラシュの反応としては当然の事だが。
ダスト・ガベルアンジは冷血漢(女)のトラス・ファキトラシュに飛びっきりの文句を言うためにIQ10未満の頭脳で考えた。しかし、トラス・ファキトラシュはダスト・ガベルアンジの文句を聞かずに、どっか行った。ガベジ・ガベルダンプァもいつの間にかどっか行った。……無駄に広い広場にダスト・ガベルアンジは一人で情けない面して立っていた。
トラス・ファキトラシュはスクラ・ダスタエルの家に入ると、スクラ・ダスタエルとスクラ・ダスタエルの知り合いである庶民のゲスリ・オバサベジがいた。トラス・ファキトラシュは誕生日のスクラ・ダスタエルに言う。
「やぁスクラ・ダスタエル。20歳の誕生日おめでとう」
「あんた誰?」
「あんた誰じゃねぇよ。いつもあの馬鹿陛下の代わりに意味の無い演説してるだろ」
「んー政治に興味無い。ダスト・ガベルアンジにも興味無い。この国の行く末に興味無い。あんたの事もゲスリ・オバサベジの事も興味無い。私の事にも興味無い。この世界にも興味無い。私が興味あるのは異世界のみ」
「そっか。ならば異世界転生をプレゼントだ! 死ねえ!!」
トラス・ファキトラシュがいきなりキチガイみたいな顔になってスクラ・ダスタエルをぶん殴った。それにより、スクラ・ダスタエルの頭に丸いたんこぶができた。
スクラ・ダスタエルは全く可愛くない顔で笑った。そして、トラス・ファキトラシュに言う。
「あんた……。あたしが馬鹿になったらどうするんだ? あと慰謝料100メダル」
「異世界に転生するなら問題無いだろ」
「あるよ。異世界で馬鹿扱いされてしまう。 慰謝料100メダル」
「良いじゃん。IQ10くらいしか無いんだから。殴ろうが殴らなかろうが馬鹿は馬鹿だ。てめえに払う慰謝料は0」
「……なるほどそんな考えか。……あんたが死ねええええええええ!! 地獄で永遠に苦しめえええええええええ!!」
スクラ・ダスタエルはトラス・ファキトラシュを近くにあった棍棒で2回殴った。トラス・ファキトラシュの頭にはスクラ・ダスタエルよりも立派な丸いたんこぶができた。
トラス・ファキトラシュは野蛮人みたいな顔になり、スクラ・ダスタエルに言う。
「よくも殴ってくれたな。ならば転生する前に喧嘩をしようか! 慰謝料マイナス444。つまり貰う」
「へぇあんたみたいなもやし女があたしに勝てるかな? 慰謝料についてはこちらのセリフだ」
トラス・ファキトラシュとスクラ・ダスタエルは全く熱くならない肉弾戦を始めた。戦い方は凄く雑でもはや勝てればなんでも良いという野蛮さである。
カッス・ファキトラシュとクズノ・ダスタエルのウンコレベル醜い戦いに嫌気がさしたゲスリ・オバサベジはスクラ・ダスタエルの家の外に出た。大きなカメムシバズーカを持って。
「トラス・ファキトラシュ。スクラ・ダスタエル。大地獄へ落ちろ!! ゴートゥーグレートヘル!!」
ゲスリ・オバサベジはスクラ・ダスタエルの家の中にカメムシバズーカを撃つとトラス・ファキトラシュとスクラ・ダスタエルはカメムシの444倍の悪臭で気絶した。ゲスリ・オバサベジは言う。
「ゴミ処理完了!! カメムシリスペクト!! みんな大好きカメムシ!! 虫界のアイドル!!」
意味不明な事を言ってゲスリ・オバサベジは帰った。ちなみにゲスリ・オバサベジはカメムシやゴキブリが大好きだ。