第二話
「つーわけで、部活やりたいんスけど」
「どういうわけだよ」
昨日寿司屋でユウキに「考えとくわ」とか言った手前、何となく職員室に聞きに来た。
この人は担任のイガラシ。
普通にいい先生だと思う。 授業はまるで聞いてないけれど。
「軽音部ねぇ……一応昔あったから、音楽準備室にモノだけ残ってるけど」
「じゃあイイじゃないっスか」
やべえ、簡単にできそうじゃん。
じゃあ活動内容とかどうするかなぁ、なんて考えていると、イガラシが「でも」と話を続ける。
「4人いないと部活作れないぞ」
「マジか」
友達は皆部活入ってるし、ユウキを数に入れてもあと2人集めなきゃならんとは……。
「面倒くせ……」
俺は廊下を歩きながら考える。
……部活を作ろうとするかどうか。
○
「作るなら協力するぞ」
「えーそっち系~~?」
イガラシとの会話を伝えたところ、ユウキは意外にも乗り気だった。
一蹴されれば「だよな」と言って諦めるつもりだったが、こうなればちょっと頑張ってみるか……。
「どうやって集めるの?」
「まずは掲示板に紙でも貼っておく」
俺はノートを取り出し、適当に募集文の候補を書き始める。
……意外と難しいな、キャッチコピー考えるの。
「何でそんなにノート白いんだ」
「こんな感じでどうかな」
・青春の汗を流そう!
・バンドマンはモテるぞ!
・物怪
「一番下の何?」
「読める?」
「もっけ」
「何で読めるんだよ」
ダメだ、胡散臭いキャッチコピーしか浮かんでこない。
青春の汗って何だよ。
モテねーよ。
「……ダァメだ、思い浮かばん」
「普通にやることと募集の内容だけ書いてればいいでしょ」
いやぁ、まあ……。
そういわれればそうなんだけどさ。
俺は渋々ながらも筆を走らせる。
コレで人来るかなぁ……。
「できた」
ー軽音部設立のためー
現在2名
4人から部として認められるので、ギターとドラム以外であと2人募集
「MMOのパーティ募集じゃないんだぞ」
「もうコレでいいよな」
妥協する気も、本気で設立を目指してる感も一切ない募集分だが、コレ以上考えるのも面倒なのでよしとする。
俺はノートから完成した募集文を千切って席を立つ。
「おい待て」
「何だよ」
「まさかそのまま貼るの?」
「そうだけど」
「はー信じらねえ」みたいな顔でユウキは俺を見る。
まあ確かに、普通はもうちょっとデカイ紙に書くよな。
「俺に任せろ、明日には共産主義のポスターみたいにして持ってくる」
「それはそれでどうなんだよ」
見てみたい感はあるが、人を寄せ付けない度的には、俺のノートの切れ端ポスターと大差ない気がする。
ユウキの提案したポスターは、いつか書いてもらいたいなと思いつつ断り、2人は下駄箱近くの掲示板に歩いてゆくのだった。