00:序章
大きくなったら、ヒーローになりたい。
誰しも小さい頃に一度は夢想する事かもしれない。人によってはスポーツ選手だったりパイロット、あるいはネットで活躍するなんていうのが最近の流行りだ。だがしかし歳をとり、現実を一つ一つ知るにつれてその夢はかき消え、いつしか潰えてしまう。夢を叶える人はいる。だがそれは全てではない。
人の生き様は様々だ。夢を捨て現実に生きる、現実から逃げて夢を見続ける、あるいは...
スマートフォンのアラームが鳴り、深い眠りから徐々に覚めてくる。意識がハッキリとしてきても目は開けずに、ベット脇の机に置いてあるスマートフォンを取り、アラームを消した。一息、深く息を吐いてから目を開けて身を起こした。
今日も一日が始まる。
青年は名前を青垣浩太郎という。都内のIT企業に勤め、社内のシステム管理等をする所謂SEというやつだ。今日も一日、大勢がすし詰めになる電車にゆられて出社し、PCを操作し、上司の誘いに適度に乗って、またすし詰め電車にゆられて帰宅する。
いつもと同じ日常。今流行りのブラックな部分は無く、かといってとてもやりがいのある仕事でもない。可もなく不可もない日常が続いている。
電車の窓に反射し、自分の顔が映った。大人になった、自分の顔。実際に年齢は24と、もう子供ではない。特に持病もなく健康そのもの、映っている顔も具合が悪いようには見えない。ただ、疲れているように見えた。仕事の疲れとは違う、何とも言えない蓄積された疲れ。
ふう、と溜息が思わず出てしまう。溜息で窓に映った顔が曇ってしまった。