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1.店主となった日
「ふう」
ショーケースを磨き、いつ訪れるのかも分からないお客様の為に、お茶と茶葉を混ぜた焼きたてのスコーンを用意した。
おまけにストックしておいた自家製のジャムの瓶も用意しておくけれど、これはお客様が来たら開けるわ。
私はマリー・クラウス。
普段は得意な裁縫で日々の生活費を稼いでいるのよ。でも、最近お父様が亡くなって私がもう1つの仕事を引き継ぐ事になったの。正直、裁縫の仕事で手一杯なのだけど、代々受け継いできたらしいのでしかたなく私が店主になったわ。
今日は、引き継いで初めての日。
私はお父様から渡された鍵を普段は絶対に開けないドアの鍵穴に差し込んだ。
「さあ、開店よ」
週に2日、夕方5時から9時迄の4時間だけ営業している。
その店の名は、マリアージュ。
今日は、どんなお客様が来るのかしら?