1-4
白いシートでぐるぐる巻きになったイネを、トラックが運んで行く。
「いやー、今年もありがとうございます!」
そう頭を下げるのは、大山の方の牧場を経営する安東安広さんだ。
「いえいえ。安東さんのお眼鏡にかなったようで良かったです」
私は無事今年も出荷出来たことにほっとしつつ答える。
「いえいえ! こちらも、原さんとこのイネを食べさせるようになってからは、牛が病気しなくなりましてね! 助かってます!」
「牛って病気しやすいですもんねえ」
「はい!」
基本的に、肉や乳を取るための家畜は、肥え太らすという不健康な状態にするため、病気にかかりやすくなる。魔法で品種改良した我が家のイネ『元気一号』は、食べた家畜の免疫力が上がるような成分、硬さになるよう調整している。二年ほど前に国の機関に種籾を持っていかれたけれど、そちらでも同じ結果が出たそうな。その種籾の権利関係がちょっとした収入になっていたり。
たまたま集落と伝手のあった安東さんに、農家成り立ての私はこの『元気一号』を売り込んだのだけれど、試しで買って貰った一年目で安東さんところからの契約を取れたのはちょっとした自慢だったりする。
「これで、今年もウチの奴らが健康に過ごせます!」
やっぱり、畜産家からすると、家畜も家族みたいなものなのだろう。
「そのお役に立てて嬉しいです」
「ええ! ありがとうございます!」
安東さんが去った後、私はクリ畑に行き、様子を見る。
「今年は少し少なめだけれど、質は良さそうね」
これなら、収穫のバイトの募集は例年通りでいけるだろう。そう考えつつ、自宅に帰る。
風呂を済ませ、ニュースを見つつ夕食を食べる。
「世間はダンジョン一色だねえ」
どうも、ダンジョンで得られる資源に目が行っているようだ。そのせいか、資源輸入国である日本や中国はダンジョンを一般開放することに賛成である反面、資源産出国であるロシアやサウジアラビアなんかは反対している、と。
「早く潜らないと『氾濫』起こるんだけどなあ」
ぼやく。確かに、ダンジョンから資源を得られる。だけれど、それは亜空間生命体であるダンジョンのいわば糞便だ。そのため、ダンジョンを放置していると、そこからモンスターが溢れて来たり、資源が火山の噴火のように噴き出したりする。それを、『ムルス』では『氾濫』と呼んでいた。
「ま、日本は大丈夫でしょ」
幸い、日本はダンジョンを一般に開放して探索を進めよう、という立場だ。この調子なら、日本で『氾濫』が起こることは無いだろう。




