episode6 過去と決意
その日セシルは俺の家に泊まった………
とりあえずうやむやにして話を終わらせた
双子の弟妹は
「「しゅらばー!!」」
と、言ってテンションをあげてた
………ってその言葉どこで覚えた!!
俺は教えた覚えないぞ
まぁ、そんなこんなで何故かセシルとカリンは仲良くなった
女子ってやっぱりわからん
『微少年がモテるようになったな』
(うるせーよ、自分で言うのはいいが他のやつから言われるのは腹立つ)
いま話しかけてきたのは狂剣士の大鎌だ
まぁ、これは種族名と同じ扱いらしくこいつにも名前がある
(それでザッシュ、何の用だ?)
『貴様がうろたえている姿は面白いぞと言おうと思ってな』
(ふざけるな。はぁ~、本当疲れる)
『ならば二人とも娶れば良かろう。どのみちあの小娘が隠し名があるのは後々知るのだろう?おぬしらが他人同士なのがわかるのだから今から娶れば将来安泰じゃろう』
(バカか、俺は執行者になったんだろ?王族になったらホイホイ動けねーよ)
『うむ、それもそうだな。それを無視しては儂の存在意義そのものを否定してしまう』
(だから娶るつもりもねーしあいつは妹だ。妹に手を出すことはありえねーよ)
『ふむ、ならあのもう一人の小娘か?』
(それも多分ないな。セシルは一般人、俺は執行者。相容れねーよ)
『ふむ、いっそのこと貴様が執行者であることをバラしてしまえばよいのだがそれだと〖執行者〗としての存在意義がなくなる。執行者は影に生き影で消える………執行者って言うのは救世主だが聖人君子ではない。聖人君子は目立ってなんぼ、執行者は裏方の大黒柱………それくらいがいいのだ』
ザッシュはよく存在意義について語る
〖武器〗として、〖執行者の証〗として、〖執行者の力の根源〗としての存在意義
それがザッシュを形成する人格なのだろう
(そういやザッシュ、俺達以外にも執行者っているのか?)
『うむ、おるぞ。別次元に存在する世界であったりこの世界のどこかであったりな。あ、貴様の居た世界にもおったぞ。お前の死ぬ10年前だ』
(へぇ~、先輩執行者か………是非ともあって見たかったぜ)
『何を言う、貴様は毎日のようにあっておったであろう』
(は?待て待て。毎日あっていた?)
『お前の身内におったじゃろ。確か名を佐山源一郎と名乗っておった』
(な…んだと…)
衝撃的な事実だった
佐山源一郎
俺と生前の妹、美緒の曾祖父に当たり父さんの祖父
大正元年生まれで享年90歳で俺が7歳の頃に亡くなった
俺は曾祖父が大好きだった
いつも曾祖父の家に入り浸り曾祖父の武勇伝を聞くのが楽しみだった
曾祖父は20歳の頃に18歳の曾祖母と結婚。その3年後祖父が生まれた
祖父は定年から7年が経ち祖母を亡くしてから塞ぎこむようになった
父も母も祖父を気にかけており当時88歳だった曾祖父の介護も疎かになりがちだった
家も近かったこともあり俺は曾祖父が亡くなる2年間通い続けた
美緒も通い続けてたが曾祖母が亡くなった時通わなくなった
曾祖父が亡くなる一年前だった
俺は大好きだった曾祖父が祖父のようになるのが悲しかった
曾祖父の武勇伝を始めて聞いた時は胸が高鳴った
そんな武勇伝を持つ曾祖父が祖父のようになるのが嫌で毎日通った
そして曾祖父の話を聞き、曾祖父に入学したばかりの学校の話を聞いてもらうのが楽しかった
曾祖父はいつも[龍二、よく聞きなさい。そして覚えておくのだよ?人間にも動物にも……この世の全てに存在意義がある。存在意義とは理由であり必要不可欠なものだ。努力することも嘆くことも全てが存在意義だ。そしてその存在意義が保ち続けるには秩序がいる。秩序がなければ存在意義そのものを否定する事になるのだ。秩序は決して乱してはならん。それを乱せば必ず戻す者がでる。その者が大切な家族に手を出させたくないからな。だからワシとの約束だ、秩序を守り家族を守ると。約束できるな?]
曾祖父は毎日のように言っては俺に約束させてきた
その時の俺は意味などわからなかったが曾祖父との約束を守ろうと頑張った
…………曾祖父が亡くなる前までは
曾祖父は俺を守ろうと老体に鞭を打って強盗犯と戦った
そして左胸を刺され死んだ
その強盗犯は事故死したという
両親は仕事と祖父の付き添いで妹は祖父の家におりその場にいなかった…………
俺はその時から何もかもが中途半端になった。
曾祖父を守れたであろう力を欲してはいろんなことをした。でも全部中途半端に辞めた。[曾じぃちゃんはもういないのだから]と言い訳をして
俺に今のような力があれば曾祖父を守れたのかもな……
『貴様に話すのはまだ早かったのかもしれぬな』
(……………いや、改めて決意した。曾じぃちゃんは俺に色々と教えてくれた。曾じぃちゃんは最後に俺を守ってくれた。俺の誇りだ。ならその誇りを消させない為にも、そして曾じぃちゃんに誉めてもらうためにもな)
『うむ、ならはその決意に免じてこの力の使い方を教えよう』
(どの力だ?)
今こそ執行者を力を得る時………だな
◇◇◇◇◇
『|有罪なる日蝕と月蝕《ギルティ・エクリプス・モードソルorルナ》、限界突破。そして狂剣士の血だ』
(あーステータスに出てたな。早く教えてくれ)
『だから説明すると言っとるだろう。まず|有罪なる日蝕と月蝕《ギルティ・エクリプス・モードソルorルナ》からだ』
(ほうほう)
『この力は《モード ソル》か《モード ルナ》と唱えればどちらかの力が発動する。まずソルの力だな。ソルの力は自身に太陽の如き力を持つ炎を纏わせることができ、その炎は魔力やスキルの力を意識して使うと動かす事ができる。それを使えばありとあらゆる物を燃やすことが可能だ。攻めを極めたいときに使うと良いぞ。あとその炎は光のように揺らめいておる。確かお前の世界では…………こ、こ…』
(コロナか?)
『それだそれ、コロナだ』
(なるほど、コロナを纏って戦うのか)
確かコロナって太陽から発せられる電磁波みたいなやつじゃなかったかな
『属性をつけるとしたら聖、炎、雷と言ったところか』
やっぱり電磁波関連の属性があるな
『次にルナの力だ。清め、穏やか心を持たせたり守ろうとする意志や慈悲の心で強くなる力だ。守りを極めたいときに使うと良いぞ。しかも穏やかな青く優しき光を纏っておる。その光は癒やしたいものに触れればたちどころに癒せる』
すげーな、回復系か
『属性をつけるとしたら聖、氷、水、光だな』
ふむ、月の光は太陽光の反射、なら氷の属性があるのは納得だな
しかも4属性………ん?
(おいおい待て待て)
『なんだ?』
(聖と光、氷と水は同じだろう?)
『性質が違うから良い』
適当すぎねーか?
『まぁ、良い。次は限界突破だ。その名の通り自身の限界を超えた力を使えるぞ。制限時間はないが長時間使えば身体にダメージが蓄積し動けなくなるぞ。まぁ回復すればその時並みの力が得られる』
なるほど、要は筋肉痛のすごい痛い版か
あんま多用したくはないな
『そして最後………はやはり辞めておこう。まだ貴様には早いかも知れぬ』
(オイ、もったいつけるな)
『これは儂では決めかねぬ。あの方が直に来られるから聞いておく。それまでは貴様には教えぬ』
(んだよ~。まぁいいや、で?誰が来るんだ?)
『黒様だ』
(クロサマ?)
『貴様の面接担当をされた御方だ』
あー、あの幼女………ってあれは仮の姿だったな
(いつくるんだ?)
『さてな、あの方の「直に」はいつになるかわからん』
(おいおい、適当すぎねーか?)
『まぁ、ちゃんと来られるだろう』
(そうなのか………)
『さて、儂は寝る。何かあれば起こせ』
(あぁ、わかった。サンキューな)
◇◇◇◇◇◇
「……て、あ……よ」
「……ん、おき……」
なんか周りがうるせーな
「…し…のっ………」
「え………ぶか…?」
「だい……だ…、…ーの」
「「えい!!」」
「ぐへっ!!」
な、なんだ!!
慌てて目を覚ますとセシルとカリンが上に乗っていた
「お兄ぃ!!朝だよ、おはよう」
「め、メシアくん、おはよう」
「………」
こういう目覚ましは美女がやるべきではないだろうか
しかもこの二人加減なしに乗ってきた
思い切り鳩尾に入った
いてーよマジで
「……セシル…」
「ひっ!!」
ちょっとドスの効いた声でセシルを呼ぶ
「……お前、あとでアイアンクローな」
「いや!それだけは!!」
「俺は普通に起こしてさえくれればこんなに怒るつもりはなかった。だがな、お前も一緒になってやってどうする!!」
「わわわ!!」
「きゃっ!!」
カリンを押しのけ起き上がりそのままカリンの後ろにいたセシルにアイアンクローをお見舞いする
俺は父親の稽古で握力がついてきてこの年でリンゴを潰せるほど上がった
ガシッ
「痛い痛い痛い!!」
「こういう時は?」
「ご!ごめんなさい!!」
「ったく、二度とするなよ」
「うん!わかったから早く手を離して!!」
「後少しはする」
「いやー!」
「お兄ぃ!!やめて!!」
「……カリン、俺はこういう起こし方するやつは嫌いだ。だからカリンのこと嫌いになる」
「……え?やだよ?やだやだ!!」
「ならどうするんだ?」
「ごめんなさい……に、…ぐすん、二度と…ひっく……しません」
「よし、よく言えた。おいでカリン」
「う、うわーん」
「よしよし」
こうやって抱きしめる俺って甘いのか?
まぁ、これ以上泣かれるときつい
「うー……痛かった……」
「で?もうしねーよな?」
「うん!絶対しない!!」
「うっし、いいだろう。許してやる」
「えへへ、ありがとう」
カリンはこうしてるあいだにも抱きついている
長くなるかな
「そういえばなんでメシアくんも泣いてるの?」
「は?」
言われて気づいた
曾じぃちゃんの事を思い出したからかもな
「なんでもねーよ」
「えー、だって」
「……アイアンクロー……」
「なんでもないです!!」
◇◇◇◇◇◇
昼時
「メシア、魔層の儀は終わったが今後はどうするのだ?」
父親が聞いて来た
「ん?父上。どうするとは?」
今日は父上は休みらしい
「お前は貴族の子だ。成人は15歳。だが貴族の子は魔層の儀が終わり次第今後の事を決めなければならない。俺の仕事を継ぐのか家を出て他の仕事をするのかなどな」
「あー、どうしようかな……」
「お、お兄ぃ?出て言ったりしないよね……?」
「カリン、少し黙ってなさい」
「で、でも!!」
「カリン!!」
「……。」
「……色々経験してみたいって気持ちはあるかな」
「……!!」
「つまり?」
「冒険者になろうかなって」
「……そうか」
「でも後三年……父上や母上に稽古をつけて欲しいって思ってる。それにここにいたいって気持ちも……」
「!!な、なら」
「カリン、ちょっと父上とちゃんと話がしたい。静かにしててくれないか?」
「カリン……この場にいても良いが静かにできないと言うのであれば去りなさい。これはメシアが決めること、周りがどうこうする話ではないのだ」
「っ!!」
バッ!!ドタドタ
「はぁ、カリンがお前の事を好いているのは知っていたがな」
「ははは……」
「……カリンにはお前が決めることと言ったが一応話しておくか」
「何を?」
「カリンはな……王族の第二王女なのだ」
………うん、まぁ、知ってた
「どうした?あまり驚かないな」
「いっ!!いや!!驚き過ぎて何も言えないだけ」
「そうか」
しまったな、知ってたせいでリアクションを忘れてた
「だからな、お前が王族の一員となることが出来る」
「それはいいかな。自由がいい」
「それが冒険者だと?」
「彼らが命掛けで仕事をしてるのは知ってるし父上の仕事だって命掛けの時があるのは知ってるよ。でも彼らは自由なんだよ。上から縛られることもないだろうしね」
「上から縛られるとは?」
「父上みたいに休日の呼び出しがないところとか」
「ふっ。よく見てるな」
「これでも重騎士長の息子だからね」
「はははっ!!確かにお前は俺とセリシアの息子だな!!」
「だから、それを生かしたい。自由にね」
「それにはそれ相応の覚悟と守らなけばならない秩序がある。それはわかるな?」
「うん、わかってるよ。だって秩序は存在意義そのものを守るもの、秩序が乱れれば存在意義そのものを否定する事になる、だから破らないし乱さない」
「ふむ、それがわかっているなら聞こう。お前の存在意義とは」
「自由。そして秩序を乱すことは許さない」
「それは貴族でも王族でも出来るが?」
「でも自由がないよ。自由があってこそだから」
「自由が秩序を乱すとは思わないのか?」
「自由が存在意義じゃないと言う秩序ならそれは秩序じゃない。存在意義は自由なんだよ。それを否定するのは“縛り”だよ」
「ふむ、そうか」
「それが僕の……いや、俺の存在意義だ」
「!!」
「俺はその意志を曲げるつもりもねーし大切なことだって知ってる」
「ふっ、ふふ、はははっ!!」
「どうしたの?父上」
「ははは…いや、すまない。そうか。ならお前は執行者になれるかもな」
「!!」
一応執行者はこの世界では一般的で男の子の憧れだ
「俺もかつては執行者に憧れた。是非とも会ってみたかった」
あー、その憧れの執行者は目の前にいるよ
息子として
「だからかな、今のお前を見てると御伽噺の執行者にお前がなれる気がしてならない」
「……」
(ザッシュ。バラしていいか?)
『身内なら良かろう。だが他の者にバラせば』
(あぁ、バラさせないよ)
「父上。見て欲しいものがある」
「なんだ?」
「出てこい狂剣士の大鎌!!」
ブオン!!
俺の右手に大鎌が現れる
「そ、それは!!」
「あぁ、これは執行者の証だ。今まで黙ってたけど俺は執行者だ。でもこれは内緒にしててほしい」
「なぜだ?それを明かせば国に重宝されるぞ」
「自由がなくなる。俺は執行者。秩序を乱れを正す者。その俺が自分の存在意義を否定してどうするんだって話だよ」
「それもそうだな」
「そういうことだ」
それから父と色々と語り合った
◇◇◇◇◇◇
そして訓練につぐ訓練の三年間がおわった
そして俺は明日……
旅に出る
冒険者になるため
そして執行者として動く為に
曾じぃちゃんの意志を受け継ぐ為に
主人公の過去が明らかに!!
って展開早すぎねー?