第三話
「……」
「……」
……空気が重い。
募集文を張り出した翌日の放課後、俺達は1時間だけ自分の教室で希望者が現れるのを待つ事にした。
放課後になって20分、2人しか居ない教室で、2人とも座ってスマホを見ていると、突然扉が開いて今に至る。
身長が高くて、顔に威圧感のある男は、しばらく俺たちを見下ろした後、ようやく口を開いた。
「……3組のトウゴだ」
「お、おう。 キョウスケだ。 よろしくな」
「ユウキだ」
やべ~~、入部希望者か? こいつ。
仲良くなれるかな……。
てか絶対ベースだろ。 ベースじゃなかったらビビる。
「ベースをやりたい」
「だろうな!」
ベースが良く似合いそうな男トウゴは、近くの椅子を適当に拝借して腰掛ける。
座ってもデケえ。
「よくあの募集文で来る気になったね」
「MMOのパーティ募集みたいで逆に」
「いいのが釣れたな」
まさかそこがきっかけで来てくれる人がいると、露程も思っていなかったが……。
しかしまぁ、趣味も合いそうなので一安心だということにしておこう。
現在はスリーピース、部として認められるのが4人なので、ここはキーボーディストが欲しいところだな。
「お前どのくらい弾ける?」
「雑誌のコンテストで優勝したことはある」
「やば」
なんでそんな大物が、学校外でバンドも組まずに燻ってるんだ?
まあでも、ベーシストってそういうイメージあるな……。
「俺たちもまあ……初心者ではない」
「それは楽しみだ」
しかし楽しみとか言われても、あと一人現れないことには活動すらできん。
スタジオ借りてもいいけど……。
金かけたくないしなぁ。
「俺以外に希望者はいないのか?」
「昼休みにボーカルだけやりたいって奴が3人来たけど、帰らせた」
「あー……」
バンドをカラオケ装置とでも思ってそうな奴ばかりだったので、いてもロクな事にならんから帰って貰ったのだ。
学生バンドにはよくある話、らしい。
トウゴも何となく心当たりがあるようで、それ以上何を言うこともなかった。
「でもあともう一人、鍵盤しか認めないってのもハードルが高くないか?」
「別に認めないわけじゃない。 シタールでもヴィーナでも構わんさ」
「ソレ本当に来たら、俺が帰らせるからな」
ユウキが食い気味に拒否した楽器は、両方ともインドの民族楽器だ。
高校生で、ソレ一本でやってるやつはまずいないとは思うが。
正直面倒くさいから是が非でもと集める気は無いけれど、乗り気な2人の手前適当に理由を作って選り好みしている。
「とはいえあと一人だから、意外とすぐに集まるかもな」
──それから何の進展もなく2週間が過ぎた。