騎士団長
何て事だ!
騎士団長は頭を抱えた。
カイ。
彼の事は良く覚えている。
王子の見初めた少女の元彼氏だ。
そもそも王子が悪いのだ。男が居る女に手を出すから。
カイも悪いのだ。
諦めればいいものを聖都まで追って来るから。
私は仕事を遂行したのだ。
サーシャ様を追って来て会わせてくれなどというので、王子やサーシャ様に見つかる前に捕らえた。
王子と共に湖に行った者から彼の詳細は聞いた。そんなことがあったのか。
悪いが、王族相手だ。諦めてもらわねばならん。
王族の妃や側室には悪い男は何が有ろうと近づけない。これは絶対だ。
そもそもここには居なくて、他の城に居ると噓を教えた。
それだけではない。
サーシャ様を完全に諦めてもらう為の躾をした。
言葉だけでは駄目だ。
身体で解ってもらう。
牢獄で折檻につぐ折檻をし、私に対して絶対服従するように躾けた。
10日以上も掛かった。
殴る蹴る、食事無し、罵り。
どんな些細な私の言葉にも逆らわないように徹底的に彼を破壊した。
私の靴を舐めろと言えば舐めるようにし、
自分の指を折れ!といえば目の前で折った。
最後にサーシャ様と二度と会うなと言った。これで完成する。
彼は泣きながら俺の目を睨んだが、俺はそんなことで折れはしない。会わないと言うまで何回でも地獄を与えた。
カイはもう会いませんと泣きながら誓った。
あの時私はホッとしたのだ。
これでもう会いに来る事は無いと。
他所で生きてくれ。
死んでも構わない。
ただ、生きていても死んで居てもここには来ないでくれと。
俺も会いたく無かった。視界に入れたくなかった。自分の罪を観るような気分になる。
いや、間違っていない。
彼にあんな事をしたのに今更我々の世界を救ってくれと言えるだろうか?
それとも絶対服従させて命令すれば?
必要な行動をとらせる事ができるかもしれない。
だが、心は?
無理だ・・
マズい・・・・
世界の事よりも、あの10日間を皆に知られたくないことばかり考えた。