能力者達
「あら、ずいぶんと遅かったじゃないの」
その女性の長い髪は茶色に染められ、綺麗にまとまっていた。
「あぁ。この前の喰種討伐の時にいたやつと話しをしていた。それがこいつだ」
「ずいぶん若いじゃない。いくつ?」
ようやく自分に質問が振られてきた
もしかしたら、ここで他の社員から門前払いをくらうかも知れないと思っていた。そうなれば、無理にここにいる必要はないが、
あの化物のことと両親の死は少なからず関係していると自分は直感したので、それを調べる為にもここに入社しなくてはならない。
「16です」
これも入社面接だ。
そう自分に言い聞かせながら答える。
「うちに入社させようと思うんだが、どうだ」
「その子能力者なのよね?アンタが連れてきたってことは」
「俺はそう見てる。おそらく、何かを力に変える肉体強化系の能力だろ」
「なんでそう見るのよ」
「1.5km全力疾走してきて疲れない奴はいるか?」
「マラソン選手か何かなら」
今まで能力すら知らなかった俺にとっては何を言っているかすら分からない。
「高校生の話しだ」
「なかなかいないような気はする」
「OK 入社面接クリアだ。今からここの社員を紹介してやるから待ってろ」
「一つ言ってもいいですか?」
「なに?」
「ここの入社試験甘いですね…」
「この後、経歴とか色々と調べられたり、実際に現場に出向いて戦闘能力を確かめたりするのよ」
「……前言撤回します…」
しかし、普通探偵は尾行の仕方などの専門技術を覚える必要があるため、天凱探偵社の入社試験は大分楽と言えるのかも知れない
「呼んできたぞー」
玲が奥の扉を開けて戻ってきた。
玲の後ろには男が2人と女が1人付いて来た。玲さん曰くそれ以外は事務員だから割愛したらしい。
「新入社員なんて久々だねぇ」
「まずお前からだ」
「なんでですか」
「最初に喋ったから」
「そんなゲームやってたっけ?」
「早くしろ」
少し飄々とした背の高い男と玲の会話はこの探偵社のフレンドリーな雰囲気を出している感じがした。
「僕の名前は 鈴木 雅也
能力名は真実
よろしく」
「よろしくお願いします」
「次は俺だ。
この前名刺渡したから分かっていると思うが改めて、赤道 玲。
齢は22だ。
能力名は烙印」
「次は私かな?」
茶色の長い髪の女性が話す
「お前は最後でいい」
「なんで」
「早くやりたいって顔の奴がいんだよお前は後でいいだろ」
「ハイハイ分かったわよ手短にね」
玲の後ろから小柄の男性が出てくる。
その背の低さは子供と間違われてもおかしくないほどだった。
「えぇと…僕の…なっ名前は」
口調からとても緊張していることが伺えた。
それほどまでに、ここに新入社員が入って来ることが珍しいのだろう。
「夏木 莉玖です…能力名は渇望です」
「まだ小さいから異国語が分からんのさ」
小さな男性ではなく、普通の男の子だったようだ。
「最後は私ね
私は倉御 梓
能力名は…半死半生こんなとこかしら」
「んじゃよろしく頼む」
「よっよろしくお願いします」
「仕事は明後日。明日は休学手続きを済ませて来い」
「わかりました…」
結局今日は皆さんの能力名は教えられたが
詳細は分からなかった。
「いいの?明後日から仕事なんて早すぎない?」
「明日も学校終わったら来るように言っておいた」
「明日、依頼者が来ることになってるんだろ?」
「電話で日時を指定するなら来る必要ある?」
「料金の交渉と調査員の指定があるだろ」
「あぁ」
少なくとも、この時二人は何も知らなかった。まさか自分達がもう一つの大規模な異能組織と敵対することや、神と呼ばれる存在から、抗う者になるとはこの時知る由もなかった…
次回から0に等しかったアクション要素が遂にその姿を晒します。
次回「初の依頼は危険な予感?」