まったくうれしくない神様転生
これは、【異世界勇者ガチャが外れしか来ない問題】の外伝作品なのですよー
本編を見ないでも楽しめますが、よければ本編を見てほしいのですよー
前野 華哲それが俺の名だ。
ちょっと民話伝承が好きなだけの男子高校生なのだが、今理解しがたい状況に巻き込まれている。
今俺は壮大な神殿の中にいる。
そして美男美女が何やら会議をしている。
議題は巨人の魔の手から町を守るためにどうすればいいのかというものだ。
「今のようにトールがいない時に巨人に攻められたら危険だ。賢き神ローキよ何か案はあるか?」
碧眼の圧が凄いおじいさまが言った。
トール日本ではソーと呼ばれることもある北欧神話の雷神のことだろう。
えっと、ここは北欧神話の世界なのかな?
で、トール出張中で町が危ないということはつまりあのエピソードか、この話ローキにはなりたくないな。
「どうした?我が息子よ」
先ほどの碧眼のおじいさまがこちらを睨む。
北欧で碧眼というと全知の神オーディンだろう。
その息子はトール、ローキ、みんな大好きバルドルさんが有名だ。
えっバルドルさんをご存じない?
あの、ありとあらゆる神様からものを投げつけられ盲目の弟に殺されたバルドルさんをご存じないだと。
でも、ここで言う息子とはさっき話に出てきたローキのことだろう。
「どうしたローキよ」
オーディンがこちらに圧をかけてくる。
ここで俺は気が付いた、俺がローキだってことに。
「すみません父上。ならばドワーフに城壁を作らせるのはどうでしょうか」
俺は即興で考えうる最もベストな返答をした。
「馬鹿を言え。山をも砕き遠くへ投げても勝手に帰ってきてポケットサイズにもなる槌、たためばポケットに入るのに神々全員が乗れて海でも空でも常に追い風が吹く船、必殺必中の槍、無限に増える腕輪、究極のカツラなど我々の想像も及ばない物を作り出す誇り高い全能の鍛冶師が壁作りなどすると思っているのか」
そうだった。北欧の神様よりもドワーフの方がすごいんだった。
それにわざわざこっちに来て壁を作ってくれるとも考えにくい。
でも、持ち運び出来て何物にも壊せない壁とか頼めば作ってくれそうだけどな。
「それに壁を作るといったい何日かかると思っているんだね。町全体を囲むとなるとものすごい巨大になるぞ」
という感じで会議はお開きになったが後日半年で町を囲う壁を作れるという男が現れた。
だが、男は太陽と月と女神フレイヤを対価として要求していた。
神々は代償の重さから彼に壁を作らせるか決めかねていた。
ちなみに俺は知っている。
この男は人類の敵である巨人だ。そして愛馬が一頭だけで三か月ほどで壁を作れてしまうだけの能力を持っているのだ。
この巨人はゆっくり馬に作業をさせたので期限ぎりぎりまでかかり、その隙にローキが馬に化けてその馬を誘惑して最終的にローキが馬との子を産み話が終わるのだが、俺は出産したくないし、ましてや馬の子供を腹に宿したくはない。
なので積極的に反対する必要があるのだ。
まず最初に言ったのは「手伝いをつけるな一人でやれ。そして壁が少しでも完成していなければ報酬は払わないぞ」ということだ。
愛馬に手伝いを許させろと言ってきた。
俺は必死に反対したが神々の同調圧力に黙らせられた。
そしてあっという間に半年は過ぎた。
あと石を一つ積むだけで壁は完成する状況で期限はあと三日残っている。
巨人の男は何もせず馬に任せっきりだった。
俺は周りの神々に促されるまま巨人の愛馬を誘惑した。
たしかにここでこの馬とローキの子供であるスレイプニルがいないと詰む局面がありそうだけどさ。
なんたってオーディンの愛馬だからね。
八本足の奇形児だけど。
こいつの機動力がなければ詰んでいた場所もあるかもしれないよ。
でもさ北欧神話って全滅エンドだし遅かれ早かれ神々は滅ぶの確定してるし別にいい気がしてきた。
そんなこと考えていると発情した馬が眼前に迫る。
まって、やめてスレイプニル生ませようとしないで
ジリリリリリ
目覚ましのベルだ。
眼を開く。
変な夢だった。
今日は親父のやたら本格的な釣りに付き合わされるんだ。
漁協の許可を取って漁船に乗り込んで釣りに出るんだ。
ここで数日後に発生する地震を感じ取って生息地域から外れた鮫に食われて死んでしまうんだ。
そこで神様を自称するなにかに出会うんだが、それはまた別の話だ。