魔法
今回のお題は、魔法。
魔法と聞いて連想するものといえばなんだろうか。大抵の人はどこぞの魔法学校の魔法だろうか。それとも灰色の魔法使い。率直に、なんかすごい超常現象? はたまた種のある魔法だったり。もしくは三十歳になると使えるという、あの魔法とか。更に六十歳になると大魔法使いになれる、なんてことをどこかで聞いた覚えがある。
そんな魔法について語っていこうと思うが、一口に魔法といっても実に様々な種類があるので、一般的な幻想世界における、とある属性の魔法についてのみ語ることにする。
それは、水魔法。
ライトノベルに通ずる者ならそれだけで全てを説明したことになる言葉だ。が、一応どういう魔法なのか記しておく。一般的には、魔力と呼ばれるふしぎなちからを消費して、生活水や飲料水を生み出したり、水の針や玉などを作って敵にぶつけたりなど、水を使って様々な事象を引き起こす技術のことをいう。
大抵の物語では、主に飲み水に困らないという理由から重宝されているものがほとんどだ。しかしこの水魔法。設定次第では、それだけで物語が破綻する超絶危険な魔法である、ということに気付いている書き手は果たしてどれほどいるだろうか。
ではまず、大抵の物語における魔法の在り方、設定について説明する。
基本的に、それは大体三種類に分類されるはずだ。
その壱。その場にある物質に働きかけて行使する形態。
水魔法なら、魔法を行使する者の傍に川や池、または水筒に入っている水といった、水源が無ければ水魔法を使えない、という設定。
その弐。魔力を物質に変換し、発動。その後消失する形態。
魔力を物質に変換することはできるが、それは一時的なもの。魔力によって作り出された仮初めの物であるため、いつまでも現実に留めておくことはできない、という設定。
その参。魔力を物質に変換し、発動する形態。
物質化された物はその場に残り続けるという設定。もっともよく見られる設定でもある。
お分かりいただけただろうか。
魔法というものが出てくる物語において、その参を選んで作られた小説は、その時点で破綻しているものがほとんどであるということに。
現実の、私達が住んでいる地球を見ればそれは明らかだ。南にある氷がちょっと解けただけで海水の水位が上がり、あれやこれやと問題になっている。ということは、魔力でいくらでも水が作れてしまう世界であるならば、主人公が転生なり転移なりして異世界に行った時には既に、大陸は水没していなければおかしいのだ。世界が誕生したその時からずっと、水魔法で水が量産されつづけているからである。
更に、水魔法を使うのは人だけではない。魔物だって水魔法を使う。例えば水竜が水の吐息でも吐こうものなら大変だ。たった一回の吐息でトン単位の水が一瞬で作り出されてしまうのだから、滅亡までの時間が加速するのは言うまでもないことだろう。
さて、水没している物語はいくつあることやら。
四元素。つまり、土水火風の基本的な魔法がある世界における魔法の人気ランキング一位に輝くのは、ダントツで水魔法であるだろう。次点で、おそらくは同率二位だと思われる、土魔法と風魔法。そして、最も人気がないのは火魔法だ。
何故といって、敵を焼き殺す以外に使い道がほとんどないからである。なので、火魔法が一番優れている! という設定の物語は面白くない。