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We are EMESIS  作者: 凩
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第七話 顧問

「4人集めました」

「ほぉ、じゃあ用紙渡しておくわ」


 そう言うとイガラシは、自分の机から部の申請用紙を取り出して俺に渡す。

 こんな紙机に入ってるってことは、きっと俺たちのために持っていてくれたんだろうな。


「顧問どうする?」

「え、あー……。 センセーなってくださいよ」

「俺テニス部だしなぁ」


 イガラシはテニス部顧問。

 この学校の部活動は先生にも選択権が有り、顧問をしたくなければしなくてもいい。

 足りない指導者は、外部から呼ぶことができる仕組みになっているのだ。


 しかし、外部から呼べるのは功績を残した部活動のみで、俺たち軽音部のような新参者的にはマイナスのシステムとも言える。


「顧問してない先生教えるから、自分で交渉してきなさい」

「はァい」


 数人の名前が書かれた紙を受け取り、俺は職員室を後にする。

 俺にはなんとなくわかる。 ここが一番の難関だ。



 ○



「カトーちゃん、顧問やってよ」

「いいよー」

「えっ、いいの?」


 メモの一番上、保健室の先生のカトーちゃん。

 なぜ最初にここへ来たかと言うと、単純に一番身近な先生だからだ。


 養護教諭が顧問になっていいか知らんし、ふつう嫌がるだろうなと思って来てはみたのだが……。


「逆になんでいいの?」

「顧問、やってみたかったからねー」


 ……まあ確かに、活動内容は生徒に一任の軽音部だと、自分が負担する割合が少ないから、お試しには悪くないのか……?


 まあどちらにしろ願ったりだ。

 顧問はカトーちゃんに決まりってことで……いいんだよな……?



 ○



「カトーちゃん顧問やってくれるって」

「おーマジか、よかったじゃないか」


 今度は部員探しのときと違って、その日の内にイガラシを訪ねた。

 イガラシ的にもこんなに早く見つけてくると思っていなかったようで、少し驚いた後に条件の達成を祝ってくれた。


「部室どこになるんスかね」

「第二音楽準備室じゃないか? ヒエンいるんだし」

「……あの治外法権っぷり何なんスか」


 俺は先日から思っていた疑問をイガラシに投げかけてみた。

 私物化激しい、校舎の隅にある、あの私室が許容されている理由。


「理事長がちょっとな……」

「……想像よりスケールのデカイ話になりそうっスね」


 長くなりそうだったので、この話はまたの機会に聞こう。

 今はとりあえず、軽音部のメンバーに設立条件の達成を報告しなければ。


「じゃ、明日生徒会から連絡が来ると思うから」

「ウス」


 生徒会か……。

 会長とかが来るとちょっと嫌だな……。


 俺は再び廊下を歩く。


 入学してから随分経つが、こんなに職員室に通ったのは初めてだ。

 悪いことしてないのに緊張するのは、普段の行いが悪いからなのだろうか。



 ○



「顧問はカトーちゃんになりました。 申請も出しました」

「おお、お疲れ様」

「ごくろう」


 半ばたまり場になった第二音楽準備室へ報告に戻った俺は、コーヒー片手に寛いでいる3人に成果を報告した。

 特に手こずったわけではないが、なんかこう……。

 こいつらを1発づつ殴りたい。


「にしてもカトーちゃんか」

「よく引き受けてくれたね」

「やってみたかったって言ってたぞ」


 彼女……カトーちゃんは、生徒から結構人気がある。

 優しいし美人だし、あと何より保健室の先生だし。


 俺は度々授業をサボりに保健室まで行くので、その時仲良くなったのだ。


「まあ明日生徒会が話に来るらしいから、喜ぶのはそん時だ」

「正直、軽音部っていう後ろ盾必要なのか?」


 あ、コイツ言った。


 ユウキが何の気なしに言ったそれは、俺も少し前から思っていたことで、部の設立に奔走する俺がなるべく考えないようにしていたことだ。


 これだけメンバーが集って、ヒエンの私室に楽器もあって……。

 となれば、別に部である必要がないようにも思えてしまう。


「大事なことを忘れている」


 トウゴがコーヒーを机に置き、おもむろに立ち上がる。

 自分が座ってる時に見るコイツは一層デケェな。


 トウゴは俺たちを見下ろし、意味ありげな間を作ってこう口を開く。



「……部費だ」


 ……お前、そんなドヤ顔するんだな……。




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