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 君子閑居して日記を編む  作者: 植木原裕司
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参賀を終えて

「ううう。顔がひきつる、表情筋が死ぬ」

 控え室に戻ると、あたしは念入りに顔を揉む。二時間立ちっぱなしで、その上ほほ笑みぱなしな物だから顔は引きつるわ、足はむくむわ最悪この上ない。

 椅子に座って脱力しても、全然顔の緊張だけはなかなか解けない。

 ただ最悪、と言うならまだ我慢できるが。ほら、一応は帝王学つうか立ち振る舞いを、子供の頃から叩き込まれるわけじゃん。疲れても笑っていなければならぬと、引きつった笑を顔に貼り付ける

 流石に自分の誕生日に、これはない。

 無いって言うか、ない。ありえない。

「お疲れのご様子ですね」

 白鳥さんが、如才なく飲み物を手渡してくれる。

「あのさー、白鳥さん同じだけ立ってるのになんで平気なわけ?」

「疲れてますよ? そう見えません」

「見えない」

 あたしはキッパリと答える。

「ぜんっぜん、見えない」

「心外ですね」

 白鳥さんは、心からそう思う。と言った風情で形のいい眉根を寄せる」

「陛下が疲れ過ぎなんですよ」

「箱入りですからー! 箱入りですからー!」

大事なことなので、二回言ってやる。

「やっぱ、鍛え方が違うのかなー」

「しのごの言ってないで、陛下も走ればいいんですよ」

「いやです、皇帝が鍛えるのは神代までです」

あたしは手直な椅子を引き寄せると、レッグレストがわりに脚を乗っける。

 背丈も年齢もおよそ同じような二人、あたしと白鳥さんなのにどうしてここまで差がつくのか? 慢心、環境の差なのか?

「ホントに口が減らないと言うか、なんと言うか」

「なによ?」

「神代って、何ですか? 軍勢でも率いるつもりですか?」

「つもりが無いから鍛えないんです!」

 我ながら、これはひどい屁理屈だ。

「せめて参賀の間くらい、ふらつかない体力をつけてください。先帝はそんな事を宣う事は……」

「お父さんは、お父さん。大体最後ってなによまだ元気じゃ無い?」

 先帝、今は上皇を名乗っている父はかくしゃくとして、今でも山に海にと母と出かけている。

 色々あって、あたしは父から譲位と言うか半ば押し付けられる形で皇帝の座に就いた。

「一般参賀の最初から最後までお元気にされていた、と言う意味です」

 あの人は、無駄にスポーツマンだから。

 その言葉を、すんでの所で飲み込む。これはお説教になる気配。

 ちらりと白鳥さんを見ると、じーっとあたしを睨めつけている。

 これはまずいなー、とおもってごにょごにょと言い訳を考えていると、トントンとドアがノックされた。

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