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クリやサトイモの収穫を終え、タマネギも根付いた頃、ふと思った。
「こっちの世界にダンジョンが出来たなら、わざわざ『ムルス』に行って潜る必要無いよねえ」
ニュースによると、国連は安全が確保出来るダンジョンについては、民間に開放する方向で動いており、実際中国は一部のダンジョンを開放したらしい。日本も一部のダンジョンを開放する法案が審議されている最中で、野党の反対が無ければ、今月中にでも開放されそうだ。
「確か、えーっと……」
私は【ボックス】を探り、目的のものを取り出す。
「あった、『ダンジョンの種』」
『ダンジョンの種』は各種ダンジョンの最深部にある『ダンジョンコア』を成熟させれば入手出来るもので、これを適当なところに置いてマナを与えれば、ダンジョンが出来るのだ。『ムルス』の様々なダンジョンから回収しておいた『ダンジョンの種』の中で、私でも潜れて、なおかつ程々に稼ぎになるダンジョンは。
「これかな?『練習級ダンジョン:傀儡擬きの洞窟』」
難易度は練習級。フィールドは洞窟型。出てくるモンスターはパペット系統最下位の『レッサーウッドパペット』で、採取ポイントとして『アカリダケ』『腐った木材』が入手出来るダンジョンだ。レッサーウッドパペットの主なドロップアイテムである『傀儡擬きの木材』は、炭にする際得られる木酢液が化学肥料や農薬が目じゃない程の肥料兼農薬になるし、木タールは錬金術素材に。炭は良質なコークスに似ていて、製鉄にも使える。『腐った木材』は更に腐らせれば良い腐葉土になるし、『アカリダケ』は錬金術素材になる。捨てるところのないダンジョンだ。
「んじゃ、これを私の山に埋めて、開いたら役場に連絡するかあ」
そう決め、私は裏の山へ向かった。




