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「合わせて、一万八千九百五十円になります」
「ども」
私は、差し出されたお金を受け取り、『貴金属買取店』を後に駅へ向かう。切符を書い改札を通ると、五分と経たずに汽車がやって来る。
やって来た四両編成の汽車に乗り、だらだらと外を眺める。これも、すっかり習慣になったな。
私が前世の記憶を思い出したのは、二十年程前の中学二年生の時のことだ。中二病なりかけだった私は、ドラゴンだった前世一万年の記憶を思い出した結果、中二病は無事収束することとなった。
また、同時に、この世界の人間にも『ステータス』や『マナ』があることを知った。『ジョブ』と『クラス』は無いのだけれど。
ともかく。『ステータス』は『その人間の可能性』であるので、出来るだけ上げておきたかった。学校で良い成績を取りたかったし。
そこで、私は前世私のいた異世界『ムルス』に行き、『ダンジョン』に潜って『ステータス』を上昇させるアイテムを集めることにした。
幸い、『ムルス』との行き来は簡単に出来、『ダンジョン』にも簡単に潜れた。倒せる『モンスター』はしょぼいけれど、それでも低確率でステータスを上昇させるアイテムは手に入り、そのお陰か、中学高校と成績は満点であり、大学も国立大学に入ることが出来た。
そして現在。私は家業だった農家を継ぎ、農作業の合間に『ムルス』に行ってはダンジョンに潜る日々を送っている。