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 なんかすごいことになった。

 『練習級ダンジョン:傀儡擬きの洞窟』の種を植え、四日後に出入り口が半分地面に埋まった良い状態で開いたので、猟師の丹羽六郎さんと狩りの最中見つけたふりをして、テレビで『ダンジョンを見つけたらこちらまで』と流していた電話番号に電話したら、自衛隊の方々が戦車を連れて集落にやって来て、私と丹羽さんは警察に連行され、取り調べを受けた。まあ、狩りに行ったら見つけた、と言ったら納得したのか、開放してもらえたので、私は構わないのだけれど。丹羽さんには悪いことをしたなあ。

 それからひと月。裏の山のダンジョン周辺の土地は強制的に自衛隊に貸し出すこととなり、その周辺にはちょっとした陣地が出来上がっている。お陰で、集落は物々しい雰囲気に……。


 ならなかった。


 そもそも私含めて十人しかいない集落で、自衛隊の方々はダンジョン周辺からあまり出て来ない。たまに出てきても私服で農作業を手伝ってくれるし、むしろ感謝している人が多い。

 今日も、私がタマネギの畑の草抜きをしていると、暇なのか四十歳位のおじさまといった色気の方が手伝ってくれる。

「いやー、助かります」

「いえいえ。爺さんとこが農家でして。昔里帰りした時は色々手伝ったんで、懐かしいですよ」

 そうおじさま、東二等陸曹は笑いながら手を動かす。その動きは手慣れている感じがする。

「そういえば、あのダンジョン? って、出てくるの木の人形?だけなんですか?」

「あーっと。箝口令は解除されたから良いのか。……そうですね、木の人形だけです。確か、原さんは一体倒したのですよね?」

「はい。襲いかかかれたのもそうですけど、猟銃で撃ったら薪に変わったんでびっくりしましたねえ」

「ええ。ダンジョン内では、ああいった『モンスター』が襲いかかってくるので、我々自衛隊が管理するのです。……といっても、あのダンジョンの木の人形は襲いかかられてもアザが出来るか出来ないか、なんですけどね」

「……実験したんですか?」

 引きつった顔で尋ねると、「最大限に安全を確保した上でですね」と言われたけれど、あまり笑えない。この世界の人々は『ジョブ』も『クラス』も持っていないのだ。

「は、はははは。……ところで、ダンジョンで取れるもの、って、普通に使っても大丈夫なんですか?」

「それは調べている最中ですが、どうかしましたか?」

「いえ。薪が取れるなら、それから木酢液作って畑にでもまこうかな、って思いまして」

 話の持って行き方が強引かな、と内心焦るも、東二等陸曹が気にしたのはそこではなかった。

「木酢液畑に蒔いているんですか?」

「はい。ジャガイモ畑なんですけどね。蒔くと元気になるんですよ。で、あのダンジョンから沢山取れるんだったら、木酢液自作してみようかな、ってね」

 すると東二等陸曹は少し黙り、少しだけ真剣味を増した声で答えた。

「たぶん、ダンジョン産の木材から得られた木酢液の安全性は、検査されてないと思います。ちょっと上司に聞いてみますね」

「ありがとねー」

 もしかしてファインプレー? 私は自画自賛しつつ、冬でもしつこい雑草を抜いた。

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